教授と院生とあんぱんまん ~その3~
『それでは姪っ子君!
いよいよ劇の始まりじゃぞ!!
院生君!しっかりせんかい!!
着替えるぞ!!』
『うう・・・
僕はもうダメです・・・教授...』
教授は床に崩れ落ちている院生君を無理やり立たせ、彼の肩を支えながら研究室に入って行きました。
待つこと数分。準備ができた模様です。
姪っ子ちゃんはお母さんの膝に抱かれ、大きな目をクリクリさせながら即席のステージを見つめています。
簡易的なステージができており、そこには黒いカーテンがかかっております。
安っぽいラジカセから、有名なテーマ曲が流れてきました。
『勇気の鈴がりんりんりーーん ♪
不思議な冒険るんるんるーーん ♪』
『あっ!!アンパンマンのお歌だ!!
わーーい!わーーーい!!』
姪っ子ちゃんは大はしゃぎです。
その時、黒いカーテンがサーーっと、勢いよく開いたのでした。
向こうは真っ暗。
暗闇の中に誰か立っています。
いったい誰?
もしかして、あの有名な・・・?
スポットライトがその人物を照らし出します。
そこには一人のふっとちょさんが、右手の拳をふりあげてポーズを決めているのでした。
まぁ、なんて不細工で滑稽な...
そして憎たらしい....
彼の両頬はあの有名なヒーローのように、赤く塗られております。
茶色いマントは窮屈そうでパンパン。
ふとっちょさんはそんなことお構いなしに、陽気にダンスを始め、観客のリアクションを待ちました。
なんの反応もありません。
それもそのはず。
ステージ上で陽気なデブがルンルンしているだけですから。
ただ唯一姪っ子ちゃんだけは嬉しそうです。
止めどなく流れ落ちる冷や汗を袖で拭い、さっきまで陽気だったデブが名乗ります。
『僕、ザ・アンパンマン!!!』
『ざんぱんまん!?
ねえ!ママ!!
ザンパンマンだって!あのお兄ちゃん!!
わーーーい!!
ザンパンマン!!残飯マン!!』
新しいヒーローのお出ましに、姪っ子ちゃんは大喜び。
『まあ、残飯マンですって...
ふとっちょさんにはお似合いね...ぷぷぷ...』
お母さん方からは失笑が漏れています。
『違うよ!僕は残飯マンじゃないやい!
ザ・アンパンマンだよ!!!!』
『ザンパンマン!ザンパンマン!!』
『うう...ひどいや姪っ子ちゃん。
一生懸命メークしてきたのに...
ザンパンマンだなんて...』
屯島くん扮するザ・アンパンマンは女々しくメソメソし始めました。
そこにヨボヨボした老犬が、彼のもとにやってきました。
なんか犬臭いです。
『うう...迷犬ニートかい?
僕を慰めに来てくれたんだね...
ありがとう。ありがとう...
でもお前はちょっと臭いね...』
残飯マンはニートをむっちりした両腕で抱きしめようとしました。
しかしニートはブクブクした彼の二の腕をかいくぐり、そっぽを向くと彼におしっこをひっかけるのでした。
そう、この老犬すなわち迷犬ニートは非常に内気なのでした。
そして何事もなかったように、内気な老犬はヨボヨボとヨロヨロと退場していきました。
『ああ!!
ひどいよ!ニート!!君もかい!?君までもかい!?
あーーん!あーーーん!!!』
一人になったザンパンマンを照らすライトが消えると、黒いカーテンが降りてきました。
第一部が終了した模様です。
まばらな拍手がなんとも気まずい空気を醸し出しております。
5分の休憩の後は第二部らしいです。
この茶番劇はうまく行くのでしょうか...
心配です...




