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命令士アルルの異世界冒険譚  作者: 木原ゆう
第四章 疑心暗鬼のマーシナリー
26/65

LV.025 無事、仲間達に再会できました

「や~っと着いたぁ……!」


 俺の後ろで大きく伸びをするローサ。

 あれから丸2日俺達は延々と歩き続け、ここ《グレイロック》の街へとやってきたのだ。


「んーー……っと。流石に俺も疲れたな。一風呂浴びてゆっくりしたい気分だ」


 同じ様に大きく伸びをするナユタ。

 俺はその光景を眺めながらも、多少後ろめたさを感じてしまう。


 すでに彼女らには2つほど《命令》を掛けている。

 1つは《魔剣ニーベルング》の存在を忘れる事。

 彼女らの目には、俺の装備している剣がただの黒剣としか映っていない。

 あの森の中でたまたま手に入れたとか、適当な嘘でごまかして今に至っている。


 そしてもう1つは《グレイロック》の街にアーシャ達が滞在しているとの情報を、途中で立ち寄った街のギルドで入手したという『偽の情報』。

 これにより、彼女らは全く疑うこともせずに《グレイロック》の街まで最短距離で向かってくれた訳だ。


(……アーシャ……)


 幼馴染の顔が脳裏に浮かぶ。

 そういえば、こんなに長い間彼女の顔を拝まなかったことなど、今までに一度も無かったかも知れない。

 ユフィア姉さんが死んだ後、何だかんだと俺の事を気に掛けてくれていたアーシャ。


「ぶぅ……。アルルちゃん、いまアーシャちゃんの事考えてたでしょう~」


「う……」


 下から覗き込むようにローサが頬を膨らませながらも言う。


「だからローサ……! そんなにアルルに顔を近づけるなと……!」


「え~、なんで~? 良いじゃん別にぃ……。それともアレかなぁ? ナユっちの許可を取らないと、アルルちゃんとイチャイチャしたらいけないとかなのかな~?」


「ぐっ……! そ、それは……そんな事は……無いが……」


 追求するローサにたじろぐナユタ。

 何をしているんだこいつ等は……。


「あああ! もう良い! 何でもない! 行くぞ!」


「あ、逃げた~! こーら、ナユっち~! 話はまだ終わってないぞ~!」


 ずんずんと先に進むナユタを、巨乳をゆさゆさと揺らしながらも追うローサ。

 うん。

 こいつらといると平和だな、とか思ってしまうから不思議だよな……。


「……さ、俺も行くか」


 重い魔剣を担ぎながらも彼女らの後を追う。

 もうすぐアーシャ達に逢える……。

 彼女らはどんな顔をして俺を迎えてくれるのだろうか。

 

 そんな期待感が俺の心に満ちていた。





「ニャニャニャニャ~~~!? アルルが戻って来たニャ~~~!!」


 街に入って早々、猫娘に再会する。


「よう、シュシュ。良い子にしてたか」


「ニャニャ!? ニャんだアルル、その馬鹿でかい剣は……! お前みたいなもやしっ子が私の《剛破大斧グレイムル》に匹敵するくらいの大きさの大剣なんて担げる訳が――」


 さっそく俺の担ぐ《魔剣ニーベルング》に喰い付くシュシュ。

 まあ、当然か……。

 俺は深く溜息を吐きながらもシュシュに近づく。


「にゃ、ニャんだ……! やるのかニャ……!」


 謎の構えを取るシュシュ。

 そして俺は彼女の猫耳にこう、囁く・・


なあ・・シュシュ・・・・これはな・・・・ここに来るまでの・・・・・・・・道中でたまたま・・・・・・・手に入れた・・・・・黒剣なんだ・・・・・だから余計な・・・・・・詮索とかするなよな・・・・・・・・・


 世界が、静止する。

 白黒に支配される。


「ニャ……ニャあああん……/// わ、分かったニャン……! ニャウぅん……///」


 恍惚の笑みを浮かべながらも、何故か俺の腹にそのまま頭をスリスリし出すシュシュ。

 完全に猫だなこれ。


「…………はっ! わ、私は一体ニャにを……!」


 《命令の力》により一瞬の記憶を失ったことにより、何が何だか分からないといった表情のシュシュ。

 俺は彼女の頭を優しく撫でる。

 そして思いっきり肉球で弾かれる。

 ……うん。

 凄く痛い……。


「……何をやっているんだ、お前らは」


 呆れた表情のナユタが後ろから声を掛ける。


「ねぇねぇ、シュシュちゃん~。皆はどこかな~?」


「ニャ! これは行方不明になっていた『男女』と『おっぱいエロ』ニャ!」


「誰が男女だ!」「ひどい~! シュシュちゃん~!」


 ナユタとローサに同時に責められるシュシュ。

 いや、特徴をそのまま述べただけだろシュシュは……。


「い、痛いニャ! やめるニャ! ぼ、暴力反対ニャ~!」


 ひょいとナユタに襟首を持ち上げられ抵抗出来ないシュシュ。

 なんか両頬をローサに思いっきり抓られているし。


 はぁ……。





「アルル……! ナユタにローサまで……! 無事だったのね貴方達……!」


 シュシュに連れられ、街の中央にある宿まで案内された俺達3人。

 ちょうど買い物帰りだったのだろう。

 アーシャは大きな紙袋を3つほど抱えて宿に戻るところだったようだ。


「! その剣は……!」


 紙袋を地面に落とし、腰に差した小剣を抜こうとするアーシャ。

 無理も無い。

 彼女はこの魔剣の脅威を嫌というほど味わったのだから。


 俺は何も言わずに彼女に近づき、こう告げる。


「ただいま、アーシャ。お願いだから・・・・・・、今はこの魔剣の事は忘れてくれ」


 《おねがい》が発動。

 世界の時が静止し、一瞬のうちに白黒となる。


「……分かったわ。魔剣のことは、全て忘れる……」


 小剣を鞘へと戻し、何も無かったように紙袋を拾い上げるアーシャ。


(……やっぱ、アーシャに《ささやき》は使いづらいよな……)


 万が一《おねがい》が効果を為さなかった場合は《ささやき》の使用も考えたが、上手く行った様だ。

 俺はほっと胸を撫で下ろし、彼女の持つ紙袋に自然と手を伸ばす。


「……あれ? 私いま、何か言おうとしなかったかしら……」


 きょとんとした表情のまま俺に紙袋を手渡すアーシャ。

 苦笑いをしながらもそれを受け取る俺。

 いつもの光景。

 いつもの、俺の役割。


「デボル達は? 宿にいるのか?」


 未だに後ろでギャーギャーやっているナユタら3人を無視し質問する。 


「え? ……あ、デボルとレムは酒場に行っているわ。ミレイユは司祭様の所だと思う」


「そうか……」


「?」


 皆、無事だったんだな。

 もう一度俺は、このパーティに戻ることが出来るんだ。

 そう。

 また元の生活に戻れるんだ。

 彼女達の世話をしながら、尻に敷かれつつも幸せな日々を――。


「……何泣いてるのよ、アルル……」


「へ?」


 アーシャに言われ、初めて気付く。

 いつの間にか俺の頬には一筋の涙が流れていた。


「あ~ん! アーシャちゃんがアルルちゃんを泣かした~!」


 いつの間にか俺達の背後に立っていたローサが大声を上げる。


「ちょ、違うわよ! 私じゃないったら! アルルが勝手に――」


「アーシャは鬼畜ニャ。きっと戻って来たばかりのアルルに酷い事を言ったのニャ。もう一度言うニャ。アーシャは鬼畜ニャ」


「こらシュシュ! あんたの『またたびご飯』の材料の買出しに行ってあげてたのに、そんな事を言うの! もう作ってあげないんだから!」


「……私が悪かったニャ」


 一瞬で撃沈するシュシュ。

 ていうかアーシャがシュシュの『またたびご飯』を……?

 彼女が料理が出来るなんて、一度も聞いたことが無い。 

 それは本当に料理としての形を成しているのだろうか……。


「はぁ、俺はもう疲れたぞ。この街には温泉はあるか、アーシャ?」


 溜息を吐きながらも会話に加わってくるナユタ。


「え? あ、うん。酒場の横に銭湯があったと思うけど……」


「じゃあ、飲んだくれ2人を無理やり誘って、一風呂浴びてくるぞ、俺は」


 そう言い残し去って行くナユタ。

 飲んだくれ2人……。

 デボルとレムの事か……。


「あ、ちょっとナユタ! もう……。せっかく無事に再会出来たっていうのに……」


「……」


「な、何よアルル……」


「……いや、なんでも」


 変わらない。

 アーシャもシュシュも。

 きっと、デボルもレムもミレイユもそうだろう。


 俺は、戻って来たんだ。

 いつの間にか、俺の顔には笑みが零れている。


「……気持ち悪いわね、まったく……」


 アーシャの嫌味も今の俺には心地良い。

 今夜は再会祝いだな。

 目いっぱいご馳走を作ってやろう。


「シュシュ、ローサ。今から街に買出しに行って来るから、お前ら手伝って――」


「嫌ニャ」「や~だよぅ」


「…………あそう」


「私もパス。でもせっかくの再会祝いですもの。ご馳走をたんまりと用意して貰わないとね♪」


「…………ですよねー」




 そう、予想通りの答えが帰って来た訳で――。


















アルル:食事の準備に入ります

ナユタ:風呂、行きます

ローサ:「おっぱいエロはひど~い~!」

シュシュ:にゃうーん

アーシャ:「お腹空いた……」

デボル:飲んべぇ

レム:飲んべぇ

ミレイユ:礼拝中

ティアラ:???

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