教授と院生と野球大会 ~その1~
『教授、教授!』
『どうしたんだい? 院生君。そんなに慌てて。』
『毎年恒例の大学教室別野球大会が迫ってきました!』
『なるほど。だから浮かれてユニフォームなどを着ているのだね。君は。
それも運動場ではないこの教室でね!』
『あちゃ。気付かれちゃいましたか。てへっ!』
ペロッと舌を出す院生君。
本人はかわいく見せようとしたのでしょうが、教授はニコリともしません。
よほど院生君の憎たらしい笑顔にむかついたのでしょう。
笑うどころか教授の顔はひきつり始めました。肩が怒りでプルプル震えております。
その形相は、まさに鬼のようです。
『教授!教授!顔が怖いですよ!』
『はっ!...すまんすまん。院生君。
あまりにも非常識な君の態度に我を忘れるところじゃった...
「親しき中にも礼儀あり」とはよく言ったものじゃのう...』
『あまり怒ると血圧が上がりますよ。お年なんだから...』
『うがぁぁぁ!!!』
いつもは温厚な教授が激怒しました。
その表情は激変し、あたかも般若の如し。
このような事例を『火に油を注ぐ』と言います。気をつけたいものですね。
とりあえずこの場は丸く収まりました。以下2人の会話です...
『そんなに怒らなくても...うっうっ...』
『まあ泣くな院生君。わしも野球は大好きなんじゃから...』
『今年当たる相手のチームが決定したんですよ..』
『ほう、どこなんじゃ?』
『何を隠そう「薬学部教室」です。』
『なに!?
毎年野球大会でドーピング疑惑を醸し出す、あの「薬学部教室」か!?』
『はい。あの「薬学部教室 Pharmacology Dopings」です。
全員が全員筋骨隆々としていて、どう見てもプロ野球の集団です。
マネージャーなんかみんな金髪美女ですよ。
「内海君」という新入生が投手らしいのですが、入学当時の身長が155cm、体重45kgだったのに、今回のプロフィールによると身長186cm、体重93kgまでアップしています!
それに今まで右利きだったのに、なぜか左投げ左打ちになってます。
この2か月でここまで変わるのはおかしくありませんか?
それに入学当初はキャッチボールがやっとだったそうなのに、今や時速140kmのストレートを駆使し、球種も豊富でチェンジアップ、スライダー、さらにカットボールまで自由自在だそうです。
こんなチームに勝てますかね?』
『薬学部教室 ファーマコロジー・ドーピングズか...
チーム名からして、かなり開き直っておるのう...
よし!受けて立とうではないか!!なぁ院生君!!』
『そうこなくっちゃ!!教授!!』
こうして理工学部教室「じゃこ天 シルバープリングルス」は、ドーピング疑惑のある薬学部教室チーム「Pharmacology Dopings」を倒すため特訓を始めることになったのでした!
このお話は続きます!




