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命令士アルルの異世界冒険譚  作者: 木原ゆう
第一章 絶対循守のインジャンクション
2/65

LV.001 謎の女が降ってきました

「出来たぞー」


 1人テントの外で食事の準備を済ませた俺。

 ていうか俺だけに準備をさせ、女共はテントの中できゃっきゃうふふしてやがるし……。

 マジでいつか見ていろよお前ら……。


「おーい! 飯が出来たって言っ――」


 返事の無い奴らに再度声を掛けようとした瞬間。

 上空から何かが俺目掛けて落ちて来るのが見えた訳で。


「隕石……!?」


 咄嗟に頭を覆い蹲る俺。

 まだ死にたくねぇよおおおおおお!


『シュタ!』


 ……なんか思っていたのと違う衝撃音が……?

 ていうか擬音?

 ……女の……声?


『危なかった……。危うく激突死するとこじゃったわ』


「・・・」


 …………誰?

 え? 人間?

 人間が降って来た?

 空から?


『おお! 良い匂いがするの! 飯時か? 若いの』


「え? あ、まぁ……。そうですけど……」


 何だか物凄く胡散臭い格好の女。

 どっかの占い師?

 ジャラジャラとネックレスみたいな物を沢山身に付けているし。

 顔の下半分は布で隠しているし。


 それに何だか『声』が――。


「えと、貴女は……」


『ワシか? 通りすがりの《霊媒師ミスティック》じゃよ』


「え……? 《霊媒師ミスティック》……? ……《霊媒師ミスティック》!?」


『うお! びっくりした! 急に大声を上げんで貰えるか……』


 《霊媒師ミスティック》っていやぁ、超が付くほどの激レア職業じゃねぇかよ……!

 世界に数人しかいない職業じゃ無かったか……?

 そんな人間がどうして空から……?


「ねぇ、アルル。食事はまだ?」


 急に声を掛けられビクッとなる俺。

 テントから出てきたのはアーシャだ。


「あ、いや、もう出来てるけど……」


「何よ。ならさっさと呼んでよ。みんなお腹空かせて待っていたんだから」


 そう言いプイっとそっぽを向いてテントにいる他の奴らに声を掛けるアーシャ。

 おいおい。

 このいかにも怪しい女の事は完全無視かよ……。


「何なんだよあいつ……」


『無理も無いじゃろう。あやつにはワシの事が見えんのじゃよ』


 なんか良く分らない事を言う霊媒師の女。

 見えない?

 なんで?


『お主は不思議な男じゃな……。お主になら託せるかもしれん・・・・・・・・


「はい?」


 まったく意味不明。

 そしてさっきから凄く頭痛がするし。

 なんかこう、声が耳からじゃなくて直接『脳』に響いている様な――。


「お! 今夜はシチューか! 肉はたっぷり入っているのだろうな、アルル?」


「わぁ……! 凄く良い匂いがしますね……! 流石はお料理担当のアルルさんです」


「シュシュは料理の腕だけはアルルを認めてやるニャ。料理の腕だけは」


 続々とテントから現れる我儘な女共。

 そして用意した椅子に座り勝手に頂きますを始める始末。


「お、おい……。お前ら……」


『無駄じゃよ。お主にしかワシの姿は見えん』


 だからそれの意味が全くわかんねぇんだっつの!

 ちゃんと説明してよ!


「? 何ブツクサ1人で言ってるのよアルル? 早く食べないと貴方の分まで無くなっちゃうわよ」


 俺の様子に気付いたアーシャが不思議そうに声を掛ける。

 俺以外にはこの謎の女が見えない……?

 マジかよ……。


『取り敢えず説明は後じゃな。また深夜にでもお邪魔するでな』


「あ――」


 そう言いスッと闇夜に消えた女。

 どういう事なんだ……? 一体……。



「……てかお前ら! もう殆ど残ってねぇじゃねぇかよ! 俺の分までマジで喰うんじゃねえええええええええ!」





◆◇◆◇





 深夜。

 食事を終え、皆が寝静まった頃――。


『……お主は1人外で寝るのじゃな』


「うお! びっくりした!」


 いきなり背後から声を掛けられビビる俺。

 神出鬼没だなお前!


「……仕方ねぇだろ。テントは一つっきゃないし……。男の俺が見張りに立たなきゃなんねぇし……」


 無職で立場の無い俺は、いつもこいつらのパシリとして顎で使われて来たのだ。

 このパーティに入れて貰えたのだって、たまたま俺がアーシャの幼馴染だったからだし。

 今までずっと数々の武勲を上げてきた彼女にコバンザメする形で何とか身銭を稼いできたのだ。

 ホント世知辛い世の中ですよ。


『……まぁお主の事情なんかこれっぽっちも興味は無いがな』


「まだ何も言ってないのに酷いねお前!」


 つい大声で突っ込んでしまう俺。


「もう……。五月蝿いわね……。誰かいるの?」


「(あ、やべ……!)」


 俺の声で目を覚ましたアーシャ。

 なんでいつもこいつだけは俺の行動に敏感に反応するんだか……。


「? 誰もいないじゃない。何よ、寝言? 静かにしてよね全く……」


 ブツブツ言いながらも再度寝床へと戻って行くアーシャ。

 あぶねぇ……。

 気をつけよう……。


『あやつがお主のパーティのリーダーか……。ふむ……。なかなかの強さと見た』


「(アーシャの事はいいから! 説明しろよ! お前は一体何なんだよ!)」


 今度こそ彼女らを起こさない様に小声で話す俺。

 宣言どおり深夜に俺の元に現れたんだ。

 説明をしに来たんだろう?

 お前が何者なのかを。


『ワシはティアラ・レーゼウムという《霊媒師ミスティック》じゃ。お主も知っておろう? 《霊媒師ミスティック》がいかに貴重な《職業》なのかを』


 ティアラ・レーゼウム……。

 何処かで聞いた事がある様な無い様な……。


 彼女の説明は続く。


『お主らもここにいるという事は、魔王城に用があるのじゃろう? 城の財宝狙いなのか、もしくはどこぞのギルドより派遣されたか知らんが……』


「(……ああ。俺達の目的は城の財宝の方だ。魔王には見付からない様に《結界》を張りながら魔王城を探している)」


 そう。

 その為に探索スキルに特化した《弓射士シューター》であるレムと《結界》を張れる《聖魔師ソーサラー》であるローサを仲間に引き入れたのだ。

 それ以外はほぼ前衛特化型の職業の女共ばかり。


『成程な。じゃが魔王ルージュ・オーザーランドはお主等の事には当に気付いておったぞ』


「(え――)」


 今なんて……?


『実はワシも魔王城に潜り込んでおってな。任務は『魔王の暗殺』。じゃが……失敗したのじゃよ・・・・・・・・


 失敗……?

 ってまさか――!


「お前……」


『そうなのじゃ。ワシは魔王に見付かり、そのまま殺されたのじゃよ・・・・・・・。その後昇天する寸前に、《禁断魔法》を唱え一命を取り留めたのじゃ。…………身体は消滅してしもうたがの』


「・・・」


 うん。

 じゃあ今、俺の目の前にいるのってアレですよね。


「……幽霊?」


『……まあ、そうなるかの』


「……霊媒師ミスティックなのに、幽霊?」


『……痛い所を突くの。お主』


「・・・」


『・・・』




 …………なんですか、それ。

















【登場人物②】

NAME/アーシャ・グランディス

SEX/女

RACE/人間族

JOB/細剣士フェンサー

SIZE/B82W59H81


主人公の幼馴染の女剣士。

前衛・スピード特化型である《細剣士フェンサー》という職業に就いている。

頼れるリーダーとして数々の武勲を上げている。

その目にも止まらぬ剣捌きは凄まじく、彼女の右に出るものはいないとさえ言われている。

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