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魔力適性9999の俺、魔法が通じぬなら科学で無双する  作者: klam
転生

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第3話 世の理は私を縛っている

ピコーン。

[水魔法を習得しました]


耳の奥に電子音のような声が響いた。まるで誰かが俺の脳内に通知を送ってきたかのように。


(!?)


「なぜ?急に習得したんだ?」

「水魔法もどきを使ったからか?」


「……本格的にRPGみたいになってきたな」


水を手に入れ、ようやく喉と心に余裕ができた。

立ち止まって空を見上げる。薄く流れる雲の向こうに、町の影がかすかに見える。


「ここでずっとくたばってるわけにもいかない、か」


未知の世界で、初めて“目的地”という単語を意識した瞬間だった。


――その時。


草むらがざわりと揺れた。

次の瞬間、灰色の毛並みをしたウルフが飛び出してきた。


「いったそばから出てきた!?」


全身の毛が逆立つ。背筋が凍る。逃げるなら今だ。


けれど、脳の奥のどこかで別の声が囁いた。

理系としての本能。科学者としての本能。


――[こいつで、実験しろ]。


「まずは先ほど覚えた水魔法!」


頭に浮かんだ文字を叫ぶ。


「ハイドロ!」


「うわぁぁぁっ!?」


自分の手から、信じられないほどの圧力を持った水が噴き出した。

空気が震え、砂埃が舞い上がる。


「すっげぇ高威力!これはいいダメージが出たんじゃ……?」


視界がクリアになり、ウルフを見た。


「……無傷!? なんで!?」


今の一撃は牛が吹っ飛ぶレベルだぞ!?


ウルフは涼しい顔で牙をむく。水が毛皮の表面を滑り落ち、蒸発していく。

その目には「それが何だ?」とでも言いたげな冷たさが宿っていた。


「なぜだなぜだなぜだ」


「俺はまた...死ぬのか?」


もう二度と生き返ることはできない今度こそ俺は確実に死――


ピュンッ――


「グワァアァァ!」


鈍い音とともに、ウルフが横倒しに吹き飛んだ。

その背に、一本の矢が深々と突き刺さっている。


「な、なんだ……矢?」


息を荒げながら、音のした方を振り返る。


そこに立っていたのは、一人の女性だった。

銀色の鎧が陽光を反射し、金の髪が風に舞う。

鋭い眼差しの奥に、冷静な判断と、ほんのわずかな焦りが見えた。


「おい、君! 生きてるか!?」


彼女は弓を構えたまま、ウルフを警戒している。

声は凛としていたが、どこか優しさを帯びていた。


――助かった。

その事実が頭に追いつく前に、膝から力が抜ける。


(……また、生き延びたのか)


空気が静かに戻り、風が草を揺らす。

俺の異世界生活、ようやく誰かとの出会いで幕を開けた。

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