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やがて箒星と共に  作者: くりみなる
5/12

経過

「(…アイツは目が宝石、アイツは金の腕をつけてる、お、アイツは生身か)」


 街行く人々をじろじろと観察してみる。するとある事に気づく。それは皆基本的に体の数箇所しか置換されていないことだ。見たところ多数を置換している人は少ない。


「物珍しいですか?」


「え?あ、まぁ。うちの国にはこんなハイテク?なもんはまだないんで。ありゃなんなんですか?」


外付けの体躯(ポット)と私達は呼んでますね。魔道具の一種といいますか。魔力を流す事で機能を発揮する道具です。この地域は昔からポット職人が多くて入手しやすいもので、皆つけてます」


 と言うとある店を指差した。その露店には人々が付けている腕や脚がずらりと並べられている。

なるほど結構気軽に売られているものらしい。


「へぇ〜一体何が便利なんですか」


「それはもう色々。手脚のポットを付ければ脚力や腕力が飛躍的に上がったり関節を自由に曲げられたり、目のポットをつければ透視ができたり相手の感情が読めたり……機能は多岐に渡ります」


「マジ……とんでもヤバ技術っすね」


 驚きのあまり語彙力を失う。人間の体を捨てて機能を向上させる…なんてそんな近未来的な事が技術で劣るであろうこの“世界“で行われているなんて。


 いや、実際には劣ってはないのだろう。ポットは全く別の、比べてはならない技術なのだろう。

 彼はふとバーツを見る。彼の手脚や身体は全て生身のように見える。


「バーツさんはポット付けてないんですか?」


「いえいえ、付けていますとも。私の場合は骨とか内臓の一部がポットです」


「……まじすか」

「マジです。と着いたようですよ」


 バーツが止まったその店には、ビールを模した絵の看板が吊り下げられていた。


 木製の扉を引くと中には騒々しい光景が広がっていた。ガヤガヤと色んな人々が話し合ったり酒を飲んで笑い合っている。それに美味しそうな食事の匂いも漂うので、コウの食欲が増してくる。

 

 カウンターの席が丁度二つ分空いていたので彼等はそこに座った。


「…先生?」

 

 背後からそう声が聞こえてきた。落ち着いていて可愛らしい声だ。二人が同時に振り向くとそこには若い女性が立っていた。


 彼女は濃紺色が特徴の地味目な服装で、白くて滑らかな長髪を持ち合わせていた。そしてその目は金色で細く鋭く、多分美人の類に入るだろうくらいには顔が整っている。右腕が金属製のポットのようだ。


「やっぱり先生じゃん。お久しぶり」


 彼女はバーツを見るとそう言った。


「やぁやぁ、マフェさん。どうですか仕事の方は?順調ですか?」

「いつも通りほどほどだよ。あ、けど最近魔物が活発になってきているらしいし今より忙しくなるかも」

「ほほほっ頑張りなされや」


「……」


 気まずい。知り合いとその知り合いが仲睦まじく話す間の気まずさと言ったらとんでもない。


 話には入れないし、とはいってもずっと見てるのもなんなので苦し紛れに彼はコップに口をつけた。


「先生、その横の人は?」

「!」

 

 いきなり話題に出され思わず水を吐きそうになるが横目でバーツをチラリと見る。


「彼は私の連れです。どうやら遭難してしまった様なので取り敢えず情報だけでもと」


「ふぅーん」


 とマフェは彼の顔をじーっと見つめる。彼女の顔は美形なのでそうしていく内にコウは少し恥ずかしい気分になってくる。


「なにか?」

「いや、ただ見ない顔だなーと」

「そりゃ遭難したんだ、人種も違うだろうよ」

「それもそうだね。名前は?」

「コウだ。君は?」

「マフェスタ・ハスタ。マフェでいいよ」


 そのやり取りはとても簡潔に、素早く行われた。それから日本と言う国について彼女に聞いてみたがやはり知らないという。


 というかその質問はもう意味をなしてないだろう。なにせポットみたいな技術や魔術は元いた所には絶対ない。もう殆ど“異世界転生“とまではいかなくても、未知の世界なのだ。


 しかし、もし、異世界転生だとするならば何をすれば良いのだろう?


「(目的か…“帰る事“になるのか?)」


「そうですか…マフェさんも知らないのですか。どうやらアナタの故郷は大分遠くにあるようですね」

「……そうですねぇ…というかバーツさんは教師だったんですか?」

「え、えぇ一応。魔術学校で教授を務めてました」


 どうやら魔術学校なるものがあるらしい。名前からして魔術が学べそうだ。


 もしこの異世界で生きていく場合、魔術は覚えておいて損は無さそうなもの。それに加えて、彼は単純に魔術を覚えてみたいという願望があった。


「(魔術、せっかくなら覚えたい!)」


「先生は凄い人だよ。魔術の精巧さならこの国でも一二を争う程上手いんだから」


「かいかぶりですよ。私はもう衰えました」


「まだまだいけるでしょうに」


 とマフェはため息をつく。それでもバーツは優しい微笑みを絶やさない。

 この優しそうなおじさんにそんなに魔術が出来るのだろうか。魔術は老いた人の方が上手いイメージもあるが疑問である。

 しかし、元教授?らしいので彼は思い切って質問してみた。



「あの、魔術ってなんなんですか?」



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