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命令士アルルの異世界冒険譚  作者: 木原ゆう
第二章 有象無象のフェイクトゥルース
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LV.010 魔王ルージュと契約しました

「ユフィア姉さんが……」


 過去の記憶が蘇る。

 優しかった姉。

 強かった姉。

 常に眩しいくらいに輝いていた、俺の自慢の姉――。


「彼女は……生きているぞ・・・・・・、アルル」


「!!」


 姉さんが……生きている?

 そんな馬鹿な……。

 だってラグーンゼイム共和国を上げての、壮大な埋葬式も行われて――。


「……それも『嘘』? じゃあ、あの姉さんの遺体は……」


「恐らくはすり替えられた・・・・・・・偽者・・だな。同じくらいの年頃の人間族の女を用意し、死に化粧をしてしまえば分からんだろう」


「ふざけるな! 俺やアーシャがユフィア姉さんの顔を見間違える筈…………まさか…………」


 ……可能だ。

 《命令士》がいれば、そんな事はいとも容易く出来る……。

 国民全員に《命令の力》を使わなくても、ユフィア姉さんと親しかった者だけに命令し。

 姉さんの・・・・容姿の記憶を・・・・・・書き換えれば・・・・・・――。


「……なんだよ……なんなんだよ……。一体俺は何を信じたら良いんだよ……」


 頭を抱え蹲る俺。

 ユフィア姉さんが生きていたのならばこれ以上に嬉しいことは無い。

 だが、もう時が経ち過ぎた。

 俺もアーシャもミレイユも、彼女の死を受け入れ、成長してしまった。


 どんな顔で姉さんに会えば良い?

 いや、それよりもアーシャやミレイユにどうやって伝えれば良い?


「アルル……。命令士アルルよ」


 ルージュがそっと俺の髪を撫で、抱きしめてくれる。

 彼女の優しい匂いが俺を包み込む。


「……霊媒師・・・ティアラ・・・・レーゼウムを・・・・・・信頼するな・・・・・。彼女はお前を騙している。もしかしたら、お前にも既に心当たりがあるのではないか?」


「心当たり……」


 ルージュの声が優しく俺の心に響き渡る。

 

 確かにティアラは最初から怪しかった。

 それに何故か俺のフルネームを知っていた。

 世界に名を轟かす《霊媒師ミスティック》である彼女ならば、『ベルゼルク』の名でユフィア姉さんの事を知っていて当然なのに、彼女は一切その話をしてこなかった。

 

 それに、他にも沢山ある。


 彼女は魔王ルージュに殺されたと言っていた。

 そして昇天する寸前に《禁断魔法》を唱え、魂だけは現世に留められる様になったと。

 しかし、それを誰が証明出来る?

 彼女の作り話かも知れないじゃないか。

 俺に《命令の力》を与えたのも、彼女なりの思惑があるのは感じていた。

 そして、一歩間違えれば力を得る事無く、俺は焼かれ死んでいたのだ。


 考えれば考えるほどティアラに対し疑心暗鬼になっていく俺。


「でも……あいつは今……俺の『中』で眠っているんだろう? もうすぐ日が落ちる……。そうしたら彼女は……」


 窓の外の様子で、今が夕暮れ時だと察する俺。

 恐らくここは魔王城の一室なのだろう。

 今更ながらに俺が何処に連れて来られたのかがはっきりとして来る。


「そうだ。だからお前は・・・・・・命令・・するのだ・・・・。お前の中に眠ったままの霊媒師ティアラに」


「《命令》……? 出来るのか……? 眠ったままのティアラに……?」


 俺から身体を離し、こくりと頷くルージュ。

 俺がティアラに《命令》する……。

 確かに一度だけ成功したはずだけど……。


「彼女の力は本物だ。魂だけの存在になったとはいえ、《霊媒師ミスティック》である彼女に対抗できる力を持つものは限りなくゼロに近い。だから倒そうなどとは思うな。利用しろ。彼女に《命令の力》を使い、彼女の力を・・・・・自身の力に・・・・・変えるのだ・・・・・


「俺が……ティアラを……利用する……」


 俺を利用しようとしたティアラを、俺が逆に……。


「もうすぐ彼女は目覚める。まずはお前の心の中で眠る彼女にこう《おねがい》するのだ。『どんなことでも俺に協力してくれ』、と」


 どんなことでも協力する……。

 確かにそう《おねがい》すれば、ティアラは俺に逆らう事が出来なくなる……?


「アルルはまだ《命令士》としての修練が足りぬのだろう。『どんなことでも』と条件を付けた所で、全ての協力をティアラから与えて貰える訳では無いが……狙いは別の所にある」


「……記憶・・、か?」


「そうだ。お前が彼女に《命令の力》を使えば、彼女は・・・その間の・・・・記憶を失う・・・・・。ここが『魔王城』である事はお前も気づいているのだろう? 彼女が目覚めればすぐに彼女はお前が我に諭されたと勘ぐるだろう。しかし『協力する』という盟約が結ばれ、彼女は協力を拒む事が出来なくなる。そしてすぐに記憶が無くなる」


「……要は俺が魔王城にいる間は、ティアラは・・・・・ずっと記憶を・・・・・・失ったままになる・・・・・・・・、という訳か」


 それが何処までの記憶なのか、あるいは『ここが魔王城』だという記憶のみが無くなるのか。

 そこは検証してみなくては分からないのだが……。


「……どうだ? お前は信じるか、我を。この魔王ルージュを」


「……」


 一瞬返答に詰まる俺。

 正直あたまが混乱しているが、俺を殺す気が無いのは恐らく本当なのだろう。

 わざわざ俺に《命令》するチャンスを与えた彼女の『思惑』。

 『パートナーになる』という言葉の『真意』。


「……いいぜ。お前の提案に乗ってやるよ……」


 そして俺は心に念じる。

 ティアラに向かって、念じる。


 

 彼女を――。

 

 

 霊媒師ティアラ・レーゼウムを、利用する為に――。


















【登場人物⑪】

NAME/ローサ・レグザイム

SEX/女

RACE/人間族

JOB/聖魔師ソーサラー

SIZE/B95W58H89


強力な攻撃魔法を使いこなす魔道士の女性。

後衛・攻撃魔法特化型である《聖魔師ソーサラー》という職業に就いている。

火力はパーティの中でも1、2位を争う程ではあるが、強力な魔法ほどチャージ時間が長く、一対一では完全に不利となる。

しかしながらパーティ前衛で敵を足止めし、彼女の放つ強力な魔法で敵を殲滅する戦法は戦闘コストの面からしても非常に優秀である。

巨乳でえろい話が好物。

酒好き。

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