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十一話 再会の日(蒼side)

 アンコールが終わり、舞台裏にMaTsurikaメンバー全員で捌ける。袖口では桃菜が俺たちを待っていた。

「みんな、お疲れ様! すごく良い――」

「っ、おい蒼!」

「蒼くん!? どうしたの!?」

 俺は、メンバーの制止も無視して、急いで着替えに向かう。労いの言葉を伝えようとしてくれるスタッフさんたちには申し訳なかったが、とにかく早く私服に着替えて会場の外に出たかった。

 ――ジャスティナが、客席に居たのだ。

 他のメンバーは気が付いただろうか。あの様子だと、少なくとも紅夜さんは気付いていなかっただろう。ジャスティナが居たのは関係者席でもなかったし、気付かなくても無理はない。アンコール、リフターで近づいた二階席、ジャスティナが俺のうちわと俺の色を持って立っていたのだ。

 何かがおかしいと、ずっと思っていた。ジャスティナがあんな理由で俺たちを、俺を捨てるわけがないと。だけどメンバーはジャスティナを忘れて前を向き始めていたし、新しいプロデューサーの桃菜も真面目で良い奴だったし、ジャスティナから手紙も届いたから……とりあえず現状はこのままで頑張っていこうと、そう密かに誓ったばかりだったのに。

「蒼さん、待ってください!」

 楽屋に駆け込もうとした俺の腕を、誰かが掴んだ。振り返れば、それは怒ったような表情をした燈真である。

「離してくれ、俺は」

「分かってます。俺も見ましたから」

「! なら……」

「でも、ダメです。勢いで、外に出ないで……」

 潤んだ瞳で懇願する彼に、少し勢いを削がれた。燈真は、俺の次にジャスティナを待ち焦がれていたと思う。そんな彼が、冷静に俺を引き止めたのだ。

「一年も経ってようやく会いに来てくれたんだ……今を逃したら、もう会えなくなるかもしれない」

「ダメです。俺たちも、一年かけてようやくこんな全国ツアーができるようになったんです。それを……スキャンダルで台無しにするつもりですか? いくら変装したって、外に出たらファンにバレますよ!」

「……じゃあ、どうしたら」

 ジャスティナは、心からライブを楽しんでいる様子だった。今なら、あの時彼女に何があったのかを聞き出して、また一緒に過ごせるようになるんじゃないだろうか。そんな期待が浮かんで消えない。

「とりあえず、緑さんに連絡しませんか。彼なら何かできるかもしれないですし」

「緑さん……。そう、だな」

 高槻緑は、約一年半前俺たちと共にNEXTプロダクションに移ってから、今も俺たちMaTsurikaのために尽力してくれている。だから信頼しているし、感謝もしている。

 だけど、彼はジャスティナについて何か隠していることがあるような気がしていた。元々、ジャスティナが社長だった頃から、緑さんは彼女と最も近い存在だ。アイドルじゃないから、ジャスティナも緑さんにはプライベートに接する。

 それに、ツアーの初日からこれまでほとんどの公演に同行していたのに、ジャスティナが来ていた今日に限って緑さんは休みを取ると言って同行しなかった。そんな彼なら、今のジャスティナについて何か知っているかもしれない。

 緑さんを頼りたくないという醜い嫉妬心を押し込んで、スマホを取り出す。ロック画面には、ジャスミンの花が咲き誇っていた。

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