教授と院生と10分どん兵衛 ~その1~
『教授、教授!』
『どうしたんだい?院生君。そんなに慌てて。』
『教授は「10分どん兵衛」をご存知ですか?』
研究室の机でPCのディスプレーを眺めながら、院生君は教授に話しかけました。
院生君とPCの間には、湯気をたてているどん兵衛が置いてあります。
『院生君。10分どん兵衛とはなんぞ?』
『ご存知ないですか?
芸人さんのマキタスポーツさんが提唱した、新しいどん兵衛の食べ方です。』
『ほお。マキタスポーツさんか。
あの方のコントは素晴らしいからのう。
あの方が推奨しているのなら、よっぽど美味しいのじゃろう。』
『で、作ったのがこれなんです!
普通5分で出来上がるのですが、10分待つんです!』
自慢げにどんぶりを教授に見せつける院生君。
『ほお。ずいぶん伸びておるようじゃが...』
『これが美味しいんです!!味が染みて!
教授も一口いかがですか?』
『本当に美味いのかいな?』
怪訝な顔でどんぶりを教授が見ています。
『とにかくほら!!口を開けて!!
あーーん!』
『あーーん。』
口を開ける教授に院生君がうどんを入れてあげます。
『おっ?美味いじゃないか!!
なんじゃこれは!?』
『でしょう?』
きゃっきゃっとはしゃぐ二人。
まるで熱々のカップルみたいです。
どん兵衛の熱さに勝てるかな?
しかしおっさんとじーさんのカップルは、客観的に見ると気持ち悪いですね。
『なぁ院生君。
10分でなくてももっと美味しくなるのかのう。』
『そうですね。
いろいろ試す価値があるかもしれませんね。』
『屯島君も入れて、試してみようじゃないか!』
『承知しました!!』
『良いことを思いついたぞ!
院生君。ちょっと待ってなさい!!』
白衣を翻し、自分の研究室に教授は消えていきました。
『えっ?
教授?
教授~~~!!
いつもこうだもんね。また何か変なことを...』
院生君はため息をついて、どん兵衛をすすりました。
いったい教授は何を考えたのでしょう。
続きます。