プチ・トリアノン宮
国王となられたルイ16世陛下は頻繁にアントワネット様の御部屋に御出でになられました。
あの隠し通路を使われて……。
「深い森」の話の中に財政難のフランス王国を救う何かをお探しでございます。お二人で……。
「ばあや、パンは何で作るの?」
「私も知りたい!」
「小麦でございますよ。」
「小麦!」
「小麦を挽いて粉に致します。
その粉に水とパン酵母を入れて混ぜて、少し置きます。
そして、塩を入れて捏ねるのでございます。
また、そのまま置いておき……
それから、焼くのではないかと思います。
申し訳ございません。
詳しくは知っておりません。」
「小麦というのを挽くのね。
挽くってどうするの?」
「それは知ってるよ。
小麦は水車を使って挽くんだよ。
……その挽くことで問題があるんだ。
その水車を使う時に使用料を取って……。
水車税と呼んでいて……。
税って呼ばれてるけど水車の使用料なんだ。
問題が多くて……。」
「それは現物でございますね。」
「そうなんだ。
粉挽き人の不正……余分に穀物を取ることがほとんどで……
季節によっても変わるし……
パン屋に優遇があって……でも、それは分かるのだ。
パン屋以外に国王の官吏・領主の役人にも特権が認められていて、優先使用権・
使用料を自分で決定できる権利があって……。
私は当たり前だとは思えない……。」
「特権とか優遇とかというのは何でございますか?」
「あのね、マリー。
使用料を少なくしてるんだ。」
「国王の官吏・領主の役人というだけで?」
「恥ずかしいね……。」
「陛下……陛下を責めて申したのではありません。」
「分かっているよ。マリー…分かっているから…。」
「陛下……。」
「貨幣に変えられてからは、パリなどの街では貨幣による使用料支払いが行われて
いるようですね。」
「街では貨幣を使っているが、地方はまだ現物なのだ。」
「それは問題でございますわね。」
「私はプチ・トリアノン宮殿を……
その中で小麦を作りたい。
作った小麦を水車で挽きたい。
せめて私達の分だけでも私が……
いけないだろうか? 国王の為すべきことでは無いので……。」
「素晴らしいお考えだと私は思います。」
「国王陛下がしてはならなかったら……私がしたいわ。」
「マリー!」
「そうございますね。
先ずは王后陛下のお遊びということでお始めになるのも……。」
「陛下、私が小麦を作ります。」
「マリー!」
「ご一緒に作って頂けますか?」
「勿論! ありがとう。
プチ・トリアノン宮殿をマリーに贈るよ。
マリーの宮殿に……。」
「まぁ、嬉しゅうございます。」
こうして、国王16世陛下はプチ・トリアノン宮殿を王后マリー・アントワネット陛下に贈られたのでございます。
このプチ・トリアノン宮殿でお二人は仲良く小麦を作られたのでございます。
御公務の合間に……。
お二人が御公務をなさっている間は、集められた農民が作業を行っておりました。
そして、その有様を多くの国民が読んでいた「パンフレット」(雑誌)によって、知らしめられたのでございます。
その反響は賛否両論ございましたが、贅を尽くして宝飾を身に着けている御姿ではなく、農民と同じような御姿の挿絵が入った「パンフレット」を多くの国民が目にしたのでございます。
そして、翌年の戴冠式の際にも新国王の姿勢を示されたのでございます。
戴冠式は前例に無いことづくめでございました。
アントワネット様は戴冠式後の披露の宴でお召になるドレスを新調なさらなかったのでございます。
勿論、国王陛下も新調されないことを望まれたのでございます。
お二人が無駄だと思われる物を全てお止めになって臨まれた戴冠式でございました。
国王16世陛下としての最初のお言葉は、「神よ守り給え、このように若くして国を治める私たちを!」でございました。




