3話 冒険者協会にて
【冒険者協会】について...
モンスターを討伐するために設立された組織。
個人から国に至るまで依頼を受け付け、それを管理する。
冒険者として素質があるものに冒険者ライセンスを与え、
それぞれに適した依頼を割り振る。
本部は「大国ウィーテ」の王都に存在し、各国に支部が複数存在する。
クレイオは「コーラル国」の都市「シフ」に存在する冒険者協会に所属している。
「なぁ、なんで俺は追放されたのかなぁ……」
「……さっき自分で、『個人で依頼を受けたせい』だって言ってたじゃないですか」
「いやぁ、でも、なんかなぁ……」
俺は今、冒険者協会に来ている
それで受付の彼女に愚痴を聞いてもらっているわけだ
「俺、補助魔法いっぱい使えるんだけどなぁ……
いままでいっぱい役立ってきたんだけどなぁ……」
「つらい気持ちも分かりますが……
そ、そうだ!協会の専属になるのはどうです?
良ければ私の方で申請しておきますが……」
冒険者協会に専属すると
協会に部屋が設けられ、そこに常駐することが許され
さらに、住だけでなく食の面でも食堂が無料で自由に使えるようになる
他にも生活費の一部が支払われるなどの待遇を受けられる
しかし、専属になるからには協会からの依頼を断ることができず
自ら依頼を選ぶことができない
専属になるには審査を受け、それに合格する必要があるが
冒険者ランクがC以上あれば基本落ちる心配はない
「ありがたい誘いだけど
俺はまだあのギルドを抜けたことに納得してないんだよな
だから今は協会専属とかは考えられない」
「……そうですか、残念です
では、これからどうするんですか?」
「とりあえず『5枚の翼』の内情を探る
それで俺を追放した本当の理由を知るのが当面の目的だな」
「本当の理由?」
「あぁ、あいつらが本当にあんなことで俺を追放するとは思えない
大体、アウローラはそのおかげで出会えたといえるのに……
それにアギトだって今まで俺に協力的だったし
リュウも事情知ってて今まで何も言ってこなかったのにな」
「なるほど、確かに不自然ではありますね
今まで言ってこなかったのに急に除名勧告なんて……
――あ、噂をすればですよ」
後ろを振り向くとそこにはアウローラが居た
「――依頼を探してるんだけど良い?」
「あ、はい
今、リストをお出ししますね」
「……なんでわざわざ冒険者協会にまで来るんだよ
ギルドにも依頼はあるだろ
それにわざわざここの受付にきやがって……
あっちの受付空いてんじゃねーか」
「――うるさいな
どうせつまらない事グダグダと話してただけでしょ
メアリーも迷惑してるよ」
メアリーとは受付の彼女の名前だ
確かに、彼女にはただ愚痴につき合わせてしまった
「良いんですよ、私は
冒険者の皆さんの心のケアも冒険者協会の役割ですから」
「ありがとう。今の心のオアシスはメアリーだけだ」
「あ、いえ、当然のことですので!
そんな大げさですよ!」
大げさかな?
今の状況を考えると割と適格なのでは
「――このリストちょっと借りてくから」
「はい、協会を出る前には返してくださいね」
そういうとアウローラは一瞬俺をにらめつけ
協会のテーブルに着いた
「――な、あれはどう見ても俺を気にしてるよな
わざわざ除名したメンバーを気にするなんてやっぱり変だよな」
「確かに、わざわざ冒険者ギルドに来るのも珍しいですし
『5枚の翼』設立以来初めてかもしれませんね」
「そうだ、ちょっとカマかけてみるか」
「カマ?」
俺は受付から離れてアウローラの元に向かった
「……何?」
「あぁ、元ギルドメンバーのよしみだ
一応報告しておくけどな
俺、冒険者協会専属になるから」
「……そう、
クレイオはそういうの興味ないと思っていたんだけどな
協会の奴隷なんて」
「おい、言い方気をつけろよ
誰に迷惑かけてるってわけじゃないんだ
生きていく手段としては上等じゃないか
それに協会に常駐するとなるとメアリーにも毎日会えるしな!
毎日同じ屋根の下で!」
バン!
アウローラはテーブルに依頼のリストを叩きつけた
「これ、返しといて」
「……あ、あぁ」
そう言うとアウローラはそそくさと協会を出ていった
ウーム、やっぱり今の反応をみるに色々と調べてみる価値はありそうだ
とすると、どこから手を付けたものか……
「あ、そうだ
クレイオさん宛に手紙が来てますよ
また無償で討伐依頼を受けましたね」
ああ、ヘンキョー村での奴かな?
「はい、私の方で処理しておきましたので
協会に記録は残らないようにしましたよ!」
「ありがとう」
メアリーが処理してくれて助かった
他の人が担当していたら、また協会にバレてしまうからな