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狂気の使徒  作者: ひょうすい
1章 学園襲撃編
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20人目 時間の神


 魔法を管理しているのは神である。といっても一人で管理しているわけではなく、魔法を司る神達でそれぞれ役職を決め、協力して管理している。これは他のものでも同じであり、「いつ雨を降らせるか」「いつ災害を起こすか」なども全て神達による慎重な協議により決められている。ちなみに、ヘカテーは魔法を管理する神であり、その中でも1番上の「魔法部門(まほうぶもん)全管理(ぜんかんり)最高責任者(さいこうせきにんしゃ)(けん)全運用(ぜんうんよう)最高責任者(さいこうせきにんしゃ)(けん)特例授与者(とくれいじゅよしゃ)」という役職に就いている。



――――――――――――――――――――――――



 爆発の音を聞いた私はすぐに究極火力(レベル5)の探知魔法を使う。すると、爆発よりもっとやばい事になっていることに気づいた。明らかに何かを隠すように使用されている風属性透化系魔法。究極火力(レベル5)でその正体がわかるということは、少なくとも極火力(レベル4)以下の火力ということになる。……待て待て。こんな冷静に状況分析してる場合じゃない。



 「ハイジュ。一旦外見てみ」


 「外?」



 私とハイジュが窓から顔を出した瞬間、アグロス上空1kmに超巨大隕石が突如として現れた。いきなり辺りが真っ暗になったことで、生徒達は皆パニックになっていた。「今って昼だよな?」「まだ朝だろ」など、まだ夜にはなっていないことは周知の事実ではあったが、それでも疑ってしまう。上空からの光が全く届かない。まさに日食のようだった。ハイジュの視線にはいきなり現れた隕石で埋め尽くされる。



 「……え?」



 言葉が出ない。唯一出た言葉ですら、状況を理解できずに出た困惑の一言。困惑と共に、ハイジュの中には突如として絶望が現れる。



 「これ、死んだやつ……?」


 「うん。死んだやつだね」



 こんな所で死ねるわけがない。私は死なないかもしれないけど、恐らくこれはゴーンですら死ぬ。そのレベルの魔法を使っている。それに、この大きさの隕石なら、アグロスを滅ぼせるだろう。



 「ま、私がいなかったらだけど」


 『時間停止』



 パチンッ!



――――――――――――――――――――――――


――――――――――――――――――――――――


――――――――――――――――――――――――



 だから私は、指パッチンをした。



 「時間には関与するなと言ったよな?」


 「まあ、私が死なないにしてもこのままじゃあ相当な被害が出る」


 「この態度では……、俺がどれだけ忠告しても無駄か」


 「止めたら殺されるってわかってるもんね」



 目の前にいるのはクロノス。ギリシャ神話に出てくる時の流れを司る神。所謂、時の管理者。もうちょっとわかりやすく言うと、タイムキーパーである。

 クロノスは前に「時間を操作するのはくれぐれもやめてくれ。めんどくさいから」と忠告を受けていた。だが今は仕方のない状況下にある。そのため、時間をいじるしかなかった。



 「にしてもだ、今のは時間をいじらなくても良かっただろう。瞬間移動なりなんなりできただろう」


 「あんな人前でできるか。疑われて終わりよ」



 あんな人混みの中で瞬間移動なんてすれば一環の終わり。わざわざ神の使者を隠して学園に入っている意味がない。



 「それでさ、これ使ったら魔力使うじゃん。現に今使ったばっかだし」


 「何が言いたい?」


 「魔力切れを起こしたらこれが使えなくなるということ」


 「……お前まさか」



 クロノスは何かを察する。そのまさかですよ。クロノスさん。



 「神術ちょーだい」



 私が軽く告げると、告げた先には頭を抱えたクロノスがいた。しばらく頭を抱えて無言を貫くと、びっくりするほど深いため息をついて返答する。



 「バカかお前。神術なしでも時間止めれるんだからわざわざ渡す意味ねぇだろうが」


 「魔法が封じられたらどうすんのよ。どうにもならない時のための私なんじゃないの? 私が死んだらどうすんの?」


 「その時は潔く死ね」


 「うーわ酷っ」



 クロノスが言っていることはある種合っている。私が死ねば神達にとって大きなプレッシャーがなくなる。それによってもうちょい自由にできるという面もあるのだろう。



 「それが自然の摂理というものだ。それに、お前が死ねば俺達神はとても気楽になる」



 思ったことをそのまま言うやつだなぁ。クロノスがそう言うのであれば、私にも言い分はある。



 「にしてもよ、神にとって大きなカードである私を失えば、神は二度と現実世界に関与できないかもしれないよ? そういう面では大変になるんじゃない? ゼウス達は私を探すのにとても苦労したらしいし。その状況を一番傍で見てたのはクロノス、あんたなんじゃないの?」


 「そ、そうか……」


 「それに、従わなかったら神を殺す術(ミストルテイン)ぶっ放すけどいいの?」



 私には神特攻の「禁止級相当特別魔法」の神を殺す術(ミストルテイン)がある。これを喰らえばたとえ神でさえ塵と化す。実際に、何年か前に実験で神の肉体と同等なものを実験台にして実験した時、実験台は見事に塵と化している。



 「どうする?」



 神に対する最大級の脅しをかける。静寂。静寂。更に静寂。時が止まったようにクロノスは無言で悩み続ける。時間は本当に止まっているからどれだけ待っても時間が進むことはない。だが、待つのは嫌いだ。静かに神を殺す術(ミストルテイン)の魔法陣を展開し、ゆっくりとクロノスに照準を合わせる。



 「……渡せばいいんだろ? 渡せば!」



 キレ気味に言うクロノスだが、私が求めているのはその答えだけ。神術を私に渡したクロノスは、再び頭を抱える。



 「時を戻すならとっとと戻せ」


 「はいはい。わかりましたよ」



 これ以上時を止めているとクロノスの精神がどんどん壊れていくのが目にわかるため、とっとと魔法を使うことにした。……何故貰った神術ではなく、わざわざ魔法で操作するのか? 魔法で最初操作してしまったからだよ。



 『時間遡行』



――――――――――――――――――――――――


――――――――――――――――――――――――


――――――――――――――――――――――――



 時間遡行を使って2分前まで時を戻した。私が戻したのはただただ時間のみ。そのため、私達の場所も30秒前に戻るということ。そして、自分以外の全員の記憶が30秒前まで戻る。解釈を変えてみれば、過去視点の私からは「未来の出来事を、自分視点で全て知ることができる魔法」と捉えることができ、未来視点から見れば「任意の時間へ遡行することができる魔法」と捉えることができる。

 2分前に戻ると、ちょうど私が話し終えたくらいのタイミングだった。



 「……やばすぎない?」



 ハイジュは私のおかしな経歴を聞いて困惑している。この後の言うことは大体覚えてるし、ハイジュの心情もだいたい察していると自負している。だから、私は隕石の処理を優先した。



 「今すぐ教室の外に出て」


 「……え?」



 ハイジュからすると、私が唐突に真剣な表情で指示したということになっているだろう。けど今、そんなことに気を取られている場合じゃない。

 ハイジュの手を取って教室を出ると、人がいなさそうな場所に着いた。そこで私はハイジュの手を更に引っ張って体をくっつけると、魔法を発動させる。



 『暗雲貫くは(ゲルストローグ)()更なる黒なり。(ダークネス)



 展開魔法の魔力隠蔽を使いながら『暗雲貫くは(ゲルストローグ)()更なる黒なり。(ダークネス)』を使い、一瞬で立ち入り禁止の屋上に移動した。



 「えっ……? 屋上?」


 「上、見てて」



 ハイジュは上を向く。何があるのかとハイジュは疑問に思うが、まさか今から隕石が現れるとは思わないだろう。

 私は隠されている超巨大隕石に人差し指を伸ばし、魔力を込める。魔力は魔法陣を介して赤くなり、紅蓮の炎が魔法陣の周りに現れる。私が今から放とうとしているのは、火属性爆発系最大火力(レベル7)魔法の『無論、それは神の(サボタージュ・)如く現れた超新星。(スーパーノヴァ)』だ。



 (無詠唱で……?)



 『無論、それは神の(サボタージュ・)如く現れた超新星。(スーパーノヴァ)』とは、火属性爆発系最大火力(レベル7)魔法であり、音速を超える速度で射出される爆発の種が目標に着弾した瞬間、どんなものでも爆炎が飲み込んで消滅させる魔法である。爆発の余波が大きすぎて、地上で発動すれば国が3つ滅ぶと言われている。

 指先から放たれた『無論、それは神の(サボタージュ・)如く現れた超新星。(スーパーノヴァ)』は、瞬く間に隠れている超巨大隕石にぶつかり、上空3km地点で爆発を起こした。……ん? 爆発が予想よりでかい。



 「魔力込めすぎたかも……」


 「え、それってまずくない……?」



 『空間支配』



 そう。とてもまずかった。とてもまずいでは済まされないレベルの被害を、学園は被ることになるだろう。今現在、爆発によって発生した衝撃波は爆心地から半径30kmにいた生物を全て圧死させ、学園のガラスは全て割れ、全ての校舎に深いヒビが大量に入っていた。幸い、私とハイジュは空間支配で周囲の原子の結合部を限界まで強化していたため、原子が壁になって衝撃波の影響を受けなかった。

 他の校舎が見えていたハイジュは、その光景を見て絶句する。



 「確かさ、学園の全ての校舎には防御壁三重層(シールド・トリプル)が外壁についてたよね?」


 「うん、合ってる。これに関しては私が悪いわ」



 本来、無強化の防御壁三重層(シールド・トリプル)ですら究極火力(レベル5)程度なら余裕で受け止められる防御力を持つレベルの優れもので、学園に使われているのは1枚あたり30人の魔力を集約させたものであり、それが無数に使われているのである。それを全て破壊した上で、更に学園の校舎に深いヒビを大量に入れた。これが最大火力(レベル7)の底力である。



 「まあ、この混乱に乗じて行動しよう」


 「え? あ、うん。」



 ハイジュはよくわかっていないだろうが、いづれこの状況がどんな状況かわかる。



――――――――――――――――――――――――



 ここがどこかはわからない。だが、完全な真っ暗な空間であるということは分かる。光の届かぬ完全な闇。漆黒の空間。そんな如何にもな場所で、二人の男が話していた。



 「隕石の反応が消滅しました。恐らく破壊されたのかと……」


 「わかった。だが、こっちからの介入はできない。暗躍も一切許さない。もし国際問題になってみろ。あの方に会わせる顔がない」


 「たかが1人殺すだけでそんなに問題、起こしたくないですしね」


 「……まあ、俺達の存在がアグロスに探られることはないだろう」


 「そうですね。では、直ちに撤退させます」


 


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