12. 外の世界
翌日、馬車に大量の荷物を騎士たちが詰め込んでくれる。
自分で詰め込もうとしたけど騎士たちに止められた。それは王女のすることではないらしい。
なぜか、とても怪訝な顔をされた。
そして、みんな一様にアリソンを見ていた。なぜだろう?
というか、この大量の荷物は何?
私のはトランク一つだけだから馬車三つ分の荷物はアリソンの物?
そんなにいるものなのかな?
外出自体が初めてだからよく分からない。でも、何となくあまり突っ込まない方が良いかなと思って黙っておいた。
「積み込みは完了しました。出発しますが、何か忘れ物はございませんか?」
騎士の一人がアリソンではなく私に確認をして来たことに少し驚いた。
聞かれたから「ない」と答えようとしたら「ございませんわ。早く出発いたしましょう」とアリソンが答えた。
王女は下々の者に気軽に話しかけてはならいとアリソンは常日頃から言っていた。
今もアリソンが答えたことから私が答えてはいけない場面だったのだろう。
危なかった。また、躾をされるところだった。
でも、ならばなぜ騎士は私に話しかけたのだろう?
マナー違反になるのに。
「いや、あなたではなく王女殿下に」
「殿下、何をしているのですか?早く馬車に乗ってください。皆さんにご迷惑が掛かります」
「はい」
誰も、見送りに来てはくれないんだ。
「殿下っ!」
「ごめんなさい、アリソン」
私たちは王城の裏口からひっそりと隠れるように出た。
生まれて初めての、王城の外だ。
馬車から見える初めての外の世界は目まぐるしかった。
いろんな人がいる。いろんな服を着て、楽しそうに歩いている人もいれば、忙しそうにしている人もいる。
小屋?のような建物で食べ物を売っていたりもしている。
服は何度も繕った痕のある色褪せた物を着ている人が多い。
私のドレスも何度か繕って着ているけど、さすがに繕った痕が目立ったり、色褪せてきたりするとアリソンが新しいのをくれる。
新しいと言ってもアリソンのお下がりだから手直しをして、自分なりにリメイクもしている物になるけど。
アリソンはたくさんドレスを持っているの。
教育係のアリソンには必要な物らしい。
外出しない私には必要がないけど、アリソンはよく外出をするからたくさん必要になるのだ。
Ωのせいであまり社交界に出れない私の代わりに社交界に出てくれているから必要になるというのもあるのだろう。
きっと隣国でもアリソンが私の代わりに社交界に出てくれることになるだろう。迷惑ばかりかけて申し訳ない気持ちでいっぱいになる。
私はアリソンがいないと何もできないのだ。
社交界では一度袖を通したドレスを着るのは恥になるとアリソンが言っていた。
なら、あの荷物の量も仕方のないことだ。
「庶民の生活が珍しいですか?」
「えっ」
馬車の外を熱心に見ていたら、また騎士に話しかけられた。思わず、反応してしまったけど、気にしてなさそうだ。
どうしようかと迷っているとピシャリと馬車の窓が閉められた。
アリソンが閉めたのだ。
恐る恐る視線を向けると鬼の形相をしたアリソンが睨みつけていた。
「姫様、そのように外に興味を持つのははしたない行為です。ただでさえ、今回の事件は王家にとって恥ずべきことなのに、これ以上恥の上塗りはしないでください」
「・・・・・はい」
もう少し外の世界を見てみたかったけど、これ以上アリソンに迷惑はかけられない。
私のせいでお父様から叱責を受けたと聞いた。
私が不出来なせいでアリソンの評価が下がったらしい。申し訳ないことをした。
でも、窓を閉められ、カーテンも閉められた馬車の中は薄暗いし、常に不機嫌な顔のアリソンと二人きりはかなり息が詰まった。
早く、着かないかな。
隣国に行くことに、会ったこともない王子に嫁ぐことに不安はない。
だって、どうせ変わらないから。
私はΩで、隠していても人は私を本能で嫌う。だから、何も変わらない。
どこにいようと、どこで生きようと。
ならば、不安になる必要はないだろう。




