007.アースの降臨
お淑やかなアースなのです。
晴れ渡る空、シェリルの家の周りの生きものたちは朝の支度を終え、各々自分の仕事に取り掛かっているのです。
空に見えるサンも機嫌が良さそうなのです。
さて、今日もシェリルは元気そうなのです。
エリスは精霊らしく姿を消して見守っているようです。
この町には、とても気持ちの良い風が吹いています。
緑の木々たちも喜んでいるのです。
きっとエリスの力のおかげなのでしょう。
そんなエリスに声をかけるのです。
「星の神よ、エリスはここにございます。何なりとご命令を」
エリスは姿を現し、その場で膝をつく。
相変わらず、堅いのです。
エリスのエメラルドのような色の長い髪がサラサラと風になびいている。
ーーう、めちゃくちゃ美人なのです。
降臨の姿を持ったから分かるのです。
なんだか負けた気分になるのです!
くそー、わたしももっと美人で背の高いお姉さんの姿にすれば良かったのです!
こんど、サンに逢ったらチェンジしてもらうのです。
「星の神?」
エリスは何も指示がないことを不思議がり、声を出す。
おっと、忘れていたのです。
私はレディ、お淑やかに話すのです。
「エリスさん、今日はシェリルの祝福のことを話しておこうと思いまして」
「おぉ!星の神の祝福でございますね。星の神に愛されシェリルは幸運でございます」
うむ、エリスはよく分かっているのです。
「シェリルの祝福の効果を知れば、エリスの気苦労も少しは減ると思いましたから」
「私などに気を掛けてくださり、誠にありがとうございます」
エリスよ、苦しゅうないのです。
祝福は、祝福を与える者が効果を決めることができるのです。
例えば、死なない体の不老不死、レアな属性魔力や威力の強い魔力を使えるようにするとかですね。
祝福を与える者自身の力を越えるような力は与えられませんが、とても可能性を秘めた力なのです。
しかも、祝福の契約を結ぶと絆が生まれるのです。
お互いに何かあった時にピンチを感じられたり、相手のためなら普段以上の力を出せたりなどなのです。
それでは!
わたしがシェリルに与えた祝福を発表します!
「私の祝福は『健康な身体と良い運に恵まれる』なのです!」
「おぉ!最高の祝福でございます!」
即、返答をするエリス。
生きものたちはよく祈りを捧げるが、この2つを願うことが多いのだ!
シェリルは、健康と良運を手にしたのです。
これで、エリスが危険から守ってくれるなら完璧なのです。
さすがわたし!天才!
「恐れ多くも星の神よ、健康な身体は素晴らしいのですが、運の祝福を渡すとなると、危険など訪れないのではないのでしょうか?私の守護理由が無くなるのではないのでしょうか?」
おぉ、エリスさん……頭良い。
一言でここまで考察を伸ばすとは、エリス……恐ろしい子っ!
しかも、分からないことをすぐに知りたくなってしまう知識欲の鬼っ!
しかし、運の力には副作用があることを知らないようなのです!
「この世界は全て等価交換。ひとつの運が良いならば、代わりに別の何かの運が悪くなる。大抵は、身近に不運が降り注いだりするもの。そういうものなのです」
「流石は偉大なる星の神、そのような理は知りませんでした」
「良運も、時には身にならぬ力にもなりえるのです。……シェリルを助け、共に生きなさい」
「はっ!この命に代えましても!」
エリスは跪いたまま、深く頭を下げる。
少し震えている。
どうやら、アースの話を聞けて感動しているようだ。
この子はすぐに命を賭けるのですね。
もっと命は大切にするのです。
……今のはとてもかっこいい言葉を言えたのです!
エリスも感動してるのです!
これでシェリルは安全、万全、大満足なのです。
時折、様子を見る程度で大丈夫なのです。
次はどうしましょう。
暫くは、星の力の強い者は生まれないようなのです。
シェリルほどではないのですが、他の強い星の力を持ったものでも見て周りましょうか。
わたしの降臨の姿を見た反応も知りたいのですし!
◇ ◇ ◇
アースは地上ステータスを見る。
ありゃ?
地表や大気、生物パラメーターに異常な動きがあるです。
どうやら、昨日から数値が大きく乱れているようだ。
なんだろう?
昨日は何かあったかな?
ま、うちの精霊さんたちは優秀ですから、うまくやってくれるのでしょう。
アースは意識を大深林の精霊王に向ける。
とびきり巨大な大木の根元で、横たわって寝ている精霊王がいた。
こんなに地上ステータスに異常があるのに働きもせずに寝てるのです!
サボり王の名を与えてやるのです!
アースは降臨の力を練り、集中し始める。
さぁ、地上に降臨する私の姿を見るのですっ!
精霊王の近くに、ふわふわとした白い羽衣を着た、青い髪色でショートボブの少女が現れた。
「おーい!精霊王さーん!」
アースは精霊王を起こそうと声をかける。
精霊王は瞬間的に目を開け、立ち上がり、周りをキョロキョロと見渡す。
動きはコミカルなのだが、顔立ちは美しいのです。
銀色の輝く髪は、脚まで届く長さがあり、銀のドレスはキラキラ光って綺麗なのです。
精霊王は後ろに立っていた私を見つけ、難しい顔をする。
「え〜っと、お嬢ちゃんは何者?」
お?そうか!気配を消してるから誰か分かんないのです!
体がウズウズする。
……いたずらしたいっ!
アースの心の中の天使と悪魔が囁いてきた。
いたずらをしなくてはならないっ!
可愛いいたずらは逆に喜ばれるかも?
そうだ!少女からのいたずらなんてご褒美だぞ!
いたずらは世界を救うのだ!
いたずらをするべきだっ!
なんてことだ!ほぼ悪魔ばかりだった!
しょうがない!天使はいなかったのです!
アースはいたずらすることを決めた!
「道に迷ってしまって……助けてくださいっ!」
よし!迷子作戦開始だっ!
迷子になった少女が、一緒に親を探してくれる人と出会い、探し始めるがトラブルが続く、魔物も現れちゃう!助け合う2人だったがとうとうどうにもならないピンチに!もうだめだという時に、私の本当の姿を見せて、精霊王ビックリ!
これでいくのです!
「あまりに気配がなさすぎる。私の鑑定も効かぬ……常人ではあるまいに。名を名乗りなさい」
しかし、精霊王は警戒している!
なんだよ!君たちの言う気配ってなんなのですっ!
出ててもダメ!出なくてもダメ!
ちょうどいい塩梅を、誰か教えてなのです!
ちょっとだけ気配を出してみるのです!
精霊王は鑑定の上位能力を持っていた。
その能力でさえ、全く通用しないこの可愛らしい少女を警戒していた。
そんな少女から、ふいに恐ろしい気配が漏れる。
精霊王は咄嗟に少女を鑑定してしまった。
頭を抑えて、叫び出す精霊王。
「ーーな、何っ!深淵っ!深淵が私をみているっ!うわっー!」
精霊王はその場に倒れて気絶した。
とびきり巨大な大木の前で立ち尽くすアース。
森からは鳥たちの楽しそうな声が聞こえてくる。
少し離れた木々に少し焦げた跡がある。
湖のせせらぐ音色も気持ちいい。
アースの目の前で倒れている精霊王。
実は、つい先ほど前までアースのせいで起こった天災の対応に追われていた。
彼女はこれしかないという合理的な判断と指示で、精霊たちを操り、幾つもの地上の危機を防いでいた。
ようやく一息つける頃、疲れから横になったばかりの姿をアースに見られていたのだ。
作戦は失敗なのです。
こいつ、すぐ寝るのです。
精霊たちは、たるんだ上司を持って大変なのです。
実は優秀な精霊王。強い星の力も持っている。
今回も、彼女の気持ちはアースには届かないのであった。
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