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教授と院生と10分どん兵衛 ~その3~

教授に呼び出された屯島君と美紀ちゃんは、ウキウキしながら研究室に入ってきました。

どん兵衛の食べ比べをすると聞かされたからです。

特に喜んでるのは屯島君。

そいつは大喜びで教授の方に飛んでいきました。


『教授!教授!!』


盛りのついた犬のように、デブが教授に抱き着きます。


『ああ!うっとうしい!!

 離れんかい!!』


『す、すみません。』


『まったく白衣がヨダレでビショビショじゃないか。』


『だって...どん兵衛を食べらるって...ヒックヒック...』


『ええい!女々しい。ブヒブヒ泣くのは止めんか!』


『ブヒブヒなんて言ってないですよ!!』


『屯島君。ブヒブヒ泣かないで準備しようよ。

 そんなにブヒブヒ言うと豚さんだよ。』


『ブヒブヒなんて言ってないですって!!』


『そうよ!ブヒブヒ泣くと本当にただの臭い豚野郎よ!!

 もうブヒブヒブヒブヒうるさいのよ!!』


『言ってないよぅ...ブヒブヒなんて...

 院生さん、美樹ちゃん...

 なんだかとってもしょげてきたよ。

 それにむかつくし...』


『ブヒブヒ言わずにほら行くよ!豚さん!!』


『うう...』


泣いて鼻水と涙でぐちゃぐちゃの豚を連れて、美樹ちゃんと院生君は資料室に向かいました。

そこには大切な資料とともに、どん兵衛の入った段ボールが置いてありました。


『...ねえ...院生さん。

 ...こんな大切な資料の中に、一緒に置いていいの?』


『うん!美樹ちゃん!

 どん兵衛も資料も、どれもみんな大切だから良いんだよ!』


『...そうなのね...』


3人はそれぞれどん兵衛を一つずつ取り上げ、院生君は教授の分も持ち、再び研究室に入りました。


『諸君!準備は良いかね!?』


『はい!!』


4人はタイムマシン付きルーレットを囲むように椅子に座りました。

さっき泣いていた屯島君も楽しそうです。


『さてわしから作るとしようか。

 お湯を入れたどん兵衛をルーレットの上に置いて...

 で、さっきのお試しの時には院生君には言わなかったんじゃがな。

 左のルーレットは数字を、右は時間の単位を決定するんじゃ。

 さっきはたまたま5分を指したがな...』


『えっ?』


『まあ見ておいてくれ。

 どれくらいの時間を置いたら美味いどん兵衛ができるのか実験じゃよ!

 ほれ!!』


教授がルーレットのボタンを押しました。

ルーレットが勢いよく回っております。

ピピピピピ ピピピ ピ ピ....ピ.......

左のルーレットが『5』を、右側は『分』を指しました。


『チン!デキマシタ!!

アツアツヲドウゾ!!!』


『教授は普通のどん兵衛ですね!おいしそうだよね!

 ね!美樹ちゃん、屯島君!』


『むう。少しつまらんが我慢しよう。

 わしは食べ始めるからみんなもやってみなさい。

 ずずーずずーーー...うん、美味い!!』


『よし!今度は私よ!!えい!!』


美樹ちゃんがボタンを押しました。

ピピピピピ ピピピ ピ ピ....ピ.......

左のルーレットが『10』を、右側は『分』を指しました。


『チン!デキマシタ!!

オイシイドンベエヲドウゾ!!!』


『ほお、美樹ちゃんは10分どん兵衛か。良いのう。げっぷ...』


『私これだーーい好き!!美味しい!!』


『よし。今度は僕だ!!』


『頑張ってな。院生君!!』


教授の励ましとともに院生君がルーレットをスタートさせました。

ピピピピピ ピピピ ピ ピ....ピ.......

ルーレットは『10時間』を指しました。


『えっ!?10時間!?』


『ぷぷ...院生さん10時間どん兵衛だって...ぷぷぷ...』


『屯島君!!笑うなよ!!』


『チン...デキチャイマシタ...

イインデスカ?コレデ?』


『なんだか僕の時はアナウンスが違うんですけど...』


『どうじゃ?院生君。

 10時間どん兵衛は?』


恐る恐るフタを開ける院生君。

どんぶりの中にはお揚げの乗った得体のしれない塊がありました。


『どうもこうもないですよ!

 固まって一塊じゃないですか!』


『まあつべこべ言わず食べなさい。』


『うう..嫌だけど...』


泣きながら院生君はカツオ風味の小麦粉の塊をかじりました。


『どうじゃ?うまいか?』


『...見ての通りですよ...

 止めた方が良いです...おえ..』


『じゃあ最後は屯島君じゃな。』


『はい!!頑張ります!!』


自分の番を今か今かと待っていた屯島君。

大きく息を吸い込みどん兵衛をセット。

眼をつぶり、震える指でルーレットのボタンを押しました。


ルーレットが勢いよく回り始めました。

そしてだんだん動きがゆっくりとなっていきます。


ピピピピピ ピピピ ピ ピ....ピ.......


やがてルーレットが止まりました。


左のルーレットは『10』、右は『年間』を指しています。


『チン...デキタンデスガ...ドウシマス?

 コレ...』


『どうします?って?

 どうもしないよ!!食べないよ!!

 10年どん兵衛なんて絶対嫌だよ!!

 第一常識的におかしいでしょ!

 こんなの!!』


『馬鹿者!!文句を言うんじゃない!

 これがこの実験の醍醐味なんじゃ!!』


『そうだよ!屯島君!

 どん兵衛に申し訳ないよ!

 食べるんだよ!!』


『そうよ!屯島君!!

 食べなさいよ!!この意気地なし!!』


『いやだったら!!食べるもんか!

 ていうか食べられるもんか!!』


『あっ!逃げた!

 院生君、美樹ちゃん!

 とっ捕まえて縛り上げなさい。

 そして食べさせよう。

 あんなわがまま豚は懲らしめてやりなさい。』


『はい!!合点です!!』


『うわーん!やだったらやだよう!!

 助けてよぅ!!』


足の遅い太っちょは、いとも簡単にロープで縛り上げられました。

そして10年どん兵衛の前にしょっ引かれて行きました。

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