教授と院生と名曲 ~問題編~
今日は土曜日。
雲一つない、青い空が広がる荒川河川敷。
初夏の日差しも穏やかで、とても清々しい天気です。
時刻は午前11時。荒川から吹いてくる風も爽やかです。
理工学教室の人たちは、バーベキューに来ています。
参加者は教授、院生君、野球で大活躍した屯島君、そして女子学生の佐野さん、大木さんと言うメンバーです。
教授はビールを片手に、学生さんたちが楽しそうに準備をしている姿を眺めています。
大体準備ができたみたいですね。
薪と炭を集め、着火剤に火をつけ、金網を上に置いてバーベキューが始まりました!!
女子学生もいるので、院生君は大はしゃぎです。
飲みすぎないでくださいね!院生君!!
屯島君も大好物のお肉を目の前にして、飢えた子豚のようにブヒブヒ言っております。
ちょっと酔っぱらってしまった院生君。
悪い癖で、屯島君にいつものようにちょっかいを出し始めました。
『屯島君!もっと飲みなよ!飲んでったら!』
『院生さん!僕お酒弱いんですよ。』
『その体格で飲めないなんて言わせないよ!
じゃあどんどん食べなよ!!ほら!!』
『もう...
院生さんは酒癖が悪いんだから...
あっ!
院生さん!
僕のお腹の前で焼かないで下さいよ!!』
2人が戯れているとき、女子学生が屯島君に声をかけてきました。
『ねえ!屯島君!!
あなた、教授が持ってきてくれた箱の中のお菓子、しゃぶったでしょ!
おせんべいがふやけているわよ!!』
『これこれ。女生徒たち。箱のお菓子は「ぬれせん」じゃ。
もともとふやけておるんじゃよ!』
『教授ありがとうございます!
そうですよ!いくら僕だってしゃぶってなんかいませんよ!
失礼な!!
あっ!熱い!!火の粉が!!
院生さん!お肉を僕のお腹の前で焼かないでくださいって!
火の粉が飛んで僕の頭に飛んできますよ!
髪の毛に火が!!焼けちゃった!!
ほら!変なハゲになっちゃったじゃないですか!!』
『ぷぷぷ!
屯島君の頭、変なハゲ!!
おもしろーい!!』
佐野さんと大木さんが嘲笑っています。
『もう!!どうしてくれるんですか!院生さん!
佐野さんと大木さんが嘲笑っているじゃないですか!
うわ!薪に火がついて、火の粉が舞っているじゃないですか!
また毛に降り注いできましたよ!!
熱い!熱い!!毛が燃えてます!!
ちょっと鏡を見せてくださいよ!!
うわあ、ひどい...「じいや」のリアップでも使おうかな...
「じいや」のリアップが気になるな...』
『ふええ...とんじまくーん。
屯島君、「じいや」だって...君はおじいさんのことを「じいや」って呼ぶんだね...
変なハゲハーゲ...やーい...
あれ...
飲みすぎたみたい...
ああ頭が痛い...』
『院生君は完全に酔っぱらってしまったようじゃな。
明日の朝はトイレでうなって、頭を目覚めさせないといかんな。
足に二日酔いのツボ陰陵泉という部位があるから、今日の夜は湿布を足に貼って頭を見守ることじゃな。』
『あっ!院生さん!!
僕のお皿の前で吐かないでくださいよ!
もう!お皿が嘔吐物で汚れちゃったじゃないですか!!
教授!!お皿洗ってきます!!』
『とんじまくーん...』
『なんですか?院生さん!』
『水道のほうには、ホームレスのハゲがいるから気をつけて...
洞に住んでいるって噂だよ...』
『はいはい...
酔っ払いは嫌だな。もう』
散々な目にあった屯島君は、ブヒブヒ言いながら水道に向かいました。
汚れたお皿を洗っていると、後ろから男の人に呼びかけられました。
『おい!坊主!!お前はあそこに住んでるのか?』
『えっ?』
急に声をかけられ、びっくりして振り向くと、そこにはホームレスのハゲがいました。
『やばい...例のハゲだ...』
『お前はあそこに住んでるのか?
あの洞に!』
『そこに僕はいません。住んでなんかいません!!』
『そうか、じゃああの大きな洞を拭いて洗ってくれ!
俺が住むから。』
『ええっ?
なんで僕が...
今日は一体なんて日だろう...』
人の良い屯島君。
例のハゲに言われた通り、大きな洞を拭き、洗い始めました。
『ああ...もう帰りたいよ。
なかなか汚れが取れないし...』
傷心の屯島君。
彼は泣きながら、自分の今の心境を歌い始めました。
おや?
この歌は!!
あの名曲ではないですか!!!
そうです。
あの名曲は、このようにして生まれたのです!!
それは一体どんな曲なのか?
次回のお話で、それが明らかになります。
続く




