25.アリソン・レドブルガの物語
side.アリソン
ムカつく、ムカつく、ムカつく、ムカつく
「ああ゛っ!!もうっ!ムカつくっ!」
Ωのくせに、出来損ないのくせに、私がいなければ何もできないくせに、あの女の娘のくせにっ!
高貴な血筋のみが流れている私をフった。この私をっ!
たかがΩの小娘が。あり得ない。
これまで、どれだけ私が心を砕いてやったと思っているのよ。
本当に、親が親なら子も、子よね。
ここまで育ててやった恩を仇で返すとか、まじで最悪。
「あの世間知らずの小娘は抑制剤がどれだけ高いのか知らないのよ」
そうよ。だから、ちょっと安い薬を使っただけで文句を言うのだわ。
自分は特別だとか王族なのにとか思ってるんでしょうけどね、あんたの存在なんて裏で売っている抑制剤程度のものしかないのよ。
「少ない予算でやりくりしているこっちの身にもなれよなっ!」
ドレスも、宝石もたくさん買わないといけない。これは当然の報酬でもある。だって、私はあの出来損ないの代わりにたくさん社交をしないといけないから。
たとえ出来損ないでも王女の唯一の専属だ。
その私が見窄らしい格好をしていては王女の恥となる。だからこそ、それに見合ったものを購入していただけなのに、それを横領だの罪だとの。
「大袈裟なのよ。仕事で使うのだから必要物品でしょうが。物事を分かっていないのよ。これだから、甘ちゃんの、世間知らずは困るわ」
きっと今頃後悔しているだろう。でも、もう手遅れだ。一度こぼれた水がグラスに戻ることはないように。全ては私の価値を分かっていなかった王女の責任
「ふん。せいぜい、後悔するといいわ」
この国も、あの出来損ないの王女を選んだ王子も私には相応しくない。私に相応しいのは陛下だけ。さっさと国に帰ろう。愛しの陛下が私を待っているから。
「後悔するのは、お前だ。イタ女」
「はっ、誰よアンタ?」
褐色の肌に黒い髪と目、誰だっけ?見たことある。ああ、思い出した。この国の王太子の側近だ。
名前は確か、ギベルティとか言ったかしら。
たかが王太子の側近風情がアルトゥールの真の王妃の行手を阻むとか万死に値する。この国は本当に、礼儀というものを知らないわね。
「自ら仕える主人に毒を盛るなど万死に値する」
「はっ?主人?私に仕える相手がいるわけないじゃない。私はアルトゥール国王の王妃になる女ですのよ。多くの者が私に傅くの。その私に仕える主人?ご冗談を」
「うわっ。マジか。マジで、イタ女だ」
あの身の程知らずの女が王妃に収まってしまったから、誰も気づかないのだ。真のヒロイン(王妃)が私だと。
愛する人さえ、私に気づかない。きっと、あの魔女の怪しげな力に騙されているのだ。それで、こんな国に追いやられた挙句、その女の娘に虐められる私はなんて可哀想なのかしら。
この世界で一番、不幸で可哀想なヒロイン(姫)を助けのは王子様(陛下)の役目。
ここからだ。
ここから私の物語が始まる。だから、さっさと国に帰って陛下の目を覚させてあげないと。
「イタ女。王族への暗殺未遂と横領、本来なら処刑ものだ。だが、お前を公開処刑にするわけにはいかない」
だって、罪にはならないもの。
私はなんの罪も犯してはいない。
仮に、仮によ。私が用意した抑制剤であの出来損ないの王女が死んだとして、それがどうしたの?別に誰も困らない。それに、私が殺したわけじゃない。
ただ、運が悪かっただけだ。だって、あの抑制剤は死ぬ可能性があるだけで死ぬ薬ではないもの。
自分の運の悪さまで私のせいにされては困るわ。
「お前を衆人環視に晒せば余計なことをほざきそうだ。殿下は、妃殿下が隠そうとしていることを無理に暴くつもりはない。暴くとしてもそれは緩やかでなくてはならない。妃殿下が傷つかないように、周囲に受け入れられるように」
「殿下は知らないのですね。ご自身が迎えた奥方が出来損ないの王女であると」
あんな出来損ないが受け入れられるはずがない。
私だけがあの出来損ないを受け入れてあげたのだ。その私をフッた馬鹿女を周囲が受けれいるわけがないわ。
「殿下は知っている。それをお前が広めたことを。悪評しかばら撒けない口は必要ない」
「があっ、ああ゛っ!!」
「うるさい」
「あっ」
アリソン・レドブルガの口をナイフで切り裂いた。醜い豚の鳴き声をだしたので喉を潰した。
「公開処刑はしない。なぜなら、お前は誰にも気づかれず、今ここで死ぬのだから・・・・ああ、初めてだな。初めて、お前の顔色が変わった。恐怖に満ちたその顔、醜くて、一番」
何、この男?何なの?
「大好きだ」
†††
side.ギベルティ
「終わったのか?」
血溜まりの中、ゴミが転がっていた。
「殿下、このよう場所に顔を出してはいけません。穢れます」
「穢れてなんぼだろ。王族なのだから。清廉潔白な王など無能なだけだ」
この人はたとえ、死ぬその瞬間まで高貴なままなのだろう。
見てみたいと思う。その姿を。
ああ、久しぶりに嗅いだからか。興奮している。抑えなくては。
敬愛する主人を殺してしまいそうだ。




