12人目 アグロス魔法魔剣一貫学園一般入学試験
大気中にある魔力を「魔素」と呼び、それ以外の全ての魔力を「魔力」と呼ぶ。魔力は火、水、木、光、闇、風、特の7つの属性に分かれており、それらを応用魔法の魔法式に組み込むことで応用魔法を使うことができる。
魔法とは、魔力を魔法とされる魔法式の通りに魔力を配置すると放出されるものであり、主に基礎魔法、応用魔法、展開魔法の3つで構成されている。
基礎魔法として分類されているのは「身体強化」「防御」「回復」の3つであり、1番簡単な魔法式で構成されている。それぞれの基礎魔法が3段階あり、込めた魔力量と段階によって効果の度合いが決まる。基礎魔法が使えなかったら応用魔法も、展開魔法も使用することはできない。
応用魔法は生命であれば誰しもが持っている「適正属性」を行使して発動させる魔法。各属性には3種類の効果を持つ魔法が振り分けられている(闇属性は4種類)。また、2つ以上の属性を混ぜて作る複合魔法が存在する。そして、全ての属性は7段階の火力に分かれており、最弱火力、通常火力、強火力、極火力、究極火力、激極火力、最大火力となっている。火力が上がっていく事に複雑な魔法式となり、消費魔力量も多くなっていく。
展開魔法は所謂無属性魔法と呼ばれる魔法であり、応用魔法にはない特殊な効果を持つ魔法を操ることができる。習得自体は誰でも可能であるが、複雑な魔法式が多く、更に応用魔法と同じく7段階の火力が存在する。
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試験会場となる教室に入ると、そこには既に大量の受験者で席が埋めつくされていた。そんな中で目立つ前の方の空席、恐らくそこが私の席だろう。教室の中を歩いていくと、各々が必死に試験範囲となる部分を参考書や自作のノートなどにまとめて読み込んでいる。私も一応着席し、試験を受ける体制に入ると周りの雰囲気に合わせて勉強をしようとした。
(ない……)
カモフラージュとなる勉強道具を虚無の世界に置いてきてしまった。虚無の世界への扉を小さく開いて取ることもできるが、あくまでここは魔法を教えることに特化した学園、魔法を使ったカンニング対策なども万全であろう。虚無の世界への扉も一応は全知全能から発想を得て魔法創造を使って作った魔法に過ぎない。だから虚無の世界から取り出すのは愚策。
静寂の中、紙をめくる音が一定の間隔で聞こえてくる。その中、私は依頼内容について振り返っていた。
まず、初代勇者の子孫と魔王の子孫がこの学園で試験を受けているのかと聞かれると、そうではない。この学園はどうやら、一般入学と推薦入学の2通りの入学方法があるらしい。推薦入学枠は1000人と今年の受け入れ人数が約4000人となっているため1/4しかなく少ない。更に大量の金を払えば誰でも入学できたりと、入学基準はかなり緩い。その中でも2人は肩書きからして推薦入学なのだろう。何せ、肩書きが初代勇者の子孫と魔王の子孫とかいう頭おかしいものだし。そして、入学した後にもかなり障壁がある。前提として、2人とは同じクラスになってはいけない。同じクラスなのであれば接点が多く、殺すタイミングが異様に多くなるからだ。仮に殺した場合、殺すタイミングが多いクラスの人間が狙われるのは必然。それはなんとしてでも避けたい。更にゼウスは「今年からこの学園の大型依頼の件数が増加する」って言ってた。だから長期間入っておく必要がある。
試験担当の先生が教室に入ってくる。その先生は白髪ショートヘアーの黄緑色の瞳を持った私とそれほど背が変わらないほどの身長をした女性だった。
(どっかで見たような……)
見覚えがあった。あと1歩まで出てくるが思い出せない。試験担当の先生は教卓にテストの問題用紙を置くと、受験者に配り始める。私の目の前に来た瞬間、試験担当の先生が纏っている魔力が伝わってきた。
(背中、特に肩甲骨に魔力を集中させている……。天使が生命界に降りてきた時に行うことだけど……)
試験担当の先生は開始の合図を出して試験を始める。問題文を見ると、魔法の基礎についての話だった。問題としては、「魔力とはどんなもの?」「基礎魔法と分類されている3種類の要素とは?」「魔力の7属性とは?」「魔力と魔素の違いは?」みたいな問題が100問くらい続く一問一答形式だった。解ける人はじゃんじゃん解いていき、解けない人は頭を抱えて悩んでいるといった感じになっている。
1時間が経って1科目が終わった。10分の休憩を挟むとすぐに次の科目の試験が始まった。それがもう1度続き、筆記試験はこれで終わりとなった。どうやら今から魔力適性試験に入るようだ。魔力適性試験内容はとても簡単で、教卓に置かれた魔力適性を測る水晶に魔力を注ぎ込むだけ。
自分の番が近づいてきた。前の方を覗いて見てみると、読み取るのは魔力総量、適正属性の2つ。学園の門前で調べた平均値は1000であり、恐らく周りの受験者達も全員1000前後だろう。水晶は正確に魔力の情報を抜き出し、全員に見える形で表示する。だから私は、水晶に映し出される情報を改竄することにした。
(測定不能とか出されたら困るし、全能属性とか出されたらもっと困るし。混乱されたらこっちの方が困るし)
神達は全能の人間を作ろうとして私を作ったんだろう。まあ、そうしないと「呼び出しておいて何様なんだ」って怒るけど。とりあえず水晶の情報を改竄した状態で水晶に魔力を注ぎ込んだ。すると、映し出されたのは「魔力総量:1600 適正属性:光、闇」の文字。まあ、こんなものでしょう。
続いて実技試験。魔法で的の中心に当てるといった内容で、正確性を試す試験なのだろう。私は最初、適当に火属性魔法でも使っておこうと思った。だが、そんな私の気力を高めてくれる存在を見つけた。
『包む炎は今、命の灯火となる。』
『包む炎は今、命の灯火となる。』は火属性発生系共通火力魔法であり、込めた魔力量によって弾速、威力、大きさを自由自在に決めることができる魔法である。魔力で火炎弾を作っているようなものである。
音速に達する速度で放った弾は、見事的の中心に当たって貫通した。そこまでの弾速と威力を見ては私も黙ってはいられない。あくまで常識の範囲内だけど。弾を放った受験者は銀髪ロングヘアーの銀の瞳を持つ女の子だった。スタイルは抜群であり、身長は私より少し高いくらいだろう。
『包む光は今、命の閃光となる。』
『包む光は今、命の閃光となる。』は、光属性発生系共通火力魔法であり、込めた魔力量によって弾速、威力、大きさを自由自在に決めることができる魔法である。魔力で閃光(物体)弾を作っているようなものである。
私もそれなりの魔力を込めて放った。気合を入れて放ったため、弾速は光速に達し的も貫通した。だが、それでは外壁どころか街が完全に消し飛ぶため、的に当たった瞬間に上へ大きく逸らした。すぐに弾を消した私だったが、的は私が打った弾がどれほどだったのかを物的証拠として残してくれる。その状態での最善手は1つのみ。
(注目される前に逃げるッ!!)
幸い実技試験が終わり次第帰っても良かったため、校門を出た瞬間に虚無の世界への扉を開いて虚無の世界へと帰還した。
「……危なっ」
結果発表は丁度1週間後、それまで私は依頼の内容を着実に進めながら気長に待つことにした。