表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/7

第3話 覚悟の探偵、ド直球で一線を踏み越える

「あの子は?メガネで三つ編みの、農作業していた女子に会いたいんだ」

「あ、あの子は・・・ええと、今はいない」

 プライドが傷つけられたせいか、私は素直にすんなりと自分を認めようとしなかった。

「君は?」

「この家の当主、モデルの西尾芽衣です」

「あの子は?」

「あの子は・・・ええと、私の家のメイド」

 あれが、私のメイド?私があれで?メイド?

 って、何を隠そう、ハーブ研究家だからね。いずれテレビにもまた出ようと思ってる。あのなりで、ハーブ研究家で。えええ?あれがメイドなの?自分でもびっくり。

「あの子に会いたいんだ。推理中だったけど、ああして実物を見せてくれたら、僕も分かりやすい、次に来たら、伝えてくれるか。君に惚れた。いずれ、君を抱くと」

「ええっ」

 自分で言ったことの驚きより、言われたほうの内容が何倍も驚きだった。

「なんだ?それほど驚いて」

「い、いえ。いいえ、あの、そんないきなり、相手も驚くわ、ド直球過ぎに言い過ぎよ」

「なんだ。僕とあの子のことだ、君に言われたくない。僕はこういう人間なのだ。単刀直入なんだ」

「そんな、そんなこと、言えるわけないわ、自分で言えや」

「じゃあ、またあの子に合わせてくれ。また、来る」

「もう来ないでいいわよ」

 なんという破廉恥な探偵だ。

 探偵はふふっと笑って、去った。




 会いたいと言ってもねえ・・・会わせたら、私っていつかバレるよね、いつか。

 香り豊かなハーブティー。

 ほわほわの湯気が立つ、緑の液体。

「高速道路での事故の後、逃げた犯人は逃亡先の民家で潜伏、その時に、被害者との接点が出来た」

「清風館殺人事件は遡れば、昭和の戦後、犯人が旅館である一人の女性と出会った所から始まります」 

 日本で一番、スキャンダルチックな隣の探偵の推理を聞きながら、ハーブティーを飲む。

 はああ。三つ編みの農業女子の私に会いたいと言ってもねえ。

 この癒しの空間、止められないわあ。

 綺麗なモデルの私が、あの冴えないメガネ女子と知ったら、もうここで、探偵の推理を聞いて、極上のハーブティー時間を過ごすのはできないでしょう?

「う、うげ。まず」

 なんで、私のハーブティーはこんなにマズイの。

 いったいいつになったら、極上のティーを入れられるの?

 コンコン。

 あ、探偵が訪ねて来た。

(仕方ない、もとの私のままで会うか)

 私はジャージ三つ編みのメイドとして、探偵に会った。お望み通りよ。

 前の失敗を謝るために、今回は素直になる。

「はい」

「あ、いたんだね。君に会いに来た」

 仕方ないなあ。このマニアックな私、研究家の私のファンなら、無下には出来ないわね。

 私は中に入れて、客室でハーブティーをごちそうすることにした。

「もう聞いていると思うけど、君に惚れた」

 私はティーポットを落しそうになった。

「なっいきなり、直球過ぎない?」

「これが僕だ。なんか、君の声、君の言葉、誰かを思い出させるが、思い出せない。僕も日々、物理学、化学、生物学などの研究書を読むのに忙しい。まあいい。そういうことだから、僕は君にこれから言い寄る。君に手を出すし、キスもする。その着ているジャージも取っ払って、君に欲望を吐かせる。ピーして、ピーして。思いっきり汗をかいて、ピー。君を抱き締めて離さない。君もそのつもりで」※ピーは公開禁止用語。

 カキーン・・・

 どこかで、学校のホームランを打つ音が鳴った。

「い、いや、何を言ってるのよ、いきなり、あなた、そんなことを面と向かって、頭おかしいのじゃない?」

「僕はこういう男だ。僕も閉じこもりがちな人間で、人との接触を拒んでいるから、今まで人間と触れ合わなかった。けど、君は別だ、最初から言った。君に惚れた。と。僕もこんな気持ちは初めてだ。何を思われてもいい。汚らしい男と思って構わない。でも、僕は正直に言う。やりたいことをはっきり言う。黙っているタチでもない。外にあんまり出ないけど、僕の実行力は高い。思ったことは必ずやり遂げる。いや、やりたいことは力づくでもやり遂げる。望んだ通りにさせてもらう。でも、世界の中で、誰よりも、本当に君を思っている」

「思うな。やり遂げらんでいいわ」

「悪く思わないでくれたまえ。僕は真剣に君を思ってる。本気なんだ。君ほど、心を動かされたことはない。僕は今まで君のような女性に出会ったことがない。君のことを本気で好いている。僕は思える限り、君のことを思う」

 そんなふうに熱く思ってくれるってのは、嬉しいわよね。

 実際。こんなに、熱く、真剣に私を思ってくれる人などいなかった。

 なんて、思わずうっと詰まった。そういう一方的なまでも、思ってくれるってのは、今時、ないもの。日本男子で今時、そりゃ、なかなか、ないでしょうけど・・・

 とはいえ、いきなり来て、初対面で言うにしては言うことがおかしいわよ。あまりに露骨すぎる。

「女性にこのような気持ちになったのは初めてで、だから、僕も慌てているのかもしれない。理性が保てない。今から君のことを連続でピーしたい。殺人犯を常に格闘しているが、僕も君のことを縛り上げて、思う存分ピーして、僕の欲望の限りを果たしたい。今なら、数々の犯人の気持ちが分かる。それぐらいヤリタイ。僕は君のことを思っている。だから、僕と付き合って欲しい」

 でも、いきなり、これ。これはいくら何でも、許容の範囲を超えている。

「かーえーれ。私の操をいきなり奪おうとする奴は帰れ」

「君はかけがえのない女性だ」

「ええい、美辞麗句を散りばめながら、激しく性的な言葉を使うな。聞いてりゃ、あんた、私が初恋なんでしょ?いったい何様のつもりでそこまで横柄で、高圧的に迫れるわけ?」

「僕は言った。これが正直な気持ちだと。君とただ激しくベッドでむつみ合いたいだけだと」

「帰れ」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ