大切なものは心の中に
読みづらかったらごめんなさい;
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誰かがこんなことを言っていた
本当に大切なものは
自分が望まなくても
自分のすぐ近くに
いてくれるんだよと
その村の近くには
大きな大きな森がありました
森の中には
鳥や蝶
栗鼠や兎
他にも木の実や果物
沢山の命が生きていました
そんな森に
ある日
子供がやってきました
村に住む1人の男の子です
男の子はいつものように
森に薪を
拾いにやってきました
なんだか悲しそうです
男の子の心は
森に射す
太陽の光とは違って
森の木にかかる陰のように
暗いものでした
男の子はとぼとぼと歩きながら
薪になる枝を探して
森の奥へ奥へと
入っていきました
しばらく歩くと
三つの分かれ道にでました
男の子には読めませんでしたが
それぞれの道の横には
それぞれ立て札が
立てられていました
男の子は来た道を
振り返ってみました
しかしそこには
男の子が歩いてきたはずの道は
ありませんでした
奥に入りすぎて
道に迷ってしまったようです
男の子は泣きました
自分の泣き声を聞いて
誰かが来てくれることを祈りながら
大きな声で泣きました
少し経つと
男の子の肩を誰かが
後ろからトントンと
優しくたたきました
男の子は驚いて泣くのをやめ
後ろを見ました
そこには
旅人のような格好をした
女の人が立っていました
女の人は
男の子に向かって
手を差しのべました
男の子がその手を取ると
女の人はにっこりと笑って
立て札を見ました
そしてその中の1つを見て
その横の道を指すと
男の子に
ついてくるようにと言って
男の子の手を引いて
歩いていきました
女の人に手を引かれて
どんどんと森の奥に向かって
道を歩いていく男の子は
いつの間にか景色が
変わっているのに
驚いていました
木しか見えなかったのが
今は何故か懐かしい
男の子の村に
変わっていたのです
男の子が村にいたとき
ちょうど秋が始まり
肌寒くなっていたはずなのに
この村は春に咲く花で一杯でした
女の人が足を止めました
男の子もつられて
足を止めました
見ると
目の前には男の子の
家がありました
男の子は駆け出そうとしましたが
しかしそれを女の人は
首を横に振って止めました
男の子の家の扉が
勢いよく開きました
男の子は驚き
女の人の背中に隠れました
中からは今の男の子よりも
一回り小さい男の子が
出てきました
その後ろには
男の子のお父さんと
お母さんがいました
男の子は女の人の背中から離れ
お母さんに走り寄ろうとしましたが
今度は女の人は
止めようとはしませんでした
男の子はお母さんに
飛びつきました
しかしお母さんは
男の子を見向きもしません
小さな男の子の
元気いっぱいに走る姿を見て
お父さんと顔を合わせて
幸せそうに
笑っていました
男の子はお母さんと
叫びました
しかし
お母さんは男の子の方を
見向きもしません
女の人は
泣きじゃくる
男の子の手を取って
お母さんから引き離しました
そして
小さくささやきました
ここはあなたの過去よと
そして男の子は
また女の人に手を引かれて
歩いていきました
すると
またあの分かれ道に
戻ってきてしまいました
女の人はまた
違う道を指すと
男の子の手を引いて
歩いていきました
今度は夏の村に着きました
村の近くの川では
先ほどの小さな男の子が
水しぶきをあげながら
遊んでいました
夕方になると
お母さんがタオルを持って
小さな男の子を迎えに来ました
小さな男の子は
お母さんに向かって
塗れた体で走っていきました
お母さんは少し
困った顔をしながら
笑って小さな男の子の頭を
拭いてあげていました
男の子は
女の人の手を握ったまま
そのお母さんと
小さかった自分の姿を見て
泣いていました
お母さんとの
大切な思い出だからでしょう
女の人と男の子は
小さな男の子とお母さんが
見えなくなるまで
見送っていました
男の子はまた
女の人に引かれて
分かれ道に戻ってきました
次へ行くのは
女の人が指すまでもありません
最後の一本です
男の子は涙の跡を隠しもせず
その最後の道を
女の人と一緒に
歩いていきました
最後の一本は
今までよりも随分と
短いものでした
出た所は
なんと
男の子の家の中でした
外はもう真っ暗です
お父さんの横には
もう一人男の人がいました
白い服を着た
お医者さんです
男の子は女の人の手を離し
来た道へ戻ろうとしましたが
女の人に腕を捕まれて
止められてしまいました
女の人は言いました
逃げてはだめだよ
お母さんは
そう願っているはず
そう言って
奥の部屋へ続く扉の中に
男の子を押し込めました
男の子は
思い出していました
お父さんから
お母さんの事を聞かされたとき
男の子は嫌だと泣き叫んで
外に飛び出し
そのまま次の日まで
家に帰ってこなかったことを
目の前のベッドに寝ているのは
間違いなく
お母さんでした
男の子は前のように
逃げたいと思いましたが
女の人の言葉を思い出し
なんとかその場にとどまりました
お母さんの目が
弱々しく開きました
そして男の子の事を
何度も呼びました
男の子はゆっくりとベッドに近くと
お母さん
と小さく言いました
男の子の声は
お母さんに届いたようです
男の子の目を見て
にっこり笑うと
ありがとう
そういって目を閉じました
そのときの顔は
いつものお母さんの
優しい笑顔のままでした
男の子の後ろには
いつの間にか
お父さんが立っていました
お父さんは男の子を抱きしめ
お母さんは遠い所に行ったんだ
そう涙を流しながら
男の子に聞こえるぐらいの
小さな小さな声で言いました
男の子は
お父さんに力一杯
抱き返し
うんと小さく頷くと
お父さんの肩に顔を埋め
泣きました
女の人はいつの間にか
分かれ道に
男の子と戻っていました
男の子はもう
泣いてはいません
お母さんが死んでしまってから
ずっと後悔していたことが
無くなっからです
お母さんは
男の子とお父さんの
家族で良かったと
思っていたこと
自分には
大好きなお母さんとの
思いでもあるということ
その事に
気づいたからです
女の人は言いました
あなたのお母さんは
あなたにとって
本当に大切なものなら
あなたが望まなくても
あなたのすぐ近くに
いてくれるんだよ
ずっと
君の心の中に
いてくれるんだよ
そう言って
女の人は男の子の目を
閉じました
男の子が次に目を開くと
そこには誰もいませんでした
近くで
お父さんの声が聞こえます
男の子の泣き声を聞いて
男の子を
探しにきたのです
男の子はもう一度目を閉じ
開いてみましたが
女の人も
三つの分かれ道もなく
いつもの森の
一本道しか
見えませんでした
それから20年が経ち
男の子は大きくなり
結婚して
子供が出来ました
大人になった男の子は
自分の子供に言います
誰かがこんなことを言っていた
本当に大切なものは
自分が望まなくても
自分のすぐ近くに
いてくれるんだよと
子供はそれはどういう意味なのか
お父さんに尋ねます
お父さんはにっこりと笑って
いつかきっと分かるよ
そう言って
小さい頃に死んだ
お母さんを思い出し
心の中で
そうだよね
と言いました
女の人は
その言葉に
優しく微笑みました
『大切なものは心の中に』終わり。
『大切なものは心の中に』を最後まで読んでくださりありがとぅございました!
このお話はとあるサイトにも投稿しているもので(随分前になりますが;)、もしかしたらご存じの方もいたかもしれません。でも内容的には何一つ変えていないので、途中から引き返した方もいることでしょう。
私はこのお話を、皆様の暇つぶしになればいいなと思い書きました。
暇つぶしにはなりましたでしょうか?
それでは最後にもう一度。
ご拝読ありがとうございました♪