最後の声
夕陽が眩しくて、自分の気持ちとは真反対だった。
車の声、街を歩いている人の足音、鳥の叫喚、
全ての''鼓動''を感じ取ってしまう。
何も進まない、何も変わらない日々に
嫌気が差していた。もう、ゴメンだ。
「逃げんじゃねえよ」
何回も言われてきた。鮮明に蘇るあの場面。
僕は練炭をトランクに積み、人気のない駐車場に停まっていた。
振り返れば、何も結果を出したことなんてなかった。
辛いことがあれば逃げて、その場しのぎの解決策だけを頭の中で練る。
そんな情けない自分を殺したかっただけだった。
あと1日だけ生きてみよう。そう思って、
僕なりに、生きてきた。
それもただのその場しのぎに過ぎなかった。
自分が存在している世界から色が消えた時、
何もかもを終わらせようと決めた。
色塗りなんて出来ない。
練炭に火を着けた。上がっていく煙が、
皮肉にも輝いて見えた。
「次は、頑張ろう。」
最後まで情けない言葉を呟いた。
視界が回転し、徐々に瞼が重くなっていく。
安心感と苦しさ、少しの寂しさを残して。
目が覚めた。AM11:00。
今日は何をしようか。
気晴らしに普段行かない場所にでも行こうか。
せっかくの休みだ、家でダラダラしてるなんて勿体ない。
そんな事を考えながら歯を磨く。
携帯を触りながら、昼食の時間に朝食を摂っていると着信が入った。
数少ない友人の愛斗からだ。
「おはよう、ていうか昼だけど。
今日休みだろ?久しぶりに遊ばね?」
甲高い声が耳の中に響く。
『おはよう。そうだな、久々に遊ぼうか。』
愛斗とは中学校からの仲で、昔から毎日遊んでいたが最近は連絡すら取っていなかった。
愛斗に彼女が出来てから、
お互い自然と、距離が遠くなっていた。
「おっけ!そしたらいつもの駅集合で!」
そう言い愛斗は残し、電話は切れた。
身支度をして、自宅の鍵を閉めた。
2回、いや3回ドアを引き施錠確認をした。
駅に向かうとそこにはあの時と何も変わらない
愛斗が立っていた。
「久しぶりだな、元気にしてたか?」
愛斗は表裏のない笑顔でそう言った。
『あぁ、元気だよ、なんとなく生きてきた。』
僕も笑顔で返事をする。
「また意味わかんねーこと言って。とりあえず行くぞ!」
愛斗は変わらない口調で自分の車に乗り込み、
僕を助手席に座らせ、エンジンを掛けた。
昔からずっと一緒だった、
自分のありのままを見せてきた。
だからこそ、久しぶりに会うと会話に困った。
でも、なぜか不思議と居心地が良かった。
「遊ぶとか、なんか懐かしい言い方したけど、ただのドライブだな」
ハンドルを握りながら呟いた。
その言葉に敢えて返事をせず、合間を置き
僕は愛斗に問い掛けた。
『最近どう?』
愛斗はニヤニヤしながら答えた。
「なんとなく生きてる。」
『お前も変わんないな』
僕が笑って答えた。
中身の無い会話をし、目的も無く車を走らせていた。そんな時間さえも楽しかった。
お金が無くても心に通う何かがあり、
一緒に色んな時間を過ごして来た。
そんな愛斗を僕は大切に思っていた。
それは突然だった。
愛斗が急ブレーキを踏んだ。
身体に経験したことの無い衝撃が走り、
車体が前のめりになっているのをすぐに感じた。
隣を見ると大型トラックが物凄い速度で
こちらに走ってきていた。
『おい』
声を出そうとしたが間に合わなかった。
物凄い衝撃音と共に、体の浮遊感を感じながら
自分が塵になるような感覚を覚えた。
気が付いた時、僕の視界には薄らと天井のようなものが見えていた。
頭が働かない。目も片目しか見えない。
腕と脚に重い何かが纏わりついている。
呼吸が、しづらい。
苦しい。本当に苦しい。
助けてほしい。
自分は死ぬんじゃないか、
生きて来て初めて、死というものを悟った。
『駄目だ………』
心電図のフラット音が頭に響き渡る。
冷たい機械音が、高音で響き渡る。
呼吸が出来ない。
鼓動の音が、聴こえない。
誰か、助けてくれ。
声が出ない。
あぁ、もう、駄目だ。
『生きたかった』
心の底から、強く思った。
「逃げんじゃねぇよ…。」
愛斗は涙を流し、そう小さな声で呟きながら
ベッドで横たわる僕を見つめていた。
目が覚めた。
AM11:01。
今日は、何をしようか。
初めて小説というものを書いてみました。
文を書くという習慣が普段から無いので、
変な言葉遣い等が多いと思いますが、暖かい目で見て下さい。




