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狂気の使徒  作者: ひょうすい
序章 狂気の使徒
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8人目 狂気の使徒・序



 神と冥府神の違いは、パルテノン周囲に住んでいるか否かである。いわば同和問題である。神はパルテノン周囲に住んでいない神をまとめて冥府神と呼び、パルテノン周囲に住むことを拒否している。逆にそれ以外は全く一緒であり、死なない、神術持ち、神界にしか関与できないというものを初めとした、全ての特徴が合致している。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 この世界の学校に通うことが決定する少し前、私はいつも通り、気になった場所へ瞬間移動してを繰り返していた。今日は城塞国家ウルクの守護要塞都市である中心都市ウルクの外壁を見に行く。街を取り囲むように配置されている外壁は、高さ70mは超えている。だが、街中にいてもそこまで圧迫感を感じない。そのくらいに街が広い。それに加えて治安がとても良く、とても整備された王政国家である。

 ウルクがどうやってできたのかは不明であり、国民たちは口を揃えて「王の帰還を待っている」と言う。その王の名はギルガメッシュといい、現在は王位から退いているが誰もその後に就こうとしない。本当にギルガメッシュという王は尊敬されているのだろう。

 もちろん、ウルクも完璧というわけではない。私はウルクにある唯一の問題点の目の前にいる。ウルクの外壁の上に移動すると、それがよくわかる。



 「ナチス……」



 前の世界で私が殺しをしていた時、戦場で少しだけ傭兵として戦っていた時があった。1941年6月22日、ナチス・ドイツが独ソ不可侵条約を破って侵攻した時だ。所謂バルバロッサ作戦の時期である。私はソ連軍の傭兵として最前線で戦っていた。その時に目の前でナチス・ドイツの陸軍を見た。電撃戦を仕掛ける陸軍の目は全員狂っていた。まあ、私も遜色ないと思うけど。それに似ている光景が広がっていた。魔獣の大群がウルクの外壁に向かって走っている。その数は軽く数えただけで100師団級は超えているだろう。それをウルクの外壁を最終防衛ラインとして、その前で魔獣の侵攻を防衛しているといった感じである。



 「あの魔獣の量は……、下にいる人だけじゃ多分、外壁の上にある固定砲台があっても捌ききれないな……」



 そう思った私は外壁から飛び降り、魔獣の大群を目の前にした。最前線で戦ってる人は私が急に現れてビックリしてたけど、それに構ってる暇はない。規格外の魔力量で防御膜を作り、全身に纏う。最低限の安全を確保することはできたけど、これでは完全に攻撃を防げるかと言われるとそうではない。



 「さて、実験体になってもらおうか」



 私は魔力を全身に纏い、纏った魔力を凝縮して上空へ飛ばす。魔力の色は白に染まっており、天から降り注ぐ光のようだった。天気は曇りだったため光は降り注がなかったが、一瞬空が青白くなった気がする。



 「破滅の光。純白の脅威。鮮烈な血飛沫。無情な世界。我はそれを知り、その全てを解放する。知れ、これが全ての生命が背負った宿命の重さだ」



 私は手を前に伸ばし、魔獣達に人差し指を指す。



 「純白の殺光線(ザ・レイ)



 その瞬間、魔力が光線に変わった。上空には突如として大量の魔法陣が浮かび上がった。光線は様々な太さに変形し、現れてくる全ての魔獣の心臓や脳味噌、その他体内の重要な器官を完全に破壊していく。それを見た最前線の人は驚きを隠せずにいた。

 5秒。たった5秒で、100師団を超える魔獣の大群を殲滅した。光線は魔獣の死骸すら焼き払ったため、跡形も残っていなかった。これで実験は完了ではある……。……帰りますか。



 「もうちょっと残ってこれ見てても良かったけど……、壁の原材料と仕組み理解したしいいっか」



 私は外壁を見ながらボソッと呟くと、虚無の世界へと入ってその場から姿を消した。



 「なんでいるの?」


 「私の台詞だよそれ」



 私は家の中に入ると、ソファでくつろぐ紫眼紫髪ロングヘアーの後ろでひとつに束ねた女であるヘカテーがいた。ヘカテーが私に向かってそう言ったため、私は速攻否定した。

 ヘカテーは神の中でも割とマシな神。私と馬が合うくらいにはマシな神だから、話がとても合う。だからこうやってよく話すことがあるんだけど、基本は私がこの虚無の世界にいる時に来ることが多い。多分ヘカテーは私がいない時に来たっていう自覚があると思う。だから私は聞くことにした。



 「いつもと様子が違うけど、なにか用でもある?」


 「今日、詠唱魔法の実験しに行ったんでしょ?」



 ヘカテーは私が外出した理由がなんとなくわかっていた。まあ本題はウルクの外壁視察なんだけど。ヘカテーはオリジナル魔法が発動された場所、時間がわかるらしい。だからそれを本題として考えたのだろう。



 「まあね」


 「火力、凄かった?」


 「5%も込めたからね。100師団は超えてる大群を一瞬で消し去ったよ」


 「それは頭おかしい威力だね……」



 ヘカテーは魔法を作った神であり、その管理をしている。確か役職名は「魔法部門全管理最高責任者兼全運用最高責任者兼特例授与者」というものだった気がする。神界にも魔法専門の神が何体かいるらしい。その中の頂点に立つのがヘカテーとのこと。魔法管理部は魔法製造も入ってるから、実質全権をヘカテーが握っていると言っても過言ではない。ちなみに生まれた生命の魔力総量も決めることができるらしく、私の場合極限まで魔力総量を増やしたのだとか。そのため、私の魔力総量はヘカテーの4倍程あるのだという。

 ヘカテーは割と早めに私に神術を渡してくれた。私はその時名前つけるの面倒くさかったから「魔法創造(ヘカテー)」ってその場でつけたけど、もうちょっとマシな名前つけたら良かったって思ってる。



 「冥府神なんだからちょっとくらい現世に関われていいと思うんだけどなぁ……」


 「……冥府神って?」



 今、ヘカテーの口から「冥府神」という謎の単語が発せられた。なんだそれは。



 「声に出てるよ。なんだそれはって」


 「あ、出てた?」


 「出てた出てた」



 すると、ヘカテーは冥府神について話し始めた。



 「冥府神っていうのは、神の1種なんだよね。違いっていう違いは、神界のどこに住んでいるかってところだけ。神謀りが行われたパルテノンあるでしょ?」


 「あー、あるね」


 「その周辺とか、パルテノン内に住んでるのが神謀りに参加してる神達なのよ」


 「なるほど。つまりはパルテノン周辺に住んでいない神はまとめて冥府神って扱いなのね。同和問題じゃん」


 「パルテノン周辺じゃないところはまとめて冥界って言われてるのよ。地獄みたいな扱いを受けてるけど、神界の景色は統一されてるからそんなに変わらないんだよね」


 「名前ついてるんだね」


 「冥界の王であるハデスが決めたんだけどね。それをゼウスがパクってそう呼んでる。ゼフュロスはリーレに教えてなかったの……?」


 「そいつが忘れてるだけだ」



 すると、別の部屋にいた存在感の薄いゼフュロスがリビングに現れた。



 「いつの間に……」



 流石に気づかなかった私はゼフュロスに聞く。



 「お前達が冥界の話しだした時から」


 「わかんなかったわ。存在感薄いわ」


 「酷くね?」



 ゼフュロスはソファの近くで立ち、2人の話を聞くことにした。



 「同和問題もあるんだろうけど、それ以前になんで神謀りに参加できないの? 仮にもゼウスがやるとは思えないけど」



 そう、ゼウスが理由もなくするわけがない。神話通りの神ならやりかねないが、この世界のゼウスはやらないと思ってる。あんなジジイがやってたら普通に生意気で殺すわ。



 「ハデスが過去にやっちゃったのよ。南業暦が始まったのはハデスが原因なの」


 「……何したらそうなるの?」



 南業暦とは、800万年もの間続いた第1次天魔大戦の時代である。魔族と悪魔族による地底界軍と、天使族による神界軍で行われたのだが、この戦争が結構大規模な戦争であり、舞台となった生命界の地形が大きく変わるほどには大規模であった。元々別だった大陸同士が一緒になったり、度重なる攻撃で島が形成されたり、生命界全体に広がっていた神性力がノースタリッドのファウストに集約したりしたくらいには大規模だった。更に魔族、悪魔族、天使族の数が激減したことから、世界の均衡が少し崩れてしまった時代でもあり、その不安定さが人創暦にも現れている。

 そんな原因を作るようなことをしたらまあ、流石に冥府神と蔑まされてしまうのはわかる。その下についていた神達は、恐らく連帯責任のようなものなのだろう。だがしかし、私が気になるのはそんな過程じゃない、原因だ!! ヘカテーに聞くと、ヘカテーは割と普通な答えを返した。



 「ハデスが出す他の神とは違う異質な魔力。神は普通魔力を体外に放出しない。けど、ハデスは魔力を体外に放出してしまうのよ。しかもその魔力が魔族や悪魔族が持つ闇属性の魔力とはまた違う、漆黒魔力体って呼ばれる魔力を放出するのよ」


 「なるほどね。その魔力を浴びた魔族や悪魔族が強くなってったってことね?」


 「そういうこと。それに加えて魔族や悪魔族って基本的に傲慢だから、それが天魔大戦勃発を加速させたって感じだね。責任持てよってことで冥界に住む神はまとめて冥府神って呼ばれるようになったのよ」



 そんな神がいたとは。説明しろよゼフュロス。私はその思いで後ろにいるゼフュロスを睨む。だが、ゼフュロスは私が睨んだ瞬間に目を背け、知らないような雰囲気を醸し出す。おいコラ知らねぇフリすんな。

 私はそんなハデスと会いたい。だからヘカテーにお願いしてみた。



 「そんなハデスに、私は会いたい!!」


 「……え? 普通に危ないよ? 最近あの人情緒不安定だし」


 「関係ないって」


 「ゼウスに匹敵する強さ持ってるんだよ?」


 「ゼウス? 指先一つでダウンさ」



 私が自信満々に言ったため、ヘカテーはそんな私を見て安心したように言う。



 「……じゃあ勝てるわ」


 「……えーとさ、おさらいみたいなこと言うんだけどさ、ハデスが6億8000万年くらい前にやらかしたから、連帯責任で今でも神謀りに参加できないんだよね……?」


 「まあ、そうだね……」



 いいこと思いついちゃった。



 「……次、乱入してみようか」


 「……はぁ!?」


 「待てテメェ!!」



 私の発言に驚くヘカテーと、普通に暴挙を止めようとするゼフュロス。私も流石に暴挙だってことはわかるけど、流石にそんなに引きずるのはおかしいと思う。だからやる。それだけじゃァ!!



 「お前何しようとし……」


 「黙れ。殺すぞ」



 私はゼフュロスの発言を遮りながらミストルテインの魔法陣をゼフュロスの目の前に展開し、いつでも殺せる状態にした。ゼフュロスは私のやばさを改めて認識し、次の質問に答えた。



 「で、次の神謀りっていつ?」


 「明後日だ」


 「わかった、ありがと」



 私は立ち上がると共に、ゼフュロスに言い忘れていたことがあったのでしっかりと伝える。



 「今のこと、誰にも言うなよ?」


 「わかったわかった」



 ゼフュロスがその場から消えると、私とヘカテーは神界への門(ゴッドフィールド)を開き、神界の中にある冥界、その中でもハデスのいる場所の座標に合わせて向かった。ちなみにその座標はヘカテーにしっかり教えてもらった。



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