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命令士アルルの異世界冒険譚  作者: 木原ゆう
第二章 有象無象のフェイクトゥルース
13/65

LV.012 霊媒師の戦いぶりに驚嘆しました

『ぐすん……』


 蹲り床にのの字を書くティアラ。

 ちょっとやり過ぎたか……。


「悪かったよマジで……。でもティアラって綺麗な肌――」


『もう言うな! 絶対言うな! ワシ……もうお嫁に行けない……』


「死んでるんだからどうせ行けないだろ」


『だからうっさいわ! うわあああああああああん!』


 地雷踏んだみたい。

 ババアなのかガキなのかさっぱり分からん。

 しかし、今はこいつの協力を得なくては駄目だ。

 まあ、ある程度は強制的に得られるのだけれど。


「ほら、おねがいだから・・・・・・・機嫌を直せよ。で、いつもの杖でこの《魔法の鍵マジックキー》をトントンしてくれよ」


『ぐすん……。仕方ないの。ホレ』


 涙目を擦りながらも杖を取り出し《魔法の鍵マジックキー》から文字を出現させるティアラ。



====================


【魔法の鍵】 LV.1295

『異界』 失笑者の森 LV.6

     愚鈍者の峠 LV.10

     調律者の丘 LV.18

     聖職者の墓 LV.21

     ・

     ・

     ・


====================



 ずらっと並べられた『異界』へのリスト。

 カーソル? が一番下まで届かない位の量だ。

 一体この《鍵》一本で、どれくらいの数の『異界』へと旅立てるのか……。


「うーん。どれも城の外には繋がっていなそうだよな。あ、でもここでレベル上げしちゃえばいいじゃん。うん、そうしよう。なんでか知らないけどこの城、モンスターとか全然出てこねぇし」


『あ、ああ……。そう……じゃな』


 何だか納得いかない表情のティアラだが、俺は構わず《鍵》を《鍵穴》へと差し込む。


「当然強い『異界』には行けないよな……。まずは一番レベルの低い『失笑者の森 LV.6』でレベルをあげて《ささやき》が使える様にするか」


『あ、おい! アル――』


 ティアラの静止を無視し、俺は念じながらも《鍵》を回す。

 そして一瞬のうちに何処かへと飛ばされた様な感覚。

 ルージュからの説明では、この部屋ごと『異界』へと転移するそうなのだが……。


『……まったく……。少しは躊躇とかせんのかお主は……』


 はぁ、と溜息を吐くティアラ。

 俺は苦笑いをしながらも部屋から出、外の様子を確かめる。


「ここが……『失笑者の森』……」


 部屋の外は鬱蒼と生い茂る森が続いていた。

 そこかしこで獣の鳴き声の様なものが鳴り響いている。

 さて。


「なぁ、ティアラ」


『ビクッ! な、なんじゃ! また《おねがい》か! ま、まさか今度は全裸にでもなれと……!』


 身を縮こませる様にしながら後ずさるティアラ。

 俺は一体どんな鬼畜なんだよ!


「違います」


『……違うのか。あそう』


 なんか残念そうな印象を受けたが俺の勘違いだろうきっと。


「お前と俺は一心同体なんだろう? だったらレベル上げに協力してくれるよな・・・・・・・・・。お前も知ってのとおり、俺にはまったく『戦闘能力』が無いんだよ。《命令スキル》だって個の戦闘ではそこまで使い勝手は良く無いんだろう? 流石の俺だってそのくらいは分かるさ」


『……協力……。ああ、するぞ。ワシはアルルに協力する……。確かにお主は《命令士》としてはまだまだひよっこじゃ。熟練の《命令士》でもその名のとおり、《命令コマンド》に特化した職業じゃからな。強力な盾役となる《前衛》、奇襲にも対応出来る《万能型》、即座に回復や強化魔法を唱える事が出来る《回復役》、スキルポイントやメンタルポイントが尽きた時に緊急回避出来る《アイテム使用役》。これら《命令士》の手足となる強固なパーティを組んでこそ、お主の真価は発揮されるのじゃから』


 俺の《命令士コマンダー》としての真価……。

 強固なパーティ。

 それはまさしくアーシャが集めたメンバー達の事だ。

 アーシャ、デボル、シュシュが《前衛》。

 奇襲に即座に対応するナユタとレム。

 《回復役》のミレイユに《後衛高火力》のローサ。

 そして切り札の《竜化》と《獣化》――。


 そこに俺の成長した《命令士コマンダー》としての能力が加われば――。


「アーシャ……」


 つい幼馴染の名を呼んでしまう。

 あれだけ頑丈な奴らだ。

 恐らく魔王ルージュも手加減をした筈だから、大事には至ってはいないのだろう。

 アーシャ達を殺してしまっては、俺の協力が得られない事を彼女は分かっているのだろうから。


『お。感傷に浸っている暇は無さそうじゃな』


 ティアラの言葉で意識を戻す俺。

 前方にはこちらに気付いたモンスターが涎を垂らしつつ近づいて来るのが見える。


「因みに確認しておくけど、《霊媒師ミスティック》ってのは戦闘にも特化している職業なんだよな?」


『当たり前じゃろうて。ワシは一人で魔王城へと向かい――――あれ……? なんの話じゃったか……?』


 《記憶喪失》の副作用に掛かるティアラ。

 そうか。

 戦闘能力にも長けているのならば、存分に協力してもらうとしよう。

 

 じゃあ、まずはどんな《命令コマンド》をしようか――。




◆◇◆◇




『ギャギャギャアアア!』


 鳥型の猛獣が空から急襲して来る。


「ティアラ! お前の能力を見せてくれ! お前の《霊媒師ミスティック》としての能力を!」


『むぅ……。なんか良い様に使われている感じが否めないのじゃが……。まあ良いわ』


 ふわっと宙に浮いたティアラ。

 まあ、幽霊なんだから普段から宙に浮いているんだけど。


『ギャギャギャ!』


『五月蝿いのぅ……。まずは・・・その口を・・・・塞ぐか・・・


 何かの魔法を詠唱するティアラ。

 《霊媒師ミスティック》は魔法主体の戦闘スタイルなのだろうか。


『《梔子くちなし》!』


『ギギョェッ!?』


 突如モンスターの顔から無数の蔦が出現。

 みるみる内にモンスターの鋭利な嘴を縛りつけて行く。


『縛りは完璧じゃの。ならば次はこうじゃ! 《蝋攻ろうぜめ》!』


 増殖し続ける蔦は、嘴だけでなく身体全体を縛り上げモンスターは急降下。

 地面に激突と同時に上空に巨大な蝋が出現する。

 あれは……熱いってモンじゃ無いぞ……。


『ギギ……ギギギィィィィ!!』


『ほーれほれほれ! ええんか! こういうのがええんか! ほれほれ!』


「・・・」


 これが《霊媒師ミスティック》の戦い方……?

 想像してたのと全然違うのですけど……。


『むぅ……。意外に体力あるのぅ、お主……。どれ』


 蝋まみれになっているモンスターに近づき上空を杖で叩くティアラ。

 そして出現するステータス。


====================


【NAME】オオワライドリ/LV.54

【HP】1231/7520

【SP】1500/1500

【MP】780/780

【ATTRIBUTE】『火』

【TYPE】『打』

【SKILL】『急下降/LV.34』『くちばし/LV.45』『炎の爪/LV.12』

【MAGIC】『ファイアブレス/LV.29』


====================



「……おい……これって……」


 敵の情報がこんな簡単に得られるのか……?

 もしかしたらあの『杖』こそが《霊媒師ミスティック》の最大のチート……?


『ほう。HPが7000オーバーとは……。これは退屈せんで済みそうじゃわい。フォッフォッフォ』


 怪しげなティアラの笑いが『失笑者の森』に響き渡る。

 そして絶命寸前の、縛り上げられ蝋攻めを受けているモンスターの呻き声も。


(相手の状態を常に把握し、最も効果的な攻撃方法を選べる、か……)


 まるで《命令士コマンダー》と《霊媒師ミスティック》とは2つで1つのセットの様な《職業》だと思う。

 いや、だからこそティアラは《命令士》と成り得る人物を生涯を掛けてまで探して来たのか……。


『ほれ! ええんかい! これがええんかいの! の!』


 

 俺は奇声を上げて楽しんでいるティアラを横目に見ながら――。


 

 ――いつまで彼女を騙し続けられるかと考えていた訳で。

















 

アルル:ティアラ頑張れー

ティアラ:ええんか! これがええんか!

オオワライドリ:討伐

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