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教授と院生とエンゼル

『教授、教授!』


『どうしたんだい?院生君。そんなに慌てて。』


『チョコボールをよく買うんですが、どうしてもエンゼルが当たらないんです...』


 がっくりとうなだれる院生君。その手にはチョコボール(ピーナッツ)の箱が握られていて、心なしか腕がプルプル震えています。

 よっぽど悔しいのでしょう。


『院生君。エンゼルとは一体何なんじゃ?』


『えっ?教授はご存知ないのですか?

 金のエンゼルが当たれば1枚、銀なら5枚で素敵な商品がもらえるというストーリーなんですよ。』


 院生君は頬を伝わる涙を拭いました。


『ほお。そうか。なら私も作ってみようかね。』


『何をですか?』


『決まっているではないか、エンゼルだよ。それも金、銀のみならず、銅や鉛、パラジウムなどでも、何体でも作ってあげよう。だから泣くんじゃない。』


『いえ..教授..「何体でも」って...何かとんでもない勘違いを...

 このチョコボールの「くちばしにあたる部分」にエンゼルの絵があるんです。

 お言葉ですが、3次元的なもんではないんですよ。』


 院生君は教授に、握っていた箱を渡しました。


『ふ~ん...チョコボールにエンゼルねぇ...

 ん!そうか!わかったぞ!!』


 箱をしげしげと興味深そうに眺めていた教授は、何かひらめいた様子です。


『よし!私も研究者の端くれだ。院生君に素敵なエンゼルを作ってあげよう!!』


 そう言った教授は白衣を軽やかに翻すと、颯爽と実験室に消えていきました。


『あの! 教授!! 教授~!! あ~あ、行っちゃった...

 いつもあれで変なものを作ってくるんだよなぁ...

 研究はしなくて良いのかなぁ...』


 1人になってしまった院生君は、仕方がないので自分の研究を始めました。

 机に向かって資料を眺めていると、突然背後から教授の声が聞こえてきました。


『院生君!院生君!どうじゃろう!!』


 少年のように瞳を輝かせた教授は、チョコボールの「くちばしにあたる部分」を、何枚も院生君に差し出しました。それには変な人物が描かれています。


『教授...これは一体?変質者の画像ですか?』


『馬鹿者!失礼な!!どう見てもエンゼルだろうが!

 だがね、これはただのエンゼルではない。組み合わせればすごいものができるんだ!』


『これがエンゼル!? 変質者じゃないんですね!?

 よだれを垂らしながらお尻丸出しでニヤニヤしているこのおっさんがエンゼルなんですね!

 本当にこれが、このおっさんがエンゼルで良いのですね!? 教授が思われているエンゼルとは...

 それにバラの花がお尻の穴に刺さっていますよ...

 この変質者..いやエンゼルの絵を組み合わせるって?

 何をおっしゃっているのかわかりませんが...』


『とりあえずこれを持ちたまえ。』


 教授は一枚のくちばしを渡しました。

 そのくちばしに描かれている変質者の腹部には、大きく『H』と書かれていました。


『やっぱりHなんだ...スケベっぽい顔してるもんね...』


『違う違う!このHは水素だよ!!』


『水素?』


『そう、金属だけではつまらないだろうから、とりあえず水素や酸素でエンゼルを作ってみた。

 これで有名お菓子メーカーに売り込んでみようと思う。どうだね?』


『どうだね...って...』


『つべこべ言わずに『H』を2枚、『O』を1枚くっつけてみなさい。』


『うわ~!「くちばしにあたる部分」が水になった!!』


『どうだ面白いだろ?Hを2枚、Oを1枚でH2Oになったんじゃ。

 君もいろいろ実験してみなさい。』


『はい!教授!ちょっと実験してみます!!

 でもなんだか最初の目的とかなり食い違ってきた気もしますが...』


『小さいことは気にしない!!さあ一緒に実験室に行こう!』


 教授に肩を叩かれた院生君はちらばっていたエンゼルをかき集め、教授と一緒に実験室に入っていきました。


 次の日の朝。

 教授と院生君のいる大学が、ニュースに流れておりました。

 テロップにはこう書かれております。


『実験室が大爆発!原因は大量の水素!さらにはオゾンまで!

 変質者の画像を机に並べた教授と大学院生逮捕!!』


 リポーターの声がスピーカーより流れてまいりました。


『警察によりますと、昨日2人は水素とオゾンを大量に発生させました。そしてその水素に火をつけて爆発させ、実験室を炎上させたとのことです。

 逮捕された教授と大学院生はうわごとのように『エンゼルが、エンゼルが..』と、意味不明な言葉を繰り返しています。

 机の上には下半身を露出した変質者の絵が何枚も並べられており、新たなるカルト教団を作っているのではないかと疑いが持たれております。以上某国立大学の研究室前からでした!!』


【このお話からの教訓】

『エンゼルは金か銀』

 エンゼルはあまり欲張らず、金と銀のみで良いということ。

 誤って手を広げ、有害な物質や危険な材料でエンゼルを作ってしまうと大変なことになってしまう。

 そもそも金とか銀とはエンゼルの色を示す『金色』『銀色』のことで、素材ではないということを良く理解しないといけない。

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