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やがて箒星と共に  作者: くりみなる
8/12

星光

魔術の処理が終わった後、続々と眠っているゴブリン達が街へと運ばれていく。


「どこに運ばれて行くんですか?」


「一旦は安置所ですかね。彼等も亜人系の魔物、少しなら人語を介することが出来ます。ここずっと互いに不干渉を保っていたのになぜでしょうか……少し聞いてみるとします」


 と言ってどこかに離れて行ったと思ったら、ある兵士を連れて現れた。その兵士は他とは違って兜の上に尖りがついていいる。


「こちら警備隊の隊長さんです。起こす許可を取りに行ったら彼も付いてくると仰ったので」

「はい。では早速お願いします」


 バーツは1匹のゴブリンを同様の手段にて起こす。その虚な目がゆっくりと開いた。


「……ガ…ドコ?……ウゴカナイ」


 彼?は混乱している様子だった。首だけをキョロキョロと動かして周りを見ている。ただ手足は動かそうとしても動かせないようだ。これもバーツの仕業だろう。


「ここは人間の住処だ。オマエらが先に襲って来たのだろうに、他のゴブリンは?増援は?」


「ソウ……………ソレ……ナンデ?」


「?」

「……ムラニヒトガキタ……アオイヤツ…………ソレデ……ヒカリガ……ダメダ…ミ、ミエナイ!」


 とだけ言うとゴブリンはまたバッタリと気絶してしまった。その顔はひどく引き攣っていた。まるで恐怖そのものを見たかよのうだ。


「おいどうした?……バーツさんの魔術ですか?」


「いえ、、、違いますね。気絶する要因なんてないんですけど。この感じ、嫌な予感がしますね………星光が濃くなったのでしょうか……」


「そうですね……最近は物騒だ……バーツさんには色々してもらいたい事があるので、付いて来てもらえますか?」


「はい」


***


 バーツが警備隊と共にいる間はマフェが街を案内してくることとなった。

 先程まで騒々しかった街は今ではすっかり落ち着きを取り戻している。人々は大通りを談笑しながら歩いてさっきは凄かったねぇー、などと呑気に言うのだった。


 街を見ていくと肉屋に果物屋、鍛冶屋に武器屋、それに理髪店や病院なんかもある。当然だがなんだか思ったより沢山の店があった。

 一番目を引いたのがポットを販売している店の横にあったポット診療所という店だった。


「ポット診療所ってなんだ」

「そういえばポットがない地域から来たんだっけ君。アレはポットを付けるための施設よ」


「そうか……なぁ、ソレ付ける時って痛くなかったのか?腕がバッサリいかれるんだろ」

「あー少しね。けど大体は魔術で痛みを無くせるから痛くはないよ」

「本当に万能だな」


 とそれからも街の名所や道などを教えてもらって一通り見終わった頃には日が沈んでいた。


 宿の前で別れる事になるとマフェは別れ際に、明日の昼頃、同じ酒屋でパーティーメンバーを紹介する、と言った。


 そう、いきなりだがメンバーとは明日会う事になる。気楽に行って大丈夫だと彼女は言うがどうもそんな気分にはなれない。

 

 彼は自室に戻ると今日の目まぐるしい出来事を横になって整理する。その中でなにより彼の頭を一番悩ませたのは目的であった。


 元の世界に帰るのか、帰らないのか、そもそも帰れるのか。そしてなぜ転生したのか……


「謎は多い……が今は目の前の事に集中するか」


 今の第一目標は当分の銭を稼ぐ事。いつまでもバーツに世話になる訳にはいかない。色々調べる為にも生活の余裕は必須だろう。

 冒険者としてコツコツと貯めていくのも良いが、魔術を使えればなお良い。


「………」

 

 彼は仰向けになって両手を見る。中指が欠けた右手はやはり目立つ。


「願い……ね」


 掌を天井に向けてみる。あの光線はまた出せるだろうか?


————ガンゴン


 風がガラス窓を強く叩く。立ち上がって見てみると夜でも活発な街の姿と、夜空に輝く無数の星々が鮮やかなグラデーションを作り出していた。

 ここな人々はこんなの慣れっこだろうが、これはとても美しい。


 そんな黄昏(たそがれ)る異邦人の目に一人の人間が止まる。その者は白いローブを纏って、銀色の特徴的な曲がりくねった刃物を握っていた。


「まだついてくるか」


 彼はそう言って窓から離れた。

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