8話 奴隷の扱い方
【奴隷制度】とは...
クレイオの属する国「コーラル国」
ここでは奴隷制度というものがあり、
奴隷の主人には奴隷の所有権が渡され、奴隷を奴隷として扱うことができる
奴隷に分類されたものは人権がなく、ただ主人に従うことを余儀なくされる
奴隷は奴隷商会から買うことができ
その値段は奴隷商会にもよるが10万Mから1億Mとピンキリである
唯一の奴隷の逃げ道として所有権の奪取がある
所有権は書類として管理されるため、それを処分すればおのずとして奴隷としての身分はなくなる
「――クレイオ、今までありがとう
お前がいたから私は変わることができた」
目の前には俺の師匠がいる
周りの憲兵に腕をつかまれている
「待ってくれ師匠!
きっと話せばわかってくれるはずだ!」
「ああ、だから話してくるさ
ここじゃない、上に直接な」
言葉が出なかった
師匠は覚悟を決めた目で俺を見ていた
この時、どんな言葉を伝えたら止めることができただろうか
「……師匠、必ずまた会いましょう」
俺が師匠に使った最初で最後の敬語だった
師匠は悲しい目でこちらを見て
そして憲兵に連れていかれた
師匠の実験室に残された俺はただ立ちつくしかなかった
――夢が覚めた
起きると宿屋の天井が見える
師匠は今どうしているんだろうか
無事なら良いのだが
「……顔洗ってくるか」
顔を洗い冴えない自分の顔を見つめる
俺にはやることがあるんだ
もっと引き締めなきゃな
窓のカーテンを開け、朝の空気を存分に味わう
「うおっし!
今日から『5枚の翼』の調査を本格的にやっていくぞ!」
気合の入った声を出すと下から声が聞こえてくる
「おら!何してんださっさと立て!」
「……ひっ、ご、ごめんなさい」
何やら揉め事らしい
男と、ボロボロの服を着た少女だ
ヤレヤレ
「とう『筋力強化』」
窓から飛び降り着地する
ドシッ!
「おい、どうかしたのか?」
「お、お前、今上から……」
「まあ、ここの宿屋に泊まっている者でな
騒音を注意しに来たわけだが……
その子は?」
「そうか、朝からすまなかったな
こいつは今日、俺が買った奴隷さ
だが、なかなか言うことを聞かなくてな」
隣の少女は体を小刻みに震えている
「……なるほどな、だが、それはそんな乱暴な態度をとってるからじゃないか?
一人の人間として彼女に接してやれば、きっと心も開いてくれるさ」
「あぁ?偉そうなことぬかすな
奴隷なんだからどう扱おうと俺の勝手だろうが」
「いや、彼女は奴隷である前に一人の人間だ
対等に接してやるのが道理だろう」
「はぁ?奴隷と主人が対等……?
何言っているんだお前は……
――ははぁ、わかったぞお前の魂胆が」
「あ?」
「こいつ、お前のタイプなんだろ?
へ、少女趣味とはとんだ変態だな」
「いや、ちが」
「良いだろう、5千万M でお前に譲ってやる」
何を言っているんだこいつは
さっきから一人で話を進めやがって
5千万M なら出せない額じゃないが……
「ん?どうした要らないなら
このまま俺が連れて帰るぞ」
隣の少女は変わらず震えている
ここで見捨てれば彼女はこの男に乱暴されることになるのだろうか
「わかった、5千万M 出す
小切手でいいか?」
「ククク、良いぜ」
「じゃあ小切手を取りに行くから待ってろ」
そして、俺は少成り行きで少女一人、一緒に住むことになったのだ
――宿屋にて
「よし、じゃあまず自己紹介だな
俺はクレイオ。ここの冒険者協会に所属する冒険者だ
お前の名前はなんだ?」
「……わ、私の名前はソフィア」
「ああ、よろしくな」
彼女は変わらず震えていた
「まあ、なんだ
こんな初対面の奴に言われても無理だと思うが
リラックスしてくれ」
「……あ、あの
本当に、私に5千万M も使ってよかったの?
本当の私の値段は20万Mなのに……」
「人の価値は値段じゃ図れるものじゃない
だから人を金で買えるこの環境がおかしいんだ
だから俺にとっては5千万も20万も一緒だ」
「……」
「ああ、ごめん、何言ってんだろうな俺
身体も汚れているし風呂でも入るか?」
「……え?良いの?」
「ああ、今風呂の準備するから
存分に湯につかってくれ」
「……一人で?」
「はは、俺が居たらリラックスもできないだろう」
「……あの、私、一人で入ったことない……
施設にいたときは冷たいシャワーをかけられるだけだったから……」
「なるほどな、一人だと入れないか?」
「……ちょっと怖い」
なんてこった。どうしよう
「つまり俺に一緒に入って欲しいということか?」
「……うん」
……まあ彼女が言うならしょうがないか
「じゃあちょっと準備するからまってて」
ドォン!
隣の部屋から大きな音がした
ソフィアは体をぴくっと震わす
「今の音は……?」
「隣の人の生活音だな
まあ、こんな音が鳴るのは初めてだが
気にすることはないよ」
くう、まさか女の子と風呂に入るなんて思わなかったな
ギルドを抜ける前だったらアウローラとかに頼めたんだがな……
一応、近くにソフィアと風呂に入ってくれる知り合いの女性がいないか調べてみるか……
『捜索』
これは索敵魔法の応用で
索敵はモンスターの位置を探るが
捜索は特定条件の生物を探ることができる
つまり、これで知り合いの女性が近くに居ればそれを知ることができるのだ
範囲は大体半径1kmと言ったところだ
「……居た」
「?」
俺は自分の部屋を出て
隣の部屋の扉をたたいた
コンコン
ガチャ
「なに?」
そこにはアウローラがいた
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