11.私の味方
「全部、お前のせいよっ」
発情期がまだ完全に治っておらず、抑制剤を大量に摂取した。
そのせいで頭痛も吐き気も酷く、ベッドで耐えていた。すると、急に髪を引っ張られて床に叩きつけるように下された。
「どうして、私の言われた通りにできないのっ!」
そう言ってアリソンは私の頬を叩く。
余程、頭にきているからか、女性の力とは思えないほど強い力だった。
「私が、どれだけお前のために生きてきたか、どうして恩を仇で返すような真似をするのっ!やはり、あの女の娘なのね。どんなに尽くしても、簡単に裏切る」
「ゲホッ、ゲホッ、や、め、ごめ、さい」
アリソンの蹴りがお腹にヒットして、咳が止まらない。でも、アリソンは止めてくれなかった。
今までにない程、怒っている。当然だ。私のせいで、アリソンの努力が無駄になった。
私がΩだから、Ωだとバレてしまったから。
だから、アリソンが怒るのも仕方がない。
痛いけど、我慢しないと。全部、私が悪いから。
「いいですか、姫様。あなたの味方は私だけなんです。Ωの姫様なんてだぁ〜れも、味方してくれません。私だけが、あなたの味方なんですよ。だから、姫様は私を裏切ってはいけなかったんです。それなのに、こんな酷い裏切りをするなんて」
アリソンが私の前髪を鷲掴みにして、顔を上に向かせる。ぶちぶちと何本か抜けて、痛みが生じたけど我慢しないといけない。
そうしないと、長引くだけだから。
大丈夫。我慢さえすればすぐに終わる。大したことない。
「学校で発情なんて、さすがはΩですね。それを聞いた時の私の気持ちが分かりますか、姫様。恥ずかしくて、恥ずかしくて、死にたくなりましたわ。まさか、姫様が学校中の生徒と関係を持ちたがるとは思いませんでしたわ」
違う。ちゃんと、抑制剤を飲んでいたし、追加で飲もうとしていた。
でも、飲めなかった。そのせいで、抑えが効かなくなっただけ。
だけど、そんなのは言い訳だ。言い訳には何の意味もない。結果が全てだ。
それにΩの本能で言えばアリソンの指摘通りなのだろう。
そこに私の意思は関係ない。
Ωが嫌われる所以なのだろう。
私がΩだから、お父様もお母様も会いに来てはくれない。
婚約が解消され、国外に行くことが決まっても会いに来てはくれない。これが最後になるかもしれないのに。
カールもだ。最後に見たのは侮蔑の眼差しだった。仮にも婚約者だったのに。
「みんなに嫌われている、可哀想な姫様。あなたを愛する人なんてこの世界のどこにもいない。だから、あなたは自分の分を弁えて行動しなくてはいけなかったんです。そうしなかったから天罰が下ったんです。全部、あなたの普段の行いに問題があったからですよ」
それは、国外に行っても同じなのだろうか?
どこまで行っても私はΩで、嫌われる存在なのだろうか?
「だから、これからは分を弁えて行動しましょうね。息を殺し、気配を消して、死んだように生きるんです。それが、あなたにできる生き方です」
何のために?
何をしたって嫌われるのに、どうしてそんな生き方をしないといけないの?
「これからは、しっかりと私の指示に従って下さないね」
アリソンは満足したのか、躾の時間は終わった。
「明日には隣国に行かなくてはいけないので、これに荷物を詰めてください。持っているけ荷物はこれに入る分だけです」
そう言って投げ渡されたのはトランク一つ分。
まぁ、元々お金なんて持ってないからドレスも宝石も何も持っていない。
部屋にある私の持ち物は全て入れることはできる。
アリソンは私の躾で疲れたみたいで、部屋にある椅子に腰掛けてお茶を飲み始めた。私はその横でトランクに荷物を詰める。
十分もかからずに終わった。空っぽになったタンスを見ても何の感慨も浮かばないな。
それだけ、ここに思入れがないからだろう。
ここはまるで牢獄のようだった。
次に行く牢獄はどんな牢獄だろうか。




