教授と院生と10分どん兵衛 ~その2~
日も暮れて、すっかり真っ暗になった窓の外。
2月の初めのこと。
雪がちらついております。
机に突っ伏して居眠りをしている院生君。
その肩を教授が揺らします。
『おい!院生君!
起きんかい!!』
『ふわー...
きょ、教授...
どうしたんですか...?』
『できたんじゃよ!
とにかくその汚いヨダレを拭かんかい!』
『はいはい...
じゅるじゅる...
とうとうできちゃったんですか...
あーあ...
で、なにができちゃったんですか?』
『これじゃよ!!』
教授が手にしているのはルーレットでした。
2個のルーレットが隣り合わせにあり、大きさとしてはB5ノートくらいです。
厚さとしては10センチくらい。
『これはなんですか?
ただのルーレットに見えますが...』
『ふっふっふ。
君の目は節穴かい?
これがただのルーレットに見えるのかい?』
『ええ...
ただのルーレットに見えますが...』
『...うん...そうじゃのう...
そう見えるのう...
しかしな、これはタイムマシン付きルーレットなんじゃ。』
『タイムマシン付きルーレット!?』
『そうじゃ!
この上にどん兵衛を置き、ルーレットを回すんじゃ!
指した時間がどん兵衛に作用する。
まあ良い。
つべこべ言わずちょっとやってみよう!』
教授はどん兵衛のふたを開け、粉末スープを入れると熱湯を注ぎました。
『液体スープの場合も先入れじゃ。
そうしないと味が染みないからのう。』
カツオ出汁のいい匂いがしてまいります。
これは東日本用のどん兵衛ですね。
教授はルーレットにそのどん兵衛を置き、ルーレットを回しました。
ヨダレを流した院生君がその様子を凝視しております。
ルーレットが勢いよく回っております。
ピピピピピ ピピピ ピ ピ....ピ.......
だんだんその動きが遅くなり左のルーレットが『5』を、右側は『分』を指しました。
するとタイムマシン付きルーレットが音声を発しました。
『チン!デキマシタ!!
アツアツヲドウゾ!!!』
『えっ?何があったんですか?』
『院生君、フタを開けてみたまえ!!』
院生君が震える手で、そのどん兵衛のフタを開けました。
立ち上がる湯気とともに、ふわーっとカツオの香りが広がりました。
麺も透き通り、おいしそうなどん兵衛のできあがり!!
『きょ、教授!!
すごい!できてる!!
すごい良い香り!!』
『すごいじゃろう。一瞬でどん兵衛ができてしまうのじゃ。
これでみんなで実験をしようじゃないか。』
『ズズーー。ズズズーー..
うまいうまい。』
『こら!聞いておるのか!?』
『あっ。すみません。
あまりにもうまくて...』
『わしにもよこさんかい!!』
院生君の手からどんぶりをひったくる教授。
これから屯島君と美樹ちゃんを仲間に入れて、どん兵衛の実験をするみたいです。
なんの実験でしょうね?