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命令士アルルの異世界冒険譚  作者: 木原ゆう
第四章 疑心暗鬼のマーシナリー
23/65

LV.022 彼女達が味方で良かったです

「ローサ! 俺とアルルに付与魔法エンチャントを!」


「は~い。《闇夜に浮かびし月の淡光よ。彼らに課せられた重し楔を解放せん》」


 巨乳を俺の背中に押し付けながらもローサは付与魔法と唱え始める。

 お前久しぶりに俺に会ったからってワザとやっているだろう……。


 俺とナユタを淡い光が包み込む。


「お、軽くなった」


「よし。これで敵の奇襲対策は万全だ。アルル。俺から決して離れるんじゃないぞ」


「あら~、ナユちゃん。凄く男前~」


 ローサの付与魔法のお陰で身体に全く重みを感じない。

 ただでさえ反応速度が高いナユタにしてみたら、背後からの奇襲があったとしても神速で対応できてしまうのだろう。


『ギッヒッヒッヒィ!』


『グルルルル……』


 そして次から次へと現れてくる魔王城のモンスター共。

 数は……うん。

 多すぎて数えられない……。


「やっちゃえ~、ナユちゃん~」


「……はぁ。ちゃんと付いて来いよ」


 能天気なローサの掛け声に溜息混じりにそう答えるナユタ。

 何だかさっきからチラチラと俺達を見ているが、何か気になる事でもあるのだろうか。

 ……。

 まあ、明らかにローサが近過ぎるんだけど……。

 胸ェ……。


 ナユタは背中に背負った大太刀を抜く。

 《骨喰斬丸ほねくいざんまる》。

 ナユタの祖国である《倭国》で作られた名刀らしいけど、詳しくは知らない。


「さあて……」


 刀身をペロリと舐め、構えの姿勢をとるナユタ。

 その姿を間近で見て鳥肌が立つ俺。

 闘気というのか、殺気……?

 ナユタの全身が薄紫色の霧のようなもので覆われて行く。


「もう~、ナユちゃん……。そんなに殺気をビンビンに撒き散らして~。凄く悪い顔になってるよぅ」


「五月蝿い。行くぞ」


 そう言い地面を蹴ったナユタ。

 俺には彼女が消えたようにしか見えない。


「ほうら、置いていかれちゃうよ、アルルちゃん」


 そう言い余計に胸を押し付けてくるローサ。

 いま耳元にそっと息を吹きかけただろお前……。

 青少年を誑かすのは止めて貰えますか……。






「《餓楼一閃》!」


 横に一回転したナユタはそのまま《骨喰斬丸》を横一文字に振り抜く。

 直後、キーンと空気が張り詰めた音が木霊する。


『グギャアアアアアア!』


 一瞬のうちに胴体を真っ二つにされる数体のモンスター。

 一撃必殺とはまさにこの事。

 だてに《刀剣士ソードマスター》を名乗ってはいない。


『キキキキィ!』


「多いな……まだ来るか」


 絶命し消失したモンスターの後からもウジャウジャと這い出して来るモンスター。

 大猿のような奴、骸骨のような戦士、ゴーレムの様な馬鹿でかい奴、大蛇のような奴……。


「おい、ローサ! 時間を稼ぐからドデカいやつを一発頼む!」


「え~? ナユちゃん一人で大丈夫だよぅ。付与魔法エンチャントだって掛けたんだしぃ」


 何とか爆進するナユタに追いつこうと必死の俺達。

 というかそろそろ走り辛いから離れよう、ローサ。

 ゆっさゆっさとアレが……。


「くそ、ローサばかりイチャイチャしやがって……」


「え~? 何~? 何か言った? ナユちゃん~?」


「何も言ってない! いいか! ドデカいやつだぞ! 任せたからな!」


「あ、ちょっとぉ~! もう~。ナユちゃんは我侭さんなんだから~……」


 完全に俺を抜きで話を進めているナユタとローサ。

 それも仕方が無い。

 今までずっとそうだったんだから。

 荷物持ち兼食事当番でしかなかった俺だから。


 ナユタは大太刀を鞘に収め、両脇に差した小太刀を二本抜く。

 《雷鳴阿國らいめいあごく》と《水響吽國すいきょううんごく》。

 表裏一体の二刀をそれぞれ逆手に持ち、構える。


『クエエエエエ!』


「五月蝿い。耳障りだ」


 モンスターの群れに突進し、演武するナユタ。

 付与魔法の効果あってか、先程から彼女の無双が目で追えない俺。

 見えるのは次々と倒されて行くモンスター共と、聞こえるのは奴らが切り裂かれる音のみ。


「相変わらずスゲェなあいつは……」


 後を追いながらも感心する俺。

 才色兼備とはナユタの為にある言葉なのかも知れない。


「ごめんね~、アルルちゃん~。ちょっとおっぱい離すね~」


 俺から離れ、魔法の詠唱に入るローサ。

 いや、別に謝らなくても……。

 ていうか俺が押し付けるように頼んだみたいな言い方になってる……。


 そしてそっと目を閉じるローサ。

 彼女の呟きにより周囲に魔方陣が描かれて行く。

 幾何学模様のそれは神秘的な光を放ち、それぞれが複雑に絡み合っていく。


『ガウウウ!』


 突如、俺とローサの背後から狼型のモンスターが急襲してきた。


「やば……!」


 俺は咄嗟に《命令》を唱える為に振り向くが――。


「《無眼友引》!」


『ギャギャン!』


 突如地面から突き出された歪な形の刀により串刺しになるモンスター。

 ナユタの方を振り向くと、背に背負っていた筈のもう一本の刀、《苗刀奇斧ミャアタオ・アヤニフ》を地面に突きたてているのが見える。

 鎌の様にも斧の様にも見える歪な形の刀。

 いつだったか、古墳を探索した時に手に入れた、いわくありげな古代刀だ。


「ありがとう~、ナユちゃん」


 ニコッと前方のナユタに笑顔を送るローサ。

 そして――。


「いっくよ~。危ないから離れてね~」


 詠唱を終えたローサは前方に向かい両手を伸ばす。

 ビリビリと空気が振動しているのがはっきりと分かる。

 ローサの全身に幾重にも重なっていた魔方陣が全て、彼女の構えた手のひらに収束して行く。


「今だ! 撃て! ローサ!」


 ナユタが無双を止め回避する。

 その瞬間を狙ってか、ローサの両手から凄まじい轟音と共に光の波動が発射される。

 熱さも寒さも感じない。

 そこにあるのは、ただ一つ――。


 

 ――消滅のみ。



 そして大きく風穴の開いた城壁。

 完全消滅したモンスターの亡骸からは数々のドロップアイテムやGゴールドが出現する。


「……相変わらず無茶苦茶だな……お前の究極魔法は……」


 刀を鞘に収め、呆れ顔でそう言うナユタ。


「あれ~? ねえ、ナユちゃん~。あそこから外に出れるんじゃな~い?」


 ローサの指差す先。

 大きく風穴の開いた城壁。

 確かにそこから外が窺える。


「……お前らが味方でホントに良かったよ、まったく……」


 

 ――そう呟いた俺の声は、モンスターの居なくなった魔王城に響き渡ったのだった。


















【魔王城モンスター討伐報酬】

43150G

大鎧猿の鋭爪×13

大鎧猿の尖牙×18

髑髏戦士の怨念×3

髑髏戦士の骨×25

大龍蛇の鈍鱗×7

大龍蛇の鎌尻尾×5

岩巨人の堅頭×2

岩巨人の堅腕×6

腐った内臓×5

緑色の毒液×12

邪悪眼×1

折れた鋼鉄剣×4

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