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ファンタジー好きの俺、設定ガバガバな異世界に召喚されてぶちギレる。~こうなりゃ俺が本格ファンタジーの真髄を叩き込んでやる~  作者: 中島健一


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第20話 指導

『鈍色の帳を裂き、 我が身は昇る。その身は光を纏い、しかし影を残さず、誰にも知られず、ただそこにある』


 将太は、自身にスキル『創造』を使用し、身体を宙に浮かせ、誰にも姿が見えないように透過させた。


 これから向かうは、女神マアナのところだ。この姿のまま、スキル『創造』を駆使し、マアナのいるあの真白い空間へと移動した。


 マアナは白いソファに横になり、ポテトチップスを口へと運びながらテレビのようなモニターに写る画面を見ていた。その画面には色とりどりの服や装飾品を身に付けた人々が音楽に合わせて踊り狂っている映像が写っていた。すると画面中央に見覚えのある外国人俳優がカメラ目線となり、その俳優の背後にこれまた色とりどりの花火が打ち上がる。


 マアナは溢した。


「レオ様、格好良い……」


 将太はそんなマアナに声をかける。


「おい!」


 マアナは身体をビクリとさせて、声のした方に視線を送ったが、将太が透明化している為にマアナは視線を忙しなく前後左右へと送る。


「ここだ」


 将太は透明化を解いて、マアナに姿を見せた。


「あ!なんだ君か!?驚かさないでよぉ~」


 相変わらずの軽いノリに将太はピクリと青筋をたてた。マアナは続けて口を開く。


「どう?どう?そのスキル!なんでもできるでしょ!?それでハーレム作った?俺tueeeした?」


「……」


「あれれぇ?ご機嫌斜めな感じぃ?でも私の調子はいつもまっす──」


「それ止めろ!」


 将太はマアナのくだらない駄洒落を遮った。マアナは人差し指どうしをチョンチョンとつけながら不貞腐れる。


「えぇ~、私の渾身のギャグなのにぃ」


「先ずはお前から変えてやる!」


「ん?」


 将太はマアナを真っ直ぐ見据えて、半透明の画面を浮かび上がらせようとした。しかし──。


「え?私にスキル使おうとしてる?チッチッチ、そのスキルは私には使えないのだよ…今までもいたなぁ、私を操ろうとしていた勇者が」


 将太は認めたくはないが、流石は女神だと思っていた。その間にマアナは、ポテトチップスをつまみ、テレビの続きを見始めた。


 将太は、スキル『創造』でそのテレビ画面を消す。


「あ!?ちょっと!!え!?」


 ただうるさかった為に、消したテレビにマアナは想像以上の反応を示した。マアナは我が子を労るようにモニターにかかりきりだった。将太はもしやと思い、提案する。


「俺のいうことを聞かなければ、そのモニターを破壊する」


「えぇぇ!!?やめてぇぇぇ!!私から娯楽を奪わないでぇぇぇ!!!」


「なら言う通りにしろ。もう既に俺の言うことを聞かなかった場合に爆破するよう設定した」


「聞きます!!なんでも言うこと聞きますから!!壊すのだけはやめてくださいぃぃぃ!!!」


 将太はマアナを女神らしくするよう、指導した。


「違う!もっと威厳を込めて言え!!」


「ひぃぃ、だってぇ~、こんなことしたことないんだもん!!」


「テレビ壊すぞ?」


「やめてぇぇぇぇ!!!!」


 じゃあもう1回だ。と将太は命令する。ロード・ダンセイニの『ペガーナの神々』に出てくる主神マアナ=ユウド=スウシャイは、直接的には喋らない。だから将太が考えた女神っぽいセリフを練習させた。


「違う!感情を込めるな!淡々と言え!!」


「はい!」


 マアナは将太の考えたセリフを言った。


「勇者が討伐したのは、魔王に非ず」 


「……」


 マアナはまるで親から叱られないか心配する子供のようにチラリと将太に視線を合わせた。将太は暫く黙ったままだった。しかし「ん~」と唸ってから将太は言った。


「ん~、なんだろう……声にエフェクト足すか……」


「エフェクト?」


「おう!これでもう一回言ってみろ!」


「勇者が討伐したの……アハハハハ!!なにこれぇ!!」


 マアナの声は洞窟の中で反響する声となって、聞こえ始めた。


「笑うな!最後までちゃんと言え!!」


「はいッ!」


 将太の熱血的な指導は数日続き、とうとう本番の将太の葬儀の日となった。そして──。


「今より一年と一日後、天空を覆いし闇が、輝ける太陽の光を完全に蝕むその時、真なる魔王が姿を現すでしょう。魔王は、恐るべき軍勢を従え、北の彼方、禍々しき茨の森の深淵より現れ、この世界に破滅をもたらさんとする。心せよ、そして備えよ。されど恐れるなかれ。希望の光は、いかなる闇にも決して消えぬもの。皆で勇者ヴォルンドを支え、研鑽を積めば必ずや魔王を打ち倒すことができるでしょう」


 マアナはそう言って、将太の葬儀を執り行っているたくさんの人々の頭上で述べた。そして再び天に昇り、姿を消した。将太はその様子を自身の姿を透明にし、隠れて見守っていた。


 将太はマアナを見て思う。


 ──完璧だ…まさに理想的な女神そのもの……


 将太はマアナのいる白い部屋へと戻り、労いの言葉をかけようとしたが、マアナは将太に詰めかけて言った。


「ねぇねぇ、どうだった!?よかったくない?てかさぁ、この白い衣装大丈夫だった!?パンツ透けてなかった?」  


 マアナは自分のお尻を見ようと首を回した。将太は自分の理想的な女神から再びノリの軽い駄女神に戻ってしまったマアナに言った。


「お前もう喋んな!!」


「えぇぇ、酷いぃ!!」

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