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異世界で小柄な女神様とダンジョン運営  作者: バージ
新界定礎の始点 ~未知は尽きぬもの~
10/96

いずれ地上の礎となれ

重要(?)

作品全体を通してシリアスは短くまとめたいです!(思っているだけ)

だから割とポンポン問題が解決するかも?

35日目


盗賊現る。

斥候だったらしく、コボルトと一戦交えて帰っていった。

実力もDランクくらいだし、大したことは無い。

本体を呼び込んでくれることを期待して無傷で帰した。

命尾筆頭のフォックス達数匹に後を付けさせ、アジトらしき洞穴を見つけた。

まあとりあえず場所だけ把握しておこう。




36日目


昼に盗賊団の本隊と思われる一団がダンジョンに侵入。

俺はダンジョンの中枢部、コアの前に立って眷属全体に指令を送る。

団体の侵入者が来た場合でも、俺はこの部屋にさえいれば良い。

いや、この部屋にいるべきなのだ。

コアからの情報の他にも、フォックスシャーマンが情報を教えてくれる。

買ってあった手配書の冊子を確認し、おそらくこれだろう、という盗賊団を見つけた。

20人ほどの盗賊団であり、3人にそこそこの賞金が賭けられている。

とりあえず眷属を下がらせ、野良の魔物との戦いを見て様子を探る。

フォクスシャーマンは使い魔の妖精を召喚し、安全圏から目立たずに諜報活動してくれる。

ダンジョン内ではそこに住む魔物に地の利があり、隠れた使い魔を探し出すのは難しい。

それでも熟練者なら見つけることもできるだろうが、手慣れた冒険者達ならともかく盗賊団ではそれも難しい。


盗賊団は団体のまま別れずにダンジョンを探索、たまに野良の魔物と戦闘をしている。

一方こちらは安全に諜報活動をし、相手の戦力を大体把握した。

最前列で戦っている男が一番強く、ランクC相当。

団長らしき男と副長らしき男がC-。

後はDかEと言ったところだ。

俺も緊張こそしているが、まあ序盤の敵といったところだろう。


シルバーウルフの群れに盗賊団を追い込んでもらう。

この前ウルフやフォックスと罠の位置を確認したのはこのためだ。

……備えあれば憂い無し。

アクティブで発動でき、対象を別の場所に飛ばす、例のルートトラップ。

設置型のトラップで、上にいる相手しか飛ばせないが、それはシルバーウルフに誘導してもらう算段だ。

ハウンドウルフは弱いが群れとしての強さはさすがの一言。

烏合の衆である盗賊団なんか目じゃない連携で、盗賊団を魔方陣のある部屋まで誘導した。


(マスター、今です!)


現地で監視している命尾の合図に合わせ、トラップを起動。

これでCランクの3人を含めた10人ほどを一気にボス部屋まで転送する。

ソリフィス1人でも全滅させられるだろうが、ここは俺も参戦しよう。

あまり考えたくもないが、やりたいのは人殺しの練習だ。

この世界治安の関係上人の命が軽く、現代日本人である俺は少しでも慣らしておかなければならない。

思うところはあっても意識して考えないようにする。

俺はそういうことを考えてもどうにもならないし、ならば深く考えない方が良い。


町で買った安物の黒いローブを目深に被り、ソリフィスと共闘するためにボス部屋に行こうとすると、ルティナに引き留められた。


「シラキさん、弱い方からかたづけましょう」

「そうか?……そうか」


ルティナが提案してくる以上異論はない。

それに、用心のためにもそうした方が良いかもしれない。

要するに、対人戦の予行演習だろう。

命のやり取りをする以上用心はしてしすぎると言うことはない。

第五階層の魔方陣の上に乗り、大きく深呼吸。

この戦いが終わるまで、俺は人の命について考えない。

その覚悟を決めた。


ルートトラップで取り残された盗賊達の所へと瞬間移動する。

ルティナももちろんついてきた。

盗賊達から見えない位置に転移すると、取り残されてうろたえていた盗賊達に奇襲として風属性初級応用魔法、ウインドカッターを放つ。

風の刃を放つ魔法で、いくら光る植物に照らされているとは言っても薄暗いダンジョン内では、放たれる位置すら認識するのが難しい。

本来の数倍の魔力をもって発動したウインドカッターの乱れ撃ちは、哀れな盗賊達を八つ裂きにした。

その場にいた11人の内、8人が死亡、あるいは重傷を負う。

倒れる仲間達をその目に捉え、錯乱して逃げ出そうとする残りの3人を狙い撃ちにする。

十分な魔力をもって放たれた魔法の矢は、ばらばらに逃げようとした3人の頭を貫き、一撃で絶命させた。

完全に無力化したことを確認すると、うめき声を上げ血だまりの中でのたうち回る盗賊達の頭を、一人一人撃ち抜いていった。

短い時間の出来事である。

見回して動く者がいなくなると、無意識のうちに止めていた息を吐き出した。


「シラキさん」

「大丈夫だ」


ルートトラップを利用してボス部屋まで飛ぶ。

第五階層の魔方陣は、一方通行だがダンジョン内のどこにでも跳ぶことができる。

……この時点でかなりすごい魔法だ。

しかしダンジョン内の転移魔方陣は同じ魔方陣にしか転送できない。

ボス部屋のど真ん中にある魔方陣に投げ捨てた盗賊達とは違い、こちらはボス部屋の奥の小部屋に転移する。


ボス部屋では、盗賊達はすでに4人になっていた。

Cランクの3人もすでに地に伏しており、如何にソリフィスが圧倒的かが分かる。

ソリフィスは無傷で盗賊達を倒していたのだ。

状況を把握した後はとにかく走る。

瞬く間に駆逐されていく盗賊のうち、手近にいた一人に全力で斬りかかり、首を飛ばした。

意識して考えないようにしていたが、このときだけは手に残った人の肉を切る感覚、その不快感に顔をしかめた。

とにかく俺が一人斬り殺す間に残っていた3人も、上半身と下半身が離れていたり、身体が変な方向に曲がっていたりした。


戦闘は終息した。

ダンジョン入り口を封鎖させていたハウンドフォックスの群れに、念話で封鎖解除を命じる。

Cランク盗賊の戦いが見れなかったことだけは残念かと思ったが、普段ルティナと模擬戦してるし問題ないだろう。

賞金首3人の死体はしっかり残っている。


「シラキさん」


こいつらは後日町に持ってくとして、とりあえずはどこかに片づけておくか。

そうだ、こいつらは全滅したわけだし、明日にでもアジトをあさりに行こう。

えっと、後はどうしようか。


「シラキさん!」

「え!?な、何?」


ルティナに大声で呼ばれた。

ひょっとして放心していただろうか?


「いえ。返り血で汚れてますし、身体を洗ってきたらどうですか?」


そういえば、首に切りつけたとき盛大に返り血を浴びていた。


「ん、分かった。賞金首とか任せて良いか?」

「任せて下さい。シラキさんはゆっくりしてきて下さいね」


ルティナは話しながらもじっと俺を見ている。

しまった、気を遣わせてるだろうか。

おとなしく魔方陣で転移し、風呂へ向かう。

岩に囲まれた風呂の中。

当然洞窟の中だが、それでもなかなか良い大風呂だと思う。

いつの間にかできていた(ルティナが用意したのだろう)風呂に入り、大きく一つため息をつく。


考えるべきことは、色々あったような気がする。

まず多少人数がいるくらいじゃ、1つの不意打ちで全滅もあり得る、というのはその通りだろう。

ダンジョンの環境はアンブッシュには最適で、待ち受ける側が非常に有利だ。

全体を管理しているダンジョンマスターがいればこそ、ではあるのだろうが。

多少敵が多くても何とかなると思う。


俺は風呂の周りに咲く魔草の花を眺める。

薄暗いダンジョン内において、薄く光る魔草の花は神秘的だ。

ヒカリゴケやヒカリダケも手伝って、何とも落ち着いた雰囲気を醸し出している。


………ダメだ。

俺はそこまで冷淡な人間ではなかったらしい。

別にあいつらを殺したことに後悔はない。

懸賞金がかけられるような盗賊は基本的に悪党だ。

ならば何を気にしているのか。

それは、自分が人を殺したということ。

この出来事は突然始まった。

この世界に連れてこられて、世界、いや地上の生き物を救うための道筋を示された。

その為のダンジョンは、人を殺すことで、同レベルの魔物の数倍のマナを得ることができる。

ダンジョン内で人を殺すのが一番効率的な手段に思える。

しかし、それこそ多くの人々の中から厳選すれば、人を殺さずに世界を救える人もいたのではないか。

いや、それは間違いだ。

人が死んでも気にしないミテュルシオン様には、そんな項目を選ぶ基準にする意味が無い。

ならば俺がどうするかだが、他の人にできるからといってもできるわけじゃない。



……。

…………。

………………。



「はぁ」


少々悩みすぎた。

いつの間にかのぼせてしまうほど時間が経っていたらしい。

何を小事にそんなに悩んでいるんだか。

やっぱり、平和な場所でのんきに暮らしていたからこそ、このような衝撃に動揺しているのだろう。

考えれば考えるほど、自分が無為に考え込んでいると思えてくる。

俺は限界まで息を吸い込み、全力で叫んだ。


「うぅぉおおおおおあああああああああ!!!!!!!」


……。

…………。


よし、気持ちを切り替えよう。

こうやって切り替えられるからミテュルさんに選ばれたのかもしれんしな。

とにかく、明日にはアジトに向かおう。

賞金はそれからだ。







風呂から出てきたとき、シラキさんはもういつもの彼に戻っていた。

アジト探索や賞金の受け取りの話をして、とりあえず今日はもう休んでもらうことにした。

そのとき私は、600年生きている中でも、指折りの恐怖を味わった。


正直言って、少し楽観していたところはあった。

この世界で生きる人々は、人殺し自体に思うところはない。

だから、シラキさんがそこで苦しむということに現実感がなかった。

平和の中で育った人間、その価値観は多かれ少なかれ戦いの邪魔になるだろう。

異世界から人を呼ぶと決まった時から、その話は母からされていた。

しかし、シラキさんは天真爛漫でありながら、しっかりとした自分を持っていたから、あまり気にしていなかった。

厳しい修行を課しているにもかかわらず、泣き言1つ言わない。

一日中暗い穴の中で生活しているのに、ほとんど苦にしていない。

この世界に来た時点で、いろいろなものと別れているのに、ずっと前を向いている。

そんなシラキさんが、あの時は辛そうにしていた。


シラキさんは、名前を捧げている。

それは、自らの存在に大穴を穿つに等しい行為。

魂の一部を担保に神の加護を得る儀式。

日常を生きているだけでも精神が不安定になってしまう代償であり、しかもシラキさんに至っては完全な非日常だ。

普通なら1週間も待たずに壊れる。

シラキさんが安定しすぎているせいで、忘れていたのだ。

名前を捧げる前の彼なら、もっとマシだったのかもしれない。

顔を蒼白にして、不自然に落ち着きながらも心を震わせて、口では何でも無いように振る舞う。

そんな彼を見ずにすんだのかもしれない。


それに、納得できない。

彼が、動揺する自分自身をただそうとしていることが。

動揺して当然。

それどころか、シラキさんは十分すぎるほど自分をコントロールできている。

そのくせ、自分は自分はダメだとか、情けないとか考えてるんだ。

おかしな話だ。

もう少し、私を頼って欲しかった。


お風呂場から唸るような叫び声が聞こえたとき。

何となく、分かってしまった。

きっとシラキさんにとって、これはけじめで、区切りなんだって。


立ち直った彼と話して、分かった。

何が怖かったのか。

いずれ、彼が壊れてしまうのではないか。

それを、私は助けられないのではないか。

六百年前と同じく、そのときが来たなら、私にはしなければならないことがある。

それが、不安なんだ。








36日目終了



対盗賊団戦勝利


・戦闘による死亡


  野良のコボルトの群れが2つ壊滅

  lv1 コボルト8


  野良のホブゴブリンを中心としたゴブリンの群れが1つ壊滅

  lv3 ホブゴブリン1

  lv2 ゴブリン6


  合計 マナ+960


・倒した数

  盗賊22人(C1人 C-2人 その他D,E19人)


  合計 マナ+7000


総合 マナ+7960





シラキ・ヒュノージェ(愛原白木)

総合C+攻撃C- 防御C- 魔力量B- 魔法攻撃B- 魔法防御C すばやさC+ スタミナC- スキルC



スキル

ユニークスキル「結晶支配」

ユニークスキル「  」



ダンジョン


保有マナ

32,450


ダンジョンの全魔物

ボス:ソリフィス(ヒポグリフ)

迷宮植物:

    ヒカリゴケ4400、ヒカリダケ550、魔草440

眷属・グループ(能力順):

    グリフォン4

    シルバーウルフ1、ウルフソーサラー5、ハウンドウルフ20

    フォックスシャーマン10、ハウンドフォックス10

    クイーンビー1、ニードルビー10

    ゴブリン30

野良、その他:

    ゴブリン23、ホブゴブリン2、コボルト10、コボルトロード1、ハウンドウルフ28、食人花11、インプ5、グリズリー1






一階層

洞窟・迷宮


二階層

更地


三階層

更地


四階層

更地


五階層

コア、個室2、ダイニングキッチン、大浴場、保存庫


これからは死亡した魔物やそれによるマナの推移なども書こうかと思います。

ただ作者の気まぐれでこの先どうなるかは分かりません。

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