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命令士アルルの異世界冒険譚  作者: 木原ゆう
第一章 絶対循守のインジャンクション
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LV.004 食料調達に出掛けました

「ん……あ、おはようアルル。貴方まだ起きてたの?」


 頬に手を突きながら黄昏ていた俺に声を掛けくるアーシャ。

 

 少し茶色がかった長い髪。

 大きな瞳。

 間違いなく美人の部類に入る、俺の幼馴染。


「あー、うん。何か眠れなくて……じゃねぇよ。お前が俺に命令したんだろ? 『一晩中警備しろ』ってよ……」


 ……命令した・・・・、か。

 アーシャは俺が《命令士コマンダー》という職業になったって聞いたら、どう思うんだろうか……。


「え? ……あ。そ、そうよ! ちゃんと分っているじゃない! 見張り番、ご苦労様でした!」


 そう言い体裁を取り繕うとするアーシャ。

 絶対忘れてたよなこいつ……。

 昨晩ミレイユが怖い事を言ったから、そのことを今になって思い出したのかも知れない。


 アーシャは昔っから幽霊系の話はてんで駄目だったし。

 今まで一体何度、夜中にたたき起こされてトイレまで付いて行かされた事か。

 泣く子も黙る《細剣士フェンサー》が聞いて呆れるよな……。


「ふわぁ……。なんかアーシャの顔みたら眠くなって来た……」


 そのままのそりと起き上がり、テントの外に置いてある寝袋へと向かう俺。

 当たり前だが俺は女性陣の陣取っているテントには入れて貰えない。

 1人寂しく外で寝ているのだ。

 マジ鬼畜パーティだよここは……。


「ね、ねぇアルル……。昨日は本当に……その……何も無かったわよ、ね?」


 周りをキョロキョロと怯えた様に見回すアーシャ。

 どうせ本当の事を言ったって信じないだろ。

 俺にしか見えないティアラの事を話しても、俺のあたまがおかしくなったと思われるのがオチだろうし……。


「ああ。大丈夫だ。お前の大っ嫌いなお化けさんは出て来なかったよ」


「お化け……!」


 咄嗟に俺の腕に掴まるアーシャ。

 だから『出なかった』と言っておろうに……。

 全く……。


(それにしてもそのお化けティアラは何処に行ったんだろうな……)


 もしかしたら夜にしか姿を現さないとか?

 お化けなんだからそうなのかも知れないよな……。

 だったら取り憑かれてもある程度は俺のプライバシーは守られるって事なんだろうか。

 うーん。


 眠い。


「ちょっと腕が痛いですアーシャさん」


「な、何よ……。良いじゃない腕くらい……」


 いや……腕を掴まれるくらいなら別にいいんですけど……。

 強く掴まれ過ぎて折れそうなんですが……。



 その後俺は何とかアーシャの手を振り解き。

 他の皆が起床するまでは冷え冷えの寝袋で仮眠をする事にした訳で。




◆◇◆◇




「必殺! 猫プレス!」


「ぐはっ!」


 物凄い衝撃が寝袋の中の俺を襲う。

 そして一瞬で目が覚める俺。


「何時まで寝ているのニャ! もうすぐお昼になっちゃうのニャ! このぐーたらニートが!」


 俺の寝袋の上で、というか俺の上で何回もジャンプをして圧死させようとしているのは猫野郎――もとい獣人族のシュシュだ。

 まあ、子供みたいな体格だから全然重くは無いんだけど……。


「てか誰が『ぐーたらニート』だよっ!」


「ニャ!?」


 ババっと起き上がりシュシュの連続ジャンプ攻撃をなんとか回避する俺。

 あぶねぇ……。

 もうちょっとで下腹部を踏まれる所だった……。

 危機一髪。


「あら、起きましたねアルルさん。……あら? 昨日の《魔力》はもう感じないですわね……。何だったのでしょうかね、あれは……」


「や、止めてよミレイユ! 話をぶり返すのは……!」


 おっとりと笑うミレイユに大声で抗議をするアーシャ。

 うん。

 いつもの光景だな。


「はぁ……。やっと頭が回ってくる様になったぞ……」


 首をコキコキ鳴らしたデボルが大欠伸をしながら近付いて来る。

 相変わらずの寝起きの悪さだ。

 大変ですね、竜人族ってのも……。


「皆もう起きてるんだな。取り敢えず昼飯の準備でもすっか…………あ」


 アイテム袋を開き、食材が何一つ無い事に気付く俺。

 昨日のシチューで全部使い切ったんだっけ……。


「悪ぃ。食材が切れた。調達してくるから、誰か護衛に――」


「ニャんだってー!? せっかくシュシュはお腹が空いたからアルルを起こしてやったというのに、材料がニャいだってー!?」


 凄い形相で俺を睨むシュシュ。

 でも全然迫力が無い。


「……お前らの食欲が旺盛過ぎるからだろ。特にそこの大女と痩せの大食いの女――」


「誰が大女だゴルァ!」「誰が痩せの大食い女よ!」


「ぶへっ!」


 双方からパンチが飛んで来ました。

 当然俺にはそのパンチは見えない訳で。

 というか死ぬ……。


「あらあら。仕方無いですわね……。《ヒール》」


 瀕死の俺の顔に回復魔法を唱えるミレイユ。

 途端に緑色の淡い光に包まれ、傷が回復する。

 いつもの光景、いつもの流れ。

 そろそろパワハラで訴えてもいいですか。

 《職業安定所》に……。


「ほんっと、アルルって駄目駄目よね。まあ、そろそろ食材が尽きる頃だとは思っていたけれど……。デボル? アルルと2人で食材の探索に行って貰えるかしら? 私たちは魔王城へのルートをもう一度検索してみるから」


「ああ。分った。ほら、立てよアルル」


 デボルの手に掴まり立ち上がる俺。

 握力が強すぎ。

 手が潰れる……。


「恐らく魔王城近辺には何かしらの強力な《結界》が張ってあるのだと思います。ナユタさん達とも逸れてしまったのも、この《結界》が原因なのではないかと……」


「成程……。言ってしまえば『濃い霧』みたいなもので目的地を狂わされているって感じなのかしらね……」


「ナユタ達は大丈夫なのかニャ……。シュシュは心配だぞ……」


 さっそく3人で話し合いが始まった模様。

 確かにナユタ達の事は心配だし、あいつらにも俺の料理を腹いっぱい食べさせてやりたいし……。


「行くか、デボル」


 俺の言葉に頷くデボル。

 そして俺は彼女の得物である大きな竜槍を担ぎ――。


「・・・」


「? どうした、アルル?」


「……重いから持ってくれませんか」


「採集地に到着したらな。どうせお前はモンスターと戦えないのだから、それくらいはしてもらわんと」


「……ですよね」


 諦めた様に溜息を吐く俺。

 そう。

 俺は全くモンスターと戦えるだけの戦闘力を宿してはいない。

 その部分に関しては、完全にパーティのお荷物な訳だ。


(……でも今はもう《無職》じゃないし……。どうなんだろうな……)


 重い重い竜槍をズルズルと引きずりながら俺は――。



 ――ティアラの言っていた『レベル上げ』というものに挑戦してみようとか思った訳で。





 ……デボルにコバンザメする形で。

















 

【登場人物⑤】

NAME/シュシュ

SEX/女

RACE/獣人族

JOB/斧破士ディザスター

SIZE/B60W49H58


猫耳尻尾が特徴の獣人族の少女。

攻撃・前衛、超近接戦闘特化型である《斧破士ディザスター》という職業に就いている。

竜人族の特徴が《竜化》であるのと同じく、獣人族の特徴として《獣化》が存在する。

シュシュの場合は輝く白い毛に覆われた《白虎》に変化し、目にも止まらぬスピードで敵を殲滅する。

ただし《獣化》後、一定時間は行動不可状態となるので過度な使用は禁物である。

またたび御飯命。

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