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狂気の使徒  作者: ひょうすい
序章 狂気の使徒
13/24

13人目 入学初日 その1



 国立アグロス魔法魔剣一貫学園。アグロス王国の王都ミレアスに存在する、「魔法科」と「魔剣科」、そしてその2つの学科を同時に学ぶ「魔法魔剣総合科」が同時に存在する魔界唯一の学園。リーレの元いた場所では私立高校と国立高校の良いとこ取りのような存在である。とてつもない金額を使えば入学試験を行わずに入学することができるが、基本は一般入学と言い、入学試験を受けて入学する。そして推薦入学という選択肢もあり、国が認めた一定の人数は入学試験を受けずに入学することができる。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 私は今、試験の結果が貼り出されている中央庭園にいる。そこには大量の親連れの受験生が喜んだり悲しんだりしており、その視線の先は貼り出されている受験番号。受験番号がある受験生は喜び、ない受験生は悲しみのあまり泣いたりしている。



 (586番……。あ、あった)



 番号があったからって特に喜びはしない。受かるべくして受かった入試だったから。かといって落ちた人を馬鹿にしたりするわけではない。「来年また挑戦すればいい」その一言に尽きる。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 4月6日、入学式の日が来た。私は今、学園の正門前にいるのだが、私の横を新品の制服を着た新入生が通っていく。その顔はだいたいが希望に満ち溢れたようなワクワクとした顔で、「華々しい学園生活がこれから始まるんだ!!」みたいなことを心の中に思っているんだろう。……だが!! 私はそんなこと一切思わない!! だってあのゼウス達(クソジジイ共)の依頼だからね!!

 心の中で愚痴を呟いていると、1人の女の子が近づいてきた。その女の子の方を一瞬見ると、どこかで見覚えがある顔だった。銀髪ロングヘアーで銀の瞳を持っており、スタイル抜群で私より少し背が高い女の子。……実技試験で見た子じゃない? 全ての特徴が合致していた。違うのはせいぜい服装くらい。よく見ると歩き方ひとつひとつがとても綺麗であり、育ちがいいんだろうなっていうのが一目見ただけでわかる。



 (……明らかに話しかけようとしてきてるよね?)



 明らかに私を見て口を開けようとしている。待って待って待って。ただ制服着てるだけだよ? そんな上品そうに話しかけられるのだけは勘弁だよ?



 「ねぇ、そこの真っ白の子」



 真っ白の子が周りにいないことを何回も確認する。結構顔を色んな方向に向けたりして、過分な程に確認する。話しかけてくんなよ!!



 「……私?」


 「あなたしかいないよ。真っ白の子」



 ですよね……。せめて無心であろう。



 「何か用?」



 すると、その子は私に近づいて小声で話し始めた。



 「実技試験の時、出鱈目な火力で包む光は今(ライトファクト)()命の閃光となる。(ミカレヴィーテ)を放った子だよね?」



 この子の気遣いなのだろう。私にとってもこの気遣いはとてもありがたい。この子の善意もあるし、素直に答えるしかないか……。



 「まあ……、そうだけど……」


 「良かった……。やっと見つけた……」



 どうやら私を探していたらしい。恐らく実技試験で私の姿をじっくりと見ていたのだろう。こんな真っ白な髪と肌をしたアルビノもどきなんて、この辺全然いないからなぁ。



 「私はエアス・ハイジュ。知ってると思うけど受験ルートから入学したよ。あなたはなんて言うの?」



 ここまで来たら答えるしかないか……。この子とは信頼関係を築いておいた方がいいかもしれない。現時点でとはいえあの魔力の精度を誇るのなら見込みはある。……いいじゃん。



 「リーレ・スターベン。これからよろしく」


 「……よろしく!!」



 なんか威勢がいいぞ?



 「ま、まあ……。もしかしたらクラスが別になるかもしれないからさ、クラス確認だけしに行く?」


 「確かに。その可能性があるのか……」



 ハイジュは純粋な喜びの眼差しを私に向けたが、クラスが別になって離れ離れになってしまう可能性も存在する。その可能性をハイジュに伝えると、人が変わったように考えるような仕草をとった。……そんなに私と面識を持ちたかったのかよ!?

 何はともあれ、クラス分け表が貼り出されている正面玄関に入る。するとそこには大量の新入生の名前が書かれた紙が貼り出されていた。私とハイジュは「魔法魔剣総合科」という1番難しい学科を受験し入学することができた。魔法魔剣総合科は16クラスと多く、1クラスの人数が40人となっているため1学年で640人もいる計算となる。AからPまでのクラスのうち、私はDクラスに配属されることになった。



 「私は……、Dクラスね」


 「えーと、私は……。私もDクラスだよ」



 同じクラスになることができたため、わかった瞬間にハイジュは横で喜んでいた。



 「私……、このクラスの首席なんだ」



 クラス分け表は出席番号順で並べられているわけではなく、上からクラス内の入試成績順に並べられている。ハイジュはDクラスの中で1番上に名前があり、その下に私の名前があった。つまり、私はこのクラス内で次席ということになる。



 (おかしい……)



 次席というのは本来おかしい場所である。入試の結果をそこそこの点数で抑えたはずの私がこの位置ということは、今回の受験者は出来が悪いということ……? 過去の統計では50人くらいは900点を超える点数を出していたはずだ。最低でも3番目となると踏んでいたため、予想を外して少し悔しかった。そんな私の悔しさは周りに見せることなく無を貫いたが、ハイジュは私の結果を見ると良い結果だという風に受け取った。



 「何点くらいとったの?」



 興味津々に聞いてくる。正直、何点なのかは曖昧なくらいにしか覚えていない。筆記試験の点数も魔力適性試験の点数も、実技試験の点数もざっくりとした程度だ。だが、全ての合計点はなんとか覚えていた。そのため、合計点だけ答えることにした。



 「861点とか?」



 全教科の合計点の満点は1000点であり、861点と聞くと高そうに見える。だが所詮問題のレベルが初歩レベル。「キホンのキ」の段階にも踏んでいない位には初歩である。普通にテストを受ければ、ケアレスミスなどを加味しても980点は取れたはずである。



 「高い……」



 私より高いくせに何言ってんだこの人は。じゃあいったい何点くらい取ったんだ?



 「じゃあさ、何点取ったの?」


 「1000点」


 「満点じゃねぇか」



 その調子で私達はDクラスの教室へ向かった。向かっている最中にたくさんの新入生の姿が見えたが、大概が1人で歩いている。まあ、友達はこれから作るから1人なのも仕方がないかとは思う。……そう考えたら私達は結構異常なのか?

 教室の扉に手をかける。すると、その瞬間に扉の向こうから怒鳴り声が聞こえてきた。え? もう喧嘩? 流石に治安悪くない?



 (ま、関係ないか)



 怒鳴り声なんて気にせずに扉を開け、Dクラスの教室に入る。予想は当たっており、男子生徒同士で揉め事を起こしていた。揉め事の話の内容的に、一方が過去の出来事をいじりすぎたのだろう。地雷を踏んだことは可哀想だとは思うが、その揉め事に私は関係ない。止める必要性もないためそのまま無視して指定された席に向かう。



 「ねぇ、リーレ」



 ハイジュは私を小声で呼ぶ。怒鳴り声のせいで聞こえづらいだけだろうか。とりあえず相対的に声が小さいため、耳を傾けて聞く。



 「ん?」


 「これってさ、どうすればいいのかな……?」



 これ。恐らく揉め事のことだろう。「絶対に関わらないこと。そしてそのまま自分の席に着席すること」一番最初に出てきたことがこれだが、ハイジュの目は何故か正義感に燃えていた。少々面倒だが、教えてあげよう……。



 「ハイジュ。もし世間一般的な正義を貫くのだとしたら、あの揉め事は止めない方がいい」


 「……え? なんで?」



 止める気だったのかよ。ハイジュは私がこう言っている理由がわからずにいた。恐らくハイジュの中での正義は「あの揉め事は割り込んで止めるべき」となっているのだろうが、それはただの理想論でしかない。自分がこうしたいってだけのエゴに過ぎない。本当の正義の姿は「物事を穏便に済ませ、本来あるべき姿へ誘うこと」である。



 「本当の正義は『本来あるべき姿へ迅速に戻すこと』なの。その本来あるべき姿がもう訪れるはずだよ」



 そう言いながら私は席に座る。教室左端の1番前がハイジュの席であり、その後ろの席が私の席である。廊下から1番遠い列の席であり、横には壁があるため椅子の背もたれと合わせて2つ背もたれがある状態となっている。



 「それっていったい……」



 ハイジュが私の前の席に座ると、2秒程後にチャイムが鳴った。その瞬間に教室の扉が勢いよく開く。バンッと叩きつけるような音は教室にいた全新入生の注目を集める。その注目の主は250cm程の長身で筋骨隆々とした肉体、茶髪短髪で水色の瞳を持つ大男だった。見るからに強そうな見た目をしているため、揉め事をしていた男子生徒達も黙り込んでただ大男を見ることしかできない。



 「お前ら、落第になる気はあるか?」



 大男はゆっくりと威圧を放ち、男子生徒達は段々と怯んでいき自分の席に向かって歩き出す。ハイジュは大男をしばらく見た後に私を見て、驚いたような顔をして次は本当の小声で話す。



 「……わかってたの?」


 「だいたいわかるよ。あの大男の正体もわかる」



 事前にこの学園から色々情報を盗んでいた私は、あの大男が誰なのかだいたい把握していた。自分のクラスはせめてもの楽しみのため確認しなかったが、それ以外のことはもう既にだいたいわかっている。



 「Dクラスの担任、ゴーン・ムナメスだ」



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