4.私がこの世界のヒロインよ!
やっと生まれてくれた。
もう、妊娠中は最悪だった。最初は気持ち悪いし、ご飯食べれないし。やっとマシになったと思ったら、すっごいお腹空くし、ひたすら甘い物を食べたくなるし。
食べたいだけ食べてたら太っちゃうし。ヒロインがデブとかあり得ないって思って、ご飯を我慢したら医者には怒られるし。
出産時は死ぬほど痛かった。力めだの何だのうるさいし。すっごい疲れた。
もう二度とゴメンだ。
赤ちゃん、あんたの為にヒロインの私がこれだけ頑張ったんだから、ちゃんと私のことを幸せにしてよね。
本当、ヒロイン(私)って健気よねぇ。
「立派な姫様の誕生です」と産婆が言った。
えっ、あんだけ頑張って女の子?
王子様の妹は男の子を産んでたよね。男の子の方が有利だよね?
私、頑張り損じゃない?
産まなきゃ良かったかも。
「女の子か、可愛いな」
まぁ、いいか。王子様も喜んでいるみたいだし。
王位継承権は私が産んだ子供の方が上だしね。
†††
「Ω(オメガ)?何、それ?」
子供を産んで五年が経った。体型は完全には元の通りには戻らなかったけど私の可愛さは健在だからいいか。
子供は乳母が育ててくれているから勝手に大きくなってくれる。
なんだ、親になるって結構楽じゃんって思っていたら唐突に性検査で私の産んだ子供がΩだとか言われた。
っていうか、性検査って何?
いや、待って、Ωは知っているかも。確か、前世でいくつかそういった書籍が出てた。
えっ?待って、ここって乙女ゲームの世界だよね。あ、いや、BL以外でもそういう類の話ってあったけど、でもここは私の知っているゲームの中だよ。
そんな設定、なかった。
「王妃様、ご冗談ですよね」と乳母は信じられないものを見る目で私を見た。
いや、私の方が信じられないよ。急にそんな設定を加えるのは卑怯じゃない?
去年、陛下が退位して私の王子様が王になった。必然的に私も王妃様!
これが本当のゴール。でもゲームじゃなくて現実だからまだまだ続くんだよね。
なんか、ちょっとしんどいなって思っていた時にまさかの爆弾投下。
「第二の性があることは平民でも知っていることですよ」
私は知らない。だって、ゲームにそんな設定なかったもん。
あんた、プレイヤーに説明するためのNPCとかでしょ。だったら、そんな呆れた顔をしてないで、ちゃんと役目を果たしなさいよね。
「上位にいるのがα(アルファー)で数は少なく、王族や高位貴族の方に見られます。それでも極わずかですが。とても優秀な遺伝子を持っている方たちです。次にβ(ベータ)、一番多い性になります。王妃様もそうですよね」
嘘でしょ。私、ヒロインだよ?なんで、そんな有象無象と同じなの?
いるだけで特別なのに。
「そして最も少ないのがΩです。Ωは特別なフェロモンを出し、周期的にそのフェロモンが強くなる周期がございます。発情期と言いますが。性に関係なく誘惑をしてしまうことから蔑視の対象でもありますが、ただαを産むという点のみを見ればかなり価値のある存在です」
「少なくとも、βのあなたよりは」と目で私に言っている。
ちょっと、待ってよ。
大概の物語でΩは主役だよね。まさか、ここに来て主役交代とか言わないよね。
私は、このゲーム内での永遠のヒロインよ。私以外にヒロインはいらない。
「それと、王妃様。Ωは王にはなれません」
「・・・・・どうして?」
「Ωはか弱く、保護対象になります。それにわが国もそうですが、他国の王侯貴族にも当然ですがαがいます。αを誘惑するΩを王に据えれば色々と問題がございますので」
「じゃあ、私が次を産まなければ誰が王様の跡を継ぐの?」
「陛下の妹君であらせられるリンステット・ハインリッヒ・エンドヴァルト侯爵夫人のご子息になります」
あの、私を見下している女が?
ただ、王様の妹に生まれたってだけの何の取り柄もない、モブキャラに私は立場を追いやられるの?
「・・・・・して。今すぐ、私の子がΩだって事実を隠してっ!この子はαよ!ヒロインの私が産んだ子が粗悪品なわけないでしょ」
「陛下を騙すことになります」
「いいんじゃない」と知らない女が私に近づいてきた。
「誰?」と聞くと女は一瞬、驚いた顔をしたけどすぐに取り澄ましたように王妃である私に頭を垂れた。
「アリソン・レドブルガにございます。王妃陛下の代わりに執務を行なっております」
「そう」
「それよりも、お子様のことですがすぐに対処いたしましょう。王妃陛下のお子様はαと教会には申請を出しておきます」
「そう。よろしくね」
「な、なりません、そのようなこと」と乳母だけがギャアギャア騒いでいたけど、そちらも含めて対処してくれるということだったから任せる事にした。
これで全て解決だ。
私はヒロイン。私が望んで、叶わないことなんてないのよ。
そうよ。私以外のヒロインなんていらない。
「ねぇ、その子供、離宮にやってくれる」
あんたなんて要らないのよ
「畏まりました。全ては王妃陛下の御心のままに」




