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虹坂家の一日

作者: 夜明け

 あー、畜生。あの、馬鹿と話してるせいで遅れた。


 俺、虹坂橙火です。ピッチピッチの高校生だぁいっ! ……すんません。気持ち悪いとか言わないで下さい。

 

 先に説明しとくと、俺の家は両親が海外へ出張中で、俺の家には二人の妹がいる。二人とも俺と同じ誕生日で同い年である。つまり世には珍しい三つ子だったり。

 

 ……って、確か、あいつら先に帰ったよな?


「ったっだいまー!」


 ………………。


 兄貴がこんなに元気よく帰ってきたのに、誰も迎えてくれないのか。


 もしかして、翠と蒼依がまだ、帰って来てないのかな? ……うん、靴あるね。


 少し寂しさを感じながらリビングへ行くと翠がソファに寝転んでいた。


「お、翠! ただい――――」


「ちっ。帰ってきやがった」


 舌打ちする翠。え、ひどくない? 泣いちゃうよ? ここ、俺の家だよね?


 こんな仕打ちあんまりだよね? そう思わない? ……思わないんですか?


「お、お帰りとかないの?」


「誰に?」


 翠がきょとんと首をかしげる。アハハー、冗談だよね? 幾ら何でもそれはひど――――嘘。なんで、そんな「何言ってんだこいつ」みたいな顔してるの? まじで言ってんの?


「翠ちゃん。それ、酷くない?」


「ふーん。誰が? つか、ちゃん付けしないで気色悪い」


 お前のことだよ! マイペースにも程があるよ! 人の話は聞きなさいってお母さんに教わらなかったの!? …………教わってないわ。

 あのさ、後、ちゃん付けくらい許して下さい。気持ち悪いを越えて気色悪いなんだね。うん、泣くよ?


「みどりー!」


 ばたばたと階段を駆け下りてくる音が響いた後、リビングに入ってくる蒼依。


「あ――――」


 蒼依と目が合う。


 おー! 蒼依なら言ってくれるよね? 「お帰り」って笑ってくれるよね?


「みどりー。あのさー」


 蒼依がまるで何もなかったように背を向ける。


 ええぇぇぇぇぇぇっ!! ここでスルー!? 今、「あ」って言ったじゃん! 俺に気付いてくれてるじゃん!


 ちょ、蒼依まで? ていうか、まだ翠のほうが扱いがよかったんだけど! 蒼依に空気扱いされたぁ!


「ちょ、蒼――」


「あ、とーか?」


 き、気付いてくれたか! さあ、この哀れな子羊に「お帰り」の言葉を!


「何だ、生きてたの?」


 なんと、俺は今日、死ぬ予定だった。


「ひでぇ! お帰りすら言ってくれねーのかよ、俺の妹は!」


「え? ………………ああ。あたしたち、あんたと血が繋がってないから」


 ココに来て原爆投下です。何で、俺だけ知らされてないの? 一番上の兄が一番最初に知ることだよね? あんた呼ばわりだし。何で、そんな重いこと平気で言うんだい?


「じょ、冗談やめてよぉ。しっかり血は繋がってるでしょ?」


「だから繋がってないって。あ、お帰り」


 今思い出したように言わないでぇぇぇ! その話題、もっと詳しく聞かせて! 


「ねぇ。お帰りって、そんなに言えないものなんですか?」


 蒼依は仕方ないように溜息をついた。溜息つきたいの俺だよ。何で、俺、わがままみたいな奴になってんの? あ、わがままですか? スミマセン。


「お帰り。……輪廻の果てから」


「何故ナッポー!」


 まさかのむく〇さんの登場だった。


「ほら、舞い戻ってきましたよ? って言わなきゃ!」


「俺は〇くろじゃねー! 俺、マフィアとか消そうと思ってないから」


「えー。とーかはど〇ろちゃん派なの?」


「ラ〇派だっ」


「橙火ってドM?」


 後ろの翠に勘違いされた。〇ルってドSなの?


「二人とも、俺に普通のお帰りとか言えないの?」


「あー。お帰――――」


 二人がめんどくさそうな声で言う。


「ちょっと、待って!」


「「何?」」


 二人が心底嫌そうな顔をする。しかし、構うものか!


「玄関のところからやるから!」


「…………」


 イッツ無言タイム!(リ〇ーンさん風)

 

 挨拶って大事だぞ! 何事も雰囲気からだ。


 俺は急いで家を出る。そして、大きく息を吸い、ドアに手をかけた。


「ったっだいぃ?」


 思わず間抜けな声が出る。……アレ?


 ガチャ。ガチャガチャ。…………。


 ドアが開かない!


「嘘っ。ちょ、開けろー!」


「もう、とーかに構ってられないよ。めんどくさいから拒否」


「警察呼ぶよ?」


 ドア越しに聴こえる妹達の声。ひどすぎるっ。


「畜生! 裏から侵入してやるぅ!」


 その後、俺は近所の人に強盗と誤解され、通報され、一日警察のお世話になった。

短編小説初投稿です。この話、連載にしようと思ったんですが、まずは……ということで短編に投稿してみました。

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