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9.Ω

体が熱い。頭がボーッとする。発情期だ。


急いで薬を飲んだけど、症状は治らない。このままじゃ、フェロモンが漏れてしまう。Ωだとバレるわけにはいかない。


錠剤で効かない場合は注射器を使う。

ここまでしてしまうと、通常よりも副作用が出るのでかなりしんどいけどバレるよりマシだと思って耐えることにしてる。


発情期が近いとアリソンがピリピリするから躾もその分力が入る。


「またフェロモンが漏れていますよ、殿下」

「っ、ごめんなさい」


アリソンの振るう硬い鞭が太ももの裏に当たる。

フェロモンが抑えられてないからアリソンから躾を受けているのだ。

アリソンが来る前に錠剤を服用し、それでも抑えられなかったので注射器も使ったため、副作用として頭痛と吐き気が酷い。


そこに、更にアリソンの躾が加わるのはかなりしんどい。

でも仕方がない。

フェロモンを上手く抑えられていない私が悪いのだ。


「どうして抑えられないのですか?それで誰かを誘惑するつもりですか?」

「そんな、つもりは、あうっ」


打たれたところが赤く、腫れ上がっていく。

でも、アリソンは躾に手を抜かない。全部、私のためだから。


「では、どうしてフェロモンを抑えられないのです?それこそ、誰かを誘惑するためという何よりもの証です。Ωとはそういう生き物です。本当に穢らわしい」


たとえ、自分ではそのつもりがなくても本能が男を求め、誘惑するのがΩ。だからΩは穢らわしく、忌み嫌われる、それが当然の存在なのだとアリソンは言う。


「私、殿下が憎くてこのようなことをしているのではありません。全ては殿下のためです」


躾は学校に登校するまでの一時間に及んだ。

副作用は酷いし、鞭で打たれた背中や太ももは痛くて休みたかったけど、発情期の度に休むと疑惑を与えかねないから行くしかないのだ。


頭も、背中も、太ももも痛いけど抑制剤を飲んでいるので鎮静剤を飲むわけにはいかない。つまり、ただ耐えるしかないのだ。

それも具合が悪いことを周囲に悟られないように、平気を装って。顔色の悪さは化粧で誤魔化している。


「・・・・・やっとお昼ね」


なんとか半日乗り切った。最後に抑制剤を服用してから四時間は経っている。だからもう一度服用しなくちゃ。また、体が熱くなり始めている。このままではフェロモンが出てしまう。


「お姉様」


薬が入ったポーチを持って席を立った時、マリアベルがカールを伴ってやって来た。変わらず、何度注意をしても「お姉様」呼びをマリアベルは続ける。

自分も同じ王族だと誇示したいのかもしれない。王位継承権を持っているだけで王族ではないのだけど。


今は呼び方を注意している暇はない。さっさと薬を飲んでおかないと本格的にやばくなる。

無視して行こうとしたら爪が食い込むほど強い力で腕を掴まれた。


「お姉様、お姉様、どうしてこのような酷いことをなさるのですか?」

「いきなり何?言っている意味が分からない。それと、後にしてくれる。私、急ぎの用事があるの」

「逃げるのか」


マリアベルの後ろで私の行く手を阻む位置でカールが立つ。王族の行く手を阻むのはそれだけでも不敬罪適用になるのだけど、彼らは本当に礼儀を学んだ貴族なの?


頭が痛いし、気持ちが悪い。呼吸もしづらくなって、回数が多くなっているのに二人は気づかないのかお構いなしに続ける。


「私のこと、階段から突き落としましたよね」

「してないわ、そんなこと。変な言いがかりは止めて、早く退いて。急いでるの」

「目撃者がいるんです!それに、そんなに慌てるってことは心当たりがあるからですよね」


熱い、体がどうしようもうなく熱い。本当にまずい。


「知らないって言ってるでしょ。いいから、そこどういてよっ!」


どうしよう、体に力が入らない。


「おい、このフェロモン」

「えっ、でも、嘘でしょう」

「王女殿下ってαだろ、そう発表されてる」

「でも、このフェロモンはΩよ。それに、あの症状は発情期じゃないの」


熱い、体が熱くて、苦しい。


†††


side.リリー


「知らない、知らないわっ!私は何も知らないっ!私の娘がΩなわけないじゃない」


ヒロインは私。幸せになるのも、私。

なのに、どんなに過酷な環境下に置かれても最後は必ず王子様が迎えに来る。Ωが出てくる物語の定番だ。そんなハッピーエンドが約束されたヒロインがいるわけがない。


だって、ここは私が前世でハマっていたゲームの世界で、そこでのヒロインは私だけ。私だけが特別なのよっ!


「陛下、私の娘はΩなんかじゃない」

「リリー、落ち着いてくれ。君は今、妊娠中なんだ。そんなに取り乱しては体にもお腹の子にも悪い。ラティーシャのことはこちらで対処するから、君は何も心配することはない。大丈夫だ、リリー」

「本当?本当に何とかしてくれるの?」

「当たり前じゃないか」


ああ、良かった。やっぱり、彼は私の王子様

そうよ、ヒロインは二人も要らない。この世界のヒロインは私だけなのよ。

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