Re.9 魔法実技
「・・・・さて、魔法実技の授業を始める」
・・・・俺は何故だか・・・・とはいっても、学生であるのだから当たり前なのだが、魔法実技の授業に参加していた。
今回は、珍しく・・・では無く常日頃なのだが、四五人でパーティーを組んで、実践のようなものをする。
ちなみに、魔法を習うのは魔法実技の方では無く、魔法鍛錬の授業になる。
・・・・全く、カリキュラムが多い上に、分かりづらい学校だ。
「それでは、各自班を組んでくれ」
今日もいつもと変わらないメンバーで組むかな・・・
などと、そんなことを思っていると、俺は何故だか声をかけられた。
「私達と組むわよ」
・・・・椎名とレイラなのだが。
こいつらは俺とばかりいて、他のクラスの奴らと交友関係を築けているのだろうか?
限りない謎である。
「まあ、了解だ」
・・・さて、あと一人か二人か。
どうしたものかな?
「すまない。少しいいか?」
そんなことを考えていると、神山紗綾と、天河陽奈の二人に声をかけられた。
「うん?どうしたんだ神山?」
「別に下の名でも構わんよ。それより、我らと組んでもらえないか?」
・・・・・予想外の転校生からの誘いである。
やはり、この雰囲気からあまり友達と言える存在がいないのだろうか?
「ああ、別に構わんぞ」
「助かる。陽奈が君ら三人の事が『気になる』らしいからな」
一瞬・・・ほんの一瞬だが、俺に向かい殺気が向けられた気がした。
・・・それと、『気になる』ってなにが気になるんだ・・・?
そんな事を思いながら、釈然としない気持ちで実践が開始される。
「・・・剣坂。なにを怠けている?」
神山にそう咎められる。
しかし、俺は実践をあまりしない。
今までもそうなのだが、やはりマナを多用すれば枯渇につながるというのもあるし・・・・俺の魔法は暴発気味になるというのもある。
・・・基本、同じ魔法を使ったとしても、威力が違うのが当たり前だ。
それは、魔法がその才能によって威力が分けられるからである。
少ないマナを如何に威力の高い魔法にするか。
それが魔法使いの才能のようなものなのだ。
それが、俺には中々にあったらしく、昔の俺は花奏と共に魔法の練習を積み重ねてきた。
・・・・まあ、最近は全くしないのだが。
「いや、まあ気にしないでくれ。俺いつもこんなんだから」
そう言って鍛錬場・・・校庭だな。
そこで寝転がる。
素晴らしい日差しもあり、絶好の昼寝日和である。
「・・・・ふざけるな」
「へ?」
「ふざけるなと言ったのだ!我と戦え!」
いきなりの実践の申し出。
俺はそれに困惑を隠し切れなかった。
それもそうだろう。
例えばこれがいつもの男子面々で実践をする場合ならば、確実に俺が寝ていようと、笑いながら話しかけて来る程度で、実践にまで持ち込もうとはしない。
それは、俺が一度公衆で魔法を使った事が原因でもあるのだが・・・それを知らないからとは言え、些(いささ)かこの女性は好戦的過ぎる。
俗に戦闘狂に部類される人間なんだろう。
「・・・なぜだ?」
「君の力が気になるからだ」
どう言っても絶対に引く気が無いと言ったような顔をしてくる。
正直、面倒である。
・・・しかし、やはり受けなければならないのだろう。
「・・・わかった」
「ならば始めるぞ」
俺は立ち上がり、彼女に向き返る。
彼女の顔持ちは、自信に溢れ、俺如きなどすぐに倒せるとでも言わんばかりの顔だ。
正直、俺と戦えと言ったのにも関わらず、このような顔をされるのは腹が立つ。
・・・・少々灸を据えるべきだな。
「椎名。開始の声よろしく」
「私に指図すんな!・・・・・まあいいわ」
俺は目の前の神山に意識を集中させる。
短期で、低魔法を使って勝たなければならない。
条件は厳しいが・・・・その天狗の鼻をへし折るのもまた良いだろう。
「・・・・始めっ!」
その言葉と共に、戦いが幕を切った・・・。