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命令士アルルの異世界冒険譚  作者: 木原ゆう
~プロローグ~
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LV.000 これが俺のパーティです

「ちょっとアルル! シャキっと歩きなさいよシャキっと!」


「へーい」


 幼馴染のアーシャがキーキー猿みたいな声で俺に指示を飛ばす。

 相変わらず人使いが荒い。


「なあ、アルル。流石に私の竜槍をズルズル引きずって歩くのは止めてくれるか」


「なら自分で持てよ! 俺ひ弱なの知ってんだろお前!」


 竜人族のデボルがククっとかみ殺した様に笑う。

 明らかにアーシャに乗っかって俺を弄って楽しんでいるのが見え見えだ。


「はぁ……。一体いつになったら魔王城に到着するのでしょうか……」


 俺の後ろをトボトボと歩きながら愚痴をこぼすミレイユ。

 俺らパーティの回復役。

 一応俺の最大の仕事は彼女の盾になる事と、この荷物持ちくらいなんだけど……。


「アルルは男の癖に弱っちいからシュシュはアルルが嫌いなのニャ」


「もう1000回は聞いたよ! その台詞!」


 俺の前方を歩く獣人族のシュシュが大きな斧を担ぎながらも振り向き様に俺を揶揄する。

 あとでその猫耳を擽ってやるから覚悟しておけよシュシュ!


「もう……。ナユタとレムとローサとは連絡が途絶えちゃうし……。大丈夫なんでしょうね、あの子達は……」


「大丈夫だろあいつらなら。ナユタがいるんだし、滅多な事にはならないと思うぞ」


 イライラしているアーシャにそう返答する俺。

 パーティを2つに分け、それぞれで魔王城の探索に当たったのだが連絡が途絶えてから数日が経過している。

 リーダーであるアーシャの機嫌が悪いのもそのせいなんだけど……。



 因みに俺達のパーティは全部で8名。


 俺の幼馴染で《細剣士フェンサー》という前衛職であるアーシャ・グランディス。

 竜人族で《槍撃士ランサー》という職業の赤髪大女であるデボル・ラグナロク。

 獣人族で《斧破士ディザスター》という職業の猫耳萌えなシュシュ。

 天然系おっとりお姉さんの《治癒師ヒーラー》という職業のミレイユ・バーミリオンズ。


 そして別働隊の3名。

 

 男女みたいな《刀剣士ソードマスター》であるナユタ・ガルーンハイド。

 ダークエルフ族で《弓射士シューター》であるレム・ダークレイジ。

 ぼいんねーちゃんで《聖魔師ソーサラー》であるローサ・レグザイム。


 で、俺ことアルル・ベルゼルク。

 女7名男1名。


 世の男共はこの状況を『ハーレム』と言う。

 だがしかし、現状はそんなに甘くは無いのだ。



「はぁ……。もう足がパンパンです……。ちょっと休憩しませんか?」


 情けない声を上げるミレイユ。

 吐息が俺の首筋に掛かってちょっとこしょばい。 


「そうね……。確かに歩き詰めだったし……。アルル、テントを張って。少し休憩しましょう」


「へーい」


 そう。

 俺はこのパーティではただのパシリ的位置なのだ。

 戦闘能力は皆無。

 俺は何の《職業》にも就いていないから。


「テントを張ったらミレイユの足をマッサージしてあげて。彼女が咄嗟に行動出来なかったらパーティの危機に直結してしまうから」


「へいへーい。分りましたよー」


「ふふ、何だか尻に敷かれた旦那様みたいですね、アルルさんって」


「ちょ……! 何を言っているのよミレイユ!」


 顔を真っ赤にしながらミレイユに抗議するアーシャ。

 ていうかこっちから願い下げなんですけど……。

 ただ幼馴染ってだけで俺とアーシャは皆から『おしどり夫婦』だの『尻に敷かれた駄目亭主とツンデレ嫁』だのと言われる始末。

 勘弁してくれよマジで……。


「私も肩が凝ってしまったな……。ミレイユの次でいいから頼むぞ、アルル」


「お前の肩、筋肉でガッチガチだから無理だろ! 俺の力じゃ!」


 俺の突っ込みにまたククっと笑うデボル。

 肩なんか凝るわけないだろ!

 こんな大槍を軽々しく振り回す癖によ!

 まったく……。


「アルルは男の癖に女に反論出来ないからシュシュはアルルが嫌いなのニャ」


「うっさいわ猫耳! そんな事を言うならもうマタタビご飯作ってやらないからな!」


「そ、それは凄く困るのニャ……。私の人生の唯一の楽しみニャのに……」


 猫なで声を上げ俺に擦り寄ってくるシュシュ。

 ある意味こいつが一番扱いやすい。

 パーティの腹を満たせる食事を作れるのは俺だけだし。

 お前らみんな女失格だろ!


「いいから早くテントを張って。皆疲れてるんだから」


「わーったよ……ったく……ブツブツブツ……」


 アーシャに急かされ背に背負った荷物を降ろしテント作りを始める俺。

 そろそろ日も暮れるし食事の準備も済ませてしまおうか。

 さっきからずっと膝に擦り寄ってくるシュシュの期待の眼差しもちょっと鬱陶しいし。


「ナユタ達は一体何食ってんだろうな……。あいつらに持たせた弁当もとっくに底を突いてるんだろうし……」


 テントを組みながらも少し心配する俺。

 非常食も十分に持たせたから餓死する事は無いだろうが、特に味に五月蝿いあの3人の事だ。

 飯の匂いに釣られてふらっと現れてくる可能性も無きにしも非ずだし。

 

 ちょっと多めに飯作っておくかな……。

















 

【登場人物①】

NAME/アルル・ベルゼルク

SEX/男

RACE/人間族

JOB/---

SIZE/---


本作の主人公。

中肉中背。無職。

パーティでの主な仕事は荷物持ち、料理係。

防御力も決して高くは無いがヒーラーのメイン盾として使われる事もしばしば。

可哀相。


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