教授と院生と「みきちん」 ~その後~
『おや。院生君。
デートはどうだったかい?
ずいぶん暗いようじゃが...』
研究室の机に突っ伏してどんよりしている院生君。
髪はバサバサでひげ面、黒いよれよれのTシャツを着た院生君に、教授が心配そうに声をかけました。
『...教授...
聞いてください..散々でした...
何だかよくわからないのですが、僕がスカトロだの変態だのって...』
『ほう。
うわ...酒臭いのう...
院生君は「変態スカトロ・エロ・酒乱ダメおやじ」だったのかいな?』
『そこまで言わなくても...
わーんわんわん...』
『おお!犬の物まねか!
上手じゃのう!!』
『違いますよ!!
泣いてるんです!!
わーんわんわん!』
『はっはっはっ!冗談じゃよ!
院生君!大丈夫じゃ!
教室に美樹くんがおるぞ!
院生君に謝りたいそうじゃ。早く彼女の元に行きなさい!!』
『えっ?美樹ちゃんが!?
僕に会ってくれるんですか!?
教授!!ありがとうございます!!』
ガバッと机から立ち上がり、院生君は理工学部の教室に走りました。
彼の走る姿を見て、微笑みながら頷く教授。目に涙が光っております。
院生君!名誉返上...いや名誉挽回!!
汚名挽回...いや汚名返上はうまく行くのでしょうか?
がんばって!院生君!!
『みきちん!!』
教室のドアを勢いよく開けると、そこには目に涙をためた美樹ちゃんが立っていました。
『院生さん!!』
『みきちん!!会いたかった!!』
両手を広げて美樹ちゃんに駆け寄る院生君。
そんな彼を、彼女はサッとよけました。
院生君はその勢いで机に衝突し、無残にも転倒してしまいました。
『院生さーん!!大丈夫ですか!?』
『うーーん...大丈夫だよ...ありがとう...
そうだよね...こんなヨレヨレTシャツ着た酒臭いおっさんだものね...
抱き付かれたくなんかないよね...』
『そんなことありませんよ!!院生さん!!』
『大丈夫だよ...気にしないでね...
そうそう...この前はごめんね...いててて...』
頭を軽く振りながら院生君は立ち上がりました。
『院生さん!!
私のほうこそすみませんでした...
「変態スカトロ・エロ・酒乱・不細工・口臭ダメおやじ」だなんて言っちゃって...
本当にごめんなさい!!』
『みきちん...そう思ってたんだね...
立ち直れるかな...僕...』
『院生さん!
もう一度デートしませんか?』
頬をピンクに染め、恥じらいながら美樹ちゃんが言いました。
『えっ!?ほんと!?』
『院生さん!!良いですか?』
『もちろん!!』
淡いブルーのワンピースを纏った彼女。
彼女からの、まさかの告白。
もじもじしている姿は本当に可愛らしいです。
そしてその笑顔はまるで女神様。
『みきちん!
ありがとう!!
その前に謝らせて!!』
『大丈夫ですよ!!』
『いや!僕の気がすまないよ!』
『じゃあ、院生さんの気がすむなら...』
院生君は土下座をして美樹ちゃんに謝りました。
『本当にごめんね!
みきちん!この通り』
(えっ...!?
院生さん?今なんて言ったの?
「みき! ちんこの通り」!?
ちんこの通りって...
この前から何度もちんこちんこって!!最低だわ!)
美樹ちゃんの顔がこわばりました。
それに気づいた院生君。あわてて美樹ちゃんに声をかけました。
『どうしたの?みきちん?
僕、何か変なこと言った?』
『...いえ、なんでもないの...
院生さんが急に土下座なんかするから。
それで気がすむなら良いですけど...』
『うん!この通り!!』
さらに頭を下げる院生君。
(えっ!!?
院生さん? この場でこの状況でまた「うんこ」?
「うんこの通り」って...?
何度も何度もうんこうんこ!
頭の中が肥え溜めなのかしら!?
やっぱり変態なのね!)
院生君に白い目を向ける美樹ちゃん。
しかしそれには気付かず、さらに続けました。
彼は頭を床にこすりつけながら、美樹ちゃんに告白をしたのです!!
『床に頭をこすりつけるくらい、みきちんが大好きだよ!!
ほら!!見て!!
みきちん!こすりつけるくらい大好きだよ!!』
(えっ!?
院生さん?私を馬鹿にしてるの!?
「みき! 「ちんこ」すりつけるくらい大好き」って?
私にちんこを擦り付ける気なのね!?
もう!この性欲大魔神が!!)
泣きながら告白した院生君。
その顔を上げようとして床に手を置くと、何かねっとりするものを触ってしまいました。
院生君は手についた粘着性のものを、思いっきり握ってしまいました。
粘着性の物質は、乾ききっていないニスでした。
手についたニスはネバネバし、白く糸を引いています。
さらに院生君は、それをなめてしまいました。
『うわ!!またニスだ!
ペッ!ペッ!ニスだ!
また、ペッ!!ペッ!!ニスを触って思いっきり握っちゃったよ!!
白くてネバネバしたものが離れないよ!
なめちゃったし!!』
その言葉を聞いた美樹ちゃんは、大きな瞳から涙をポロポロこぼし、院生君の右頬を大きく叩きました。
『院生さんのバカ!!もう知らない!!
自分のペニスを触って思いっきり握るなんて...
それもこんな大切な時に!!
「うんこの通り」だの「ちんこの通り」だの!
私にちんこを擦り付けるって!?
自分のペニスを思いっきり握ったですって!?
白くてネバネバしたものが出て来たですって!?
なにこの状況で手淫して気持ち良くなってるのよ!!
自分の出したものまでなめるなんて!
私帰る!!バカ!バーカ!!』
『えっ!?
一体何のこと!?
誤解だよ!!誤解だってば...みきちん...』
美樹ちゃんは泣きながら教室を出て行ってしまいました。
1人取り残された院生君。
彼に残されたものは、右頬の痛みと、手の中の白いネバネバしたものだけでした。
『僕も泣きたいよ...』
こうして院生君の二度目の恋は終わってしまいました。
でも院生君!大丈夫!!
まだ出会いはあるからね!!
きっと....
きっと....




