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狂気の使徒  作者: ひょうすい
1章 学園襲撃編
19/20

19人目 過去に行った残虐行為の数々



 カヤラム王国。ヨルエアス大陸に存在するディスカンド山脈内に存在する地底国家。国民の9割は魔神族であり、王族ももちろん魔神族。首都は中央都市デザスト。王族はもちろんデザストに住んでおり、一極集中している。だが、郊外はそこまで発展している様子はなく、地域格差が深刻な国でもある。



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 「絶対に奴らはこの手で殺す。……だからそのために、更に強くなろうとこの学園に入ったの」


 「な、なるほど……」



 5分くらいでハイジュは話してくれた。徐々に暗く、低く、憎しみが籠った声で話す。感情が籠ったが故に、瞳からは静かに雫が零れる。だが、決して顔は暗くはしない。彼女なりの信念だろうか。

 そんな重たそうな話を軽く聞いていた私は、共感をしようとしない。同感なんて以ての外。なんせ家族は私が殺したからね。だから、決して心情に寄り添うことはしない。他人の感情には自分から決して関与しない。前世から続けている、私の主義である。

 じゃあ、「完全にほったらかしにするのか?」と聞かれると話はまた別。私の利益に関するものであれば積極的に関与するし、お情けで関与することもある。結果として他人の心情に関与することになるかもしれないが、他人の心情を軸に行動はしない。例えそれが神の意向であろうとも、敵対組織の目的であろうとも。

 今回、ハイジュが話してくれたことが、何故かはわからないが、大きなことになりそうな気がする。女の勘というやつだ。もし関わらなければ、大きなことに気づけないまま戦いに身を投じることになるかもしれない。そして何よりも、カヤラム王国という国。見るからに深い闇がある。ハイジュへのお情けとはなしに、これはいずれ解決しなければならない問題である。



 「じゃあさ、そいつ殺すの手伝おうか?」



 1人で殺したいだろう。家族を殺されたのはハイジュ。家族の仇くらい自分で討ちたい。けど、今のハイジュにその選択はできない。私はわかる。ハイジュは確実に、私の手を取る。



 「い、いの……?」



 ハイジュは心の底にある弱さを話す。それによって心には大きな隙が生まれる。大きな隙にちょちょいと手を入れてあげるだけで、人というものは簡単に動く。人というものは単純である。人というものは等しく弱い生き物である。



 「けど、軍部には相当強い奴らがわんさかいる。それらはどうするつもりなの……?」



 私にそんなこと聞くかね。わんさか強いといっても、結局雑魚は雑魚。カヤラム王国のレベルがどのくらいなのかは知らないが、進化を続ける私の前で通用する相手はそうそういない。一国家の兵隊くらい、どうってことはない。舐められちゃ困る。



 「普通に正面突破」



 すると、ハイジュは少しの間下を向いて黙り込む。まあ、何かしら考えているのだろう。聞きはしないが、恐らく私に兵隊を一掃できるほどの力があるのか疑っているのだろう。まあ、会って2日目とかだしそうなってもおかしくはないよね。

 ハイジュは私の顔を見て、何か吹っ切れたように言う。



 「……リーレの言葉、信じるよ。嘘ついてない気がする」



 ハイジュはそのまま腕を伸ばして、私の左肩を2回叩く。少し狂気じみた顔で、まだ何も察してない私の顔を見る。



 「じゃ、次リーレの過去、教えてくれる?」



 まあ、いいか。



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 1938年9月1日、宮城県仙台市のある病院で生まれる。その時既に日中戦争は勃発しており、完全に日本軍のペースで中華統一戦線を圧倒していた。

 ハワイ真珠湾攻撃を行ったことによって太平洋戦争が始まった1941年12月9日、私は日本中の混乱に乗じて、虫や動物を殺していたため、興味を持って1番身近な家族を殺す。その後すぐに軍用飛行機に潜み、混沌を極めていたヨーロッパへ向かった。そのヨーロッパに向かった際に、日本人だと一目見て悟られないように、3歳ながら髪の毛の色を抜いて真っ白にした。

 ドイツに着くと、早速勝利に貢献しそうな軍人を片っ端から暗殺し回った。国境を越えた数、人を殺した数はもう数えていない。それほどの人を殺した結果、戦争が予想より早く終結した。また、その頃から、「ジャック・ザ・リッパーの再来」と呼ばれるようになった。

 戦争が集結した後も、私は裏社会に潜む犯罪者達を軒並み殺し回った。武器を斡旋するマフィアをはじめとした、極道やらヤクザやら、挙句の果てには政治家や一般市民に扮している者までも躊躇なく殺した。殺した数自体は戦争中よりは減ったが、それでも殺した数は数えしれない。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 転生前のことを話すのは、流石にリスクが高い。もし同郷の奴らがいるのだとしたら、そいつらにしか明かさない方が……、それもやめておこう。とりあえず、転生前のことを話す時は曖昧にしよう。そうしよう。



 「私はね、幾千万もの悪人を殺したの」


 「……ん??」



 まあ、開口一番に「幾千万もの悪人を殺した」とか言われたらそうなるわな。ハイジュの頭の上には、今にも「?」が出てきそうな顔をして驚いている。もう出てるんじゃないかな。



 「えーとさ、スターベンってことはさ、神殺しの研究をしてる一家なんだよね?」


 「まあ、そうだね」



 すると、ハイジュは余計頭の上の「?」が増えそうな勢いで困る。まだ増やしたいのか、ハイジュは私に質問する。



 「それなのに、……悪人を裁いてたの?」


 「裁くって……。その時の私はただ殺すのが好きだったから殺してただけ」


 「……」



 ハイジュの頭の上には「?」が5つくらい出ているだろう。そのレベルでの困り顔を私に見せている。それと同時に自衛しようとしていた。流石に攻撃しないと、制止するように手のひらをハイジュに見せる。



 「スターベン一家ってさ、昔に領地が丸ごと消失したんだよね。それに生存者がゼロで全員死亡扱い。っていうのが皆が知ってる事実」


 「ま、まあ……。それがどうしたの……?」


 「それ、完全に嘘なのよ」



 まず、全員が知っているスターベン領地消失事件はこうだ。



 『スターベン領地消失事件とは、スターベン領地が魔素の暴走で自然発火した事件。発火した炎は一瞬にして爆炎に姿を変え、爆炎によって領地中の人は即死した。魔獣も死滅したのだが、爆炎の火力が強すぎたがため、骨すらも溶けて消えていた。スターベン一家も例外ではなく、家も丸ごとなくなっていた。それによってスターベン一家は全員死亡したと断定された』



 それによって私も死亡扱いされていた。だがまあ、魔素の暴走を引き起こしたのはもちろん私であり、証拠隠滅のためスターベン領地の人達には犠牲になってもらった。私が使った証拠を消すために魔素を集めて使ったため、魔素の暴走が原因と決まったのだろう。



 「私が悪人である家族を殺して、証拠隠滅のために、口封じのために領地を丸ごと魔素を使って吹き飛ばした。まあ、魔獣まで殺したのは趣味だけど」


 「あ……、口封じ……」



 ハイジュはこの話を聞いて尚、私に引かず話を聞いてくれる。どうやら私を頼るのは本気みたいだ。



 「じゃ、続き聞かせてよ」


 「わかった」



 私は口元に手を当てて1度咳払いをし、猛スピードで話し始めた。



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 「ノーツで暴れ回ってる奴らを皆殺しにした」



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 「複数の犯罪組織を壊滅して、その上で構成員達の内臓を全て組織の正面玄関に飾った」



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 「大通りにいる人達を口封じがてら鏖殺した」



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 「ひとつの街に住んでいる人達を殲滅した」



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 「高層ビルを丸ごと破壊して、そこにいる人達を殺し尽くした」



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 「隔てられてる壁を1度破壊して、それに気を取られている悪人達を皆殺しにした」



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 「合計1000万人以上の人を殺した」



 時間が許す限り話した。前世のものも含んではいるが、そこは曖昧にして話しているため問題はない。まあ、目の前のハイジュの顔を見ればそんな心配をする必要はないだろう。ハイジュは今、開いた口が塞がっていないからだ。



 「……やばすぎない?」



 こういうリアクションになるのは大体予想がついた。だが、ハイジュは困りながらも簡単に言う。



 「けど、そんなリーレだから私は信じるよ」


 「……え? なんで?」



 その思考にたどり着いた頭の構造を疑いたくなるけど、その方が私にとっても動きやすいし……。いっか。



 「実行力があるってことでしょ?」


 (随分ポジティブなんだなぁ……)



 その瞬間、連鎖的な爆発が学園を取り囲むように発生した。唐突な爆発音に驚いた生徒達は混乱し、廊下を行ったり来たりしていた。悲鳴を上げる者がいたり、勝手に判断して逃げ出す者もいた。



 「爆発かな……?」



 ハイジュは冷静だった。かく言う私も冷静だが、クラスの他の生徒は皆パニック状態になっている。この状態をどうにか治めるのは無理か……。まあ、テロの1種くらい、ゴーンがどうにかしてくれるでしょ。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 「我々は地の底から這い上がってきた!!」


 「我々は人間族に鉄槌を下す種族だ!!」


 「我々は誇りを持って戦う地底界の種族!!」


 「我々は吸血族(ヴァンパイア)である!!」



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