軽快【けいかい】
軽快な身のこなしで、俺は奴の皮膚を切り裂いていく。
一寸たりとも奴の視界に留まらぬ気で動き、攻撃を避け、骨格をあらわにさせる気で、刀を振るう。周りに生い茂った木々を利用し、体を風と一体化させる。それはまるで、あの頃のよう――
怒りに体を任せるのがこれほどまでに心地よいのか。頭にある言葉は、ただ、それだけだった。
「くそっ!」
早朝の森に奴の悔しそうな叫び声が響き渡る。それも当然だろう。奴は戦闘開始から一時間、未だ俺に一撃も与えられていない。俺の刀を受け続けている。悔しい思いで腹がいっぱいになるのも、何となくわかる。
数年前がそうだった。道場で毎日行われる稽古で、俺は師匠に負け続けた。一度も攻撃を与えられないまま、師匠の眉を動かすこともできず、敗北を積み重ねた。
勝利することは、できなかった。
師匠は死んでしまった。去年の春に、心臓麻痺で天へとかえっていったのだ……。
ハッと我に返った。
奴の剣がすぐ横の落ち葉を貫いていく。
しまった。いつの間にかあの日の帰ってしまっていた。多くの命をかけた、殺し合いの途中だというのに。
俺は奴の後ろに周り、刀で、奴の髪の毛を切り落とす。
奴にとって髪の毛は命よりも大切なものだ。これほどまでに悔しいことはないだろう。
さぁ、早く降参しろ。
俺は心の中で奴に言う。そして、奴の片腕を切り落とした。
軽快【けいかい】
軽々としていて動きの素早いこと。また、そのさま。
軽やかで、気持ちがよいこと。また、そのさま。
病気がよくなること。また、症状がよくなること。
例「軽快な身のこなしで奴の体に拳を打ち込んでいく」
例「軽快なリズムでペダルを漕ぐ」
例「薬のおかげで症状が軽快する」