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命令士アルルの異世界冒険譚  作者: 木原ゆう
第三章 奴隷遊戯のマリオネット
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LV.018 俺はある可能性に気付きました

『ふわぁ……。良く寝たな……。ん? なんじゃアルル。何故真っ青な顔をしておるのじゃ?』


 部屋に戻るとタイミング良くティアラが起き出して来る。


「……何も聞くな。俺は記憶を封印したいんだ……」


『??』


 キョトンと首を傾げるティアラをよそに、俺は再度《異界の部屋》へと足を運ぶ。

 ナユタとローサの事はこいつには黙っておこう。

 見付かっちまったら……その時はまた《命令》を使って記憶を封じたら良いし。


(異界から戻って来たら、またルージュに質問してみるか……)


 ナユタ達を幽閉している理由。

 彼女らの所持品も取り上げた様子は無かった。

 普通は牢に放り込むのだったら武器くらい回収すると思うのだが……。


(それにこの『魔王城』……。いくら《魔族》が俺を襲って来ないようにしているからって、あまりにも静か過ぎやしないだろうか……。地下牢に看守みたいなのもいなかったし……)


 これでは城内の財宝も盗み放題では無いか。

 世界中の探索者トレジャーハンターが魔王城のお宝を狙っているというのに、警備の《魔族》が一匹も見当たらないというのもおかしな話だ。


「うーん……」


『何を悩んでおるのじゃ? そうこうしている暇があったらさっさと出口を探したらどうじゃ? お主の仲間等も心配しているじゃろうて』


 ティアラがあくびをかみ殺しながらもそう話し掛けてくる。

 そうしたいのは山々なんだけど、状況が状況だけに下手に動けないんだが……。


 魔王による『軟禁状態』の俺が今出来ること。

 《命令士コマンダー》としての熟練度をさっさと上げる事と、『本当の味方は誰なのか』を見極める事……。


「……」


『どうした、アルル』


 俺はもう1つの可能性を導き出す。

 そもそも何故、ルージュとティアラはこうも言う事が真逆なのか・・・・・

 ユフィア姉さんは死んでいるのか生きているのか。

 俺を利用しようとしているのか、協力しようとしているのか。

 

 人類の期待を裏切った俺は、もはや何が『善』で何が『悪』かなんてまったく興味が無いのだ。

 平穏無事に暮らせればそれでいい。

 俺の大切だと思うものが壊されなければ、それでいい――。


 もう1つの可能性――。

 どちらか片方が俺を騙しているのではなく――。

 

 ――双方とも・・・・俺を騙しているという・・・・・・・・・・可能性・・・


「ティアラ。1つ聞いてもいいか・・・・・・・・・?」


『ひっ……///』


 不意打ちの様な形で、彼女の耳元で《ささやき》を発動する俺。


お前は本当に・・・・・・魔王ルージュに・・・・・・・殺されたのか・・・・・・?」


 世界が白黒になる。

 時空が歪む。

 ぐにゃり・・・・と、大きく、歪む。


『ん……/// ほ、本当、じゃ……! ワシ、は……憎き魔王ルージュに……殺され、て…………ああ!///』


 そのまま俺の胸に倒れこんで来るティアラ。

 痙攣している彼女に、俺は容赦無く《ささやき》を続ける。


お前は俺を・・・・・騙しているか・・・・・・? お前の本当の・・・・・・目的はなんだ・・・・・・?」


『ああっ!/// 騙して、なぞ……んっ/// ワシはただ……! 《霊媒師ミスティック》としての、使命に従、い……あんっ!/// 任務を・・・……!!』


 任務・・

 誰かに命令されてやっているという事か?

 

 ――命令されて・・・・・


お前は別の・・・・・命令士に・・・・命令されている・・・・・・・そういう事なのか・・・・・・・・ティアラ・・・・


 連続発動。

 もはやティアラは涙を流し、涎を垂らし、喘いでいるのみ。


『あっ、ああっ、あああああっ!!/// アルル……! アルル……!!!』


 俺の《命令》に対する答えが返って来ない・・・・・・……?

 純粋に今の俺のレベルでは返答不可の内容なのか、それとも――?


 ビクンビクンと痙攣を続けるティアラは強く俺の肩を掴む。

 爪を食い込ませ、完全に俺に抱きつく形となっているティアラ。

 少しやり過ぎたか?

 彼女の身体は高熱に包まれている。

 吐息が荒く、苦しそうだ。


「……ふぅ。結局何も分からず終いだな……」


『はあっ!/// はあっ!/// あ、アルル……! またワシに《命令の力》を……!』


 命令を解除したのにも関わらず、俺から離れようとしないティアラ。

 いや、それよりも、先ほどよりも強く俺を抱きしめている?


「なあ、ティアラ。《ささやき》ってただの《命令》スキルとは違うんだろう? 《おねがい》を使った時とは全然反応が違うみたいだし……」


『やはり……! お主、ワシに《ささやき》を……! ど、どうりで身体の芯が熱く……///』


 やはり高熱を発する副作用が現れる『スキル』って事か。

 一体そこに何の意味があるのか知らんけど……。


「大丈夫か? ていうかそろそろ離れてくれよ。お前の爪が背中に食い込んで凄く痛いんだが」


『《ささやき》を勝手に使用したお主が悪いのじゃろうがっ! どうしてくれる! この火照った身体を……! 嗚呼……どうしよう下……』


「下?」


 なんだ? 下って……。


『何でも無いわっ! だがしかし! 一言言わせて貰おう!』


「……なんだよ」


『もうちょっとこのままでも良いですかっ! ワシがこうなったのもお主の責任なのじゃからっ!』


「はあ?」


 何故敬語……。

 というか断っても絶対離れないだろお前……。


「良いけどよ……。その『ビクンビクン』するのはやめてくれないか? 何か気持ち悪い……」


『気持ち悪いて……! お主のせいじゃろうがああああ! ワシだって好き好んでビクンビクンしている訳では無いわ! アホ! 死ね! 禿げろ! この薄ら馬鹿! こんな身体にしおって……! 責任取れ! もやしっ子!』


 もやしっ子……。

 確かに訓練場から逃げ出してから数年間。

 筋トレの1つもせずに無職してたから……くっ!

 痛い所を突きやがるこいつ……!


 その後も小一時間はティアラに抱きつかれたまま罵倒され続けた俺。


 

 マジでなんなんだよ一体……。


















アルル:重い……。

ティアラ:もうちょっとだけこのままでも良いですかっ!

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