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第5話 ハーブティ研究家、メイドにチェンジで事件解決の助っ人を担う

「ああ、芽衣。綾乃が大変なことになっちゃったのよ」

「泣かないで、春香、私も心配だから、飛んで来たの。でも安心して、強い助っ人も連れて来ているから。綾乃は何か言ってなかった?何かヤバイことに関わっているとか、最近、彼氏とはどうだった?周一と揉めていたの?」

 私は先日、ハーブティーを飲みに来た二人と再会し、春香にまず聞き、環奈にも事情を聞いた。

「ううん。そんな悪い評判もなかった。仕事も一番先に入るし、挨拶も下の人にも丁寧にして行くし、確かに金銭問題に関することは実家が貧しくて大変だって聞いてたけど、支払いもスマートで、私たちと飲み食いしに行くときも、いくらまでとか決めて使っていて、けっこう堅実だったわよ」

「私は彼氏のことは深く聞いてないけど、結婚するって言ってたわ。だから、いくら理由があっても、彼氏が犯人なんて考えられない。先週までメールしていて、またケーキ食べに行こうって行ってたの。ロケの撮影の仕事も決まって、モデルの仕事は順調そうだった。家族に仕送りもしていて、あの子、けっこう苦労性だったのよ。それがこんなことになるなんて」

 二人の友達から聞いても、私の考えと同じだ。

 犯行現場となった撮影スタジオは、鑑識や警察の捜査はもう済んでいて、中には探偵と警部しかいない。常に皓々と明かりが痛いぐらいの撮影所だけど、照明は落され、今は隅々に闇が溜まっていて、薄暗い。窓からの明かりの中で、スタンドやカメラが杭みたいに乱立している。


「綾乃はここに倒れていたのね」

 私も撮影スタジオの中を見た。探偵の連れということで許可が出た。私は、特に誰からも咎められない。

「ここが撮影スタジオか」

 探偵も警部も、撮影スタジオに入って、同じような感想を口にしている。

「被害者は撮影セットの中に倒れていました。その後、左右のうち、右手のドアから撮影助手が入って来て、発見。その後、大勢駆けつけ、現場は入り乱れ、鑑識はまだ犯人特定には至ってません。上部も言っていますが、複数の人間が出入りできる環境で、証拠もない。これは誰か、通り魔的な者の犯行でしょうか?」

「殺害に関係する人が少ない場合と違い、大勢が関わる殺人は、また犯人が見つかりにくくなるが、現場に跡形もなく消え失せたことから、現場に詳しい者の犯行でないかと思われる」

 閉鎖的な撮影スタジオで、探偵はどこか苦しそう。もしかして、心身が苦しいのかも。でも、この状況でも、探偵の推理は鋭さを衰えさせてない。

「だが、この撮影セットの中で殺害後、犯人はどうやって姿を消したのだろう?この現場は大きいが、一つの部屋。どこにも隠れて、逃げる隙もない。大勢がいる場所、外へ出ても大勢の人がおり、いつでも見つかる可能性がある」

 探偵はあちこち歩いて、現場の機材を見たり、机の下をかがんでのぞいてみたり、やはり、場には不慣れな感じだ。

 さすがの探偵でも、スタジオの初心者なのだ。この点に関しては、私のほうがかつて知ったる何とやらだ。どこに何があるのか、目をつぶっていても分かる。

「ねえ、探偵さん、ちょっと来て」

 私も綾乃が倒れていた撮影スタジオの中をぐるっと見る。撮影ではいつも使われる脚立、照明、カメラ、撮影背景のセット置き場など、見慣れた風景を見ていく。おかしなものはない。秘密の抜け穴もない。けれど、私は綾乃が倒れていた撮影セットを見て、ある一つの考えが頭に浮かんだ。

「なんだい?」

「このロ」

「おーい、芽衣、芽衣じゃないか?久しぶり、どうしてた?ひゅう、今でもすごく綺麗だな、お前」

(げ、タカシ)

 その時だ。私のことを追いかけ回す男性モデルのタカシがスタジオにまで入って来た。


「あ、ごめーん、お化粧直し」

 私は急いでトイレに入った。

 次に出て来た時は、メイドの私になった。三つ編み、ジャージ、メガネのハーブ研究家。ネチネチといかにもマニアックそう。

 タカシはちらっと見て、気づかない。私、いったいどうなってんの?

「お待たせ」

「君は?」

 一応ジャージ持って来て良かった。モデルのクセで、着替えとか持っているのよね。

 警部にも気づかれない。たく。

「いいんだ。僕の、連れだよ。本物の」

「は。はあ?」

 探偵は大喜びだが、あのあれを見たら、にわかには喜べない。

「この撮影セットというのは、入れ替わるんです」

「ふうん、君、詳しいね。メイドだろう?」

「え、いえ、あの、ご主人様について、撮影現場にも出入りしていたもので、撮影には詳しいのです」

「へえ」

「綾乃はこの撮影セットの中で殺されていたのですよね?」

 現場の情報は警察のほうが詳しいと、警部が私に説明を加える。

「はい。当時、この背景の前で、ファッション誌の撮影が行われていました。お昼過ぎに、撮影助手の女性がここに戻って来ると、腹部にナイフが刺さった状態で撮影セットの中で倒れているのを発見したそうです」

「この撮影の背景、入れ替わることをご存じですか?背景ロールは何枚もあって、随時何枚も垂らしておけますし、随時入れ替えも可能です。この色には赤、青、白など、何色でもあって簡単に取り替え可能ですし、照明により色合いも変えれます。当時、赤の背景にしておいて、綾乃を呼び出し、殺害した後、上からもう一枚のロールを垂らしておけば、綾乃の死体はロール紙の背後に隠れて、横から見ないことには気づかれません。撮影時は、被写体に相当な照明が当てられ、暗がりは相当に暗くなります。それで殺害後は一番外側のロール紙を下ろし、死体を隠し、犯人は何気なく普段通りに仕事をこなし、スタジオから人がいなくなったところを見計らって、死体の上のロール紙を上へカーテンを上げるように巻き上げて、綾乃の死体を晒した。そうして誰かに発見させ、自分はそこにいなかったかのように取り繕ったのでないですか?」

「なるほど、時間差によるアリバイ作りか。確かに、このロール紙は三枚今、鑑識に改修されているが、一枚目には灰色っぽいの、二枚目にも違う灰色がかかっていた。それで目くらまししていたのか」

 警部は言う。

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