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15の夜(夏)  作者: ism
1/2

1,夕暮れ

「夜遊びしてみようぜ!」

長浜が言う。

「いいじゃんいいじゃん、中学最後の夏だしね〜」

笹沢も続いた。

僕は笹沢も言うように、中学最後の思い出だ、と僕も同意を述べた。

「オッケー!じゃあ親が寝静まったら、そうだなぁ大体11時にここ集合な!」

それだけ告げると、左手を振りながら長浜は、家へ向かってかけ出した。

「じゃあ、俺は1回寝てから行くよ〜」

簡単な別れを告げ、気だるそうな雰囲気を醸し出しながら僕も帰路につく。

後ふたつ・・・後ひとつ・・・2度も角を曲がれば、もう姿は見えまい、

僕は、ワクワクとも、ドキドキとも取れない、初めての夜遊びに向けて高鳴る感情を抑える事をやめ、表情に出すことにした。

口角があがり、目が細まる。小学、中学と何百回と通ったこの道が違って見える。

歩調も早くなる。静かに家を出るシミュレート、約束の時間までの暇つぶし、

同じ思考をパターンを変えて繰り返す。

気づけば見慣れた我が家の前に居た。表札には誇らしげに 相田 と掘られている。

「ただいま」

誰も居ない我が家に声がこだまする。反響して自分の耳に入る声が、驚く程明るい。

我が家の両親は共働き、祖母は夕方まで出かけており、祖父は僕が生まれる前に他界した。

兄は少し離れた所の大学に通っており、週末意外は帰って来ない。

今日は水曜日だ。夜の7時頃までは誰も家には居ない。

机の上には、おやつ代と称して2日に1度、千円が置かれている。

(この千円、夜に使おう)

目的などはない。夜遊びに、2日分の千円を一度に使ってしまおう、そう思えただけで、この千円は、一万円でも、十万円でも買えない千円に変わった。

(僕も少し寝ておこう、どうせ親が帰ってくればご飯の時間に起こされるんだし。)

自室に戻る。今日はいつもと違いPCには手を掛けない。

時計を見る。まだ15時を20分程経過した所だ。

布団に入る。落ち着かない。なぜなら目を覚まし、食事を済ませ、親が寝たかどうかの駆け引きの先には、クラス委員も、バスケ部の部長も、生徒会長も見たことのない夜の町に消えるのだ。

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