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006.アースの家族




 こんばんわ、慈愛のアースなのです。




 今日は、わたしのストーカーのムーンが来てるのです。



「誰がストーカーだ!」



 おぉ……断りもなく心を読んでいるのです。


 さすがストーカー!


 

「あんたがいつも破天荒なことをして怒られるから、私が見てあげてるんでしょうが!」



 破天荒?このお淑やかな私に、なんてお口の過ぎる星なのでしょう。



「この前も、私のことをあなたの追っかけだとか考えてたでしょ!あんたの追っかけなんてしてないわよ!」



 さすがストーカー、いつも見られているのです。


 気が抜けないのです。



「くっ!あんたは私のせいだとか、すぐバレる嘘をつくからでしょ!特にサンなんか怒ると恐いんだから!迷惑かけられないように見張ってんのよ!」


 

 おぉ……サンよ。ムーンがあなたの悪口を言っております。



「何を考えているのよっ!このやろ!このやろ!このやろっ!」



 ムーンの月からアースの星へ、数本のビームが飛んできている。



 スーパー大気圏バリアっ!


 ふふふ、そんなもの届かないのです。


 今度はこっちのターンなのです!


 私のスーパーアースビームを喰らうがいい!



 はあぁぁぁ!



 魔力を高めていると。


 

「ばっっかもーーん!!」



「「ぎゃふん!」」



 私とムーンは、急に聞こえてきた声によって精神的なダメージを負った。


 人間の事象に例えると、冷蔵庫に楽しみにとっておいたプリンを家族の誰かにすでに食べられていた時ぐらいのダメージなのです。


 くっ、名前を書いておけば良かったのです。


 

「怒られているのに、何を考えておるのだ!」



 サンがまた怒っていた。


 

「全く、お前たちはいつもいつも呆れることばかりしおって、星の因果が乱れるではないかっ!」


 

 星の因果とは、星の引力の拮抗具合のことなどだ、星の因果律などともいう。


 引力が乱れると星同士がぶつかったり、遠くへ飛んでいったりなど大変なことが起こる。


 ちなみに引力以外の要素もあり、星たちの運命などに対しても使われる言葉でもある。



「確かに、強い星に育ってほしいとは願ったが、こんなにへこたれない子に育つとは……」


「ムーンもムーンだ!アースに振り回されないようにとこの間も注意をしただろうが!」



 サンの説教が始まった。



 やーい、怒られてやんの!



「アース……この馬鹿もんがっー!」


「きゃいん!」



 アースの精神にダメージが襲う。



「あんたも懲りないわね」



 ダメージから復帰したムーンは呆れていた。




「ーー反省したのか?」



 アースは共感妨害の力を使う。


 心を読まれないようにするためだ。



 子供の心を読むなんて大人は汚いのです。


 わたしのプライバシーを守るのです。


 それに、先にムーンが手を出したのです。


 わたしは悪くないのです。


 でも、反省してるように見せるのです。



「反省してるのです」


「アース?そんなことをしても無駄だと……」



 サンの威圧感が高まっている!



「反省してますっ!ごめんなのですっ!」



 アースは心の底から反省した。



「まぁ、いいだろう。心を読むのはやめてやろう。そういえば、間もなく、久方振りの星の儀が始まると言っただろう?」


「……え?もちろん覚えてるのです!」



 忘れていたのです。


 なんでしたっけ、それ?



「忘れていたな?」



 サンの威圧感が高まっている!



「ごめんなのですぅ」


「……この銀河の星たちが集まり、星の規律を見直す場のことだ」



 うー、なんか1ヶ月ぐらい前にそんなことを言っていたような、いなかったような。


 

「はい、覚えたのです」


「どうせ、命じたことは忘れているのだろう?」


「うぅ……」


「ふ、星の儀のために、降臨する姿を決めなさいという話でしたよね。私はちゃんと決めましたよ」



 ムーンが浮かれた声で話しに入ってきた。


 ムーンめ!後で覚えておくのです!



「おぉ、どんな姿にしたのだ?」


「見ててください!」



 サンの光が届く宇宙空間のなかに、ムーンは降臨した姿を現す。


 その姿は、小さな人族の姿に似ている。


 真っ直ぐな長い黒髪の女の子の姿だ。


 黒の着物に白が混ざって、三日月の黄色いブローチも似合っている。


 前髪で片目が隠れているため、表情は見えづらい……が。


 正直、ちょっとかわいいのです。



「なるべく目立たないようにした!どうせアースがやらかすから!」


「この慈愛のアースがやらかすわけないのです!みんなを慈愛の心で包み込んでやるのです!」


「また訳の分からないことを言って!あんたなんか、どうせ規律違反をして大いなる罰を受けることになるんだからっ!」


「ふっ……そうしたら、ムーンは私の星なんだから、一緒に罰を受けることになるのです」


「ーーちょ、なんで私は、アースとなんかと因果の強い星に生まれてしまったのっ!」


 

 女の子のムーンは泣き出してしまった。


 正直、ちょっとかわいいのです。



「アースはムーンを見て、もっとしっかりしようと思わないのか?」



 サンから呆れた声で質問がきた。



 返答を間違ったらきっと説教タイムが始まるのです。


 わたしは聡明なアース。


 エリスの頭の良さと誠実さを思い出すのです。


 同じ失敗は繰り返さないっ!


 

「ムーンが失敗しても、助けてあげるのです!」


「あんたが失敗ばっかりするんでしょうが!!」



 二人はまた喧嘩を始めた。



 サンの威圧感が高まっていく。



 二人はそれを感じ、正気に戻っ……たのが、遅かった!



「ばっっっかもーーーーん!!!!」



 二人は精神的なダメージを負った!


 降臨しているムーンはさらに吹き飛んでいる!


 

「「すいませんでした」」



 サンの威圧感は小さくなっていく。



「で、アースはどうするんだ?今、降臨の姿は決めなさい」


「決めるから、ちょっと待つのです」



 どうしようかな?


 降臨の姿かー。


 

「決められんならサターンに決めてもらうぞ?」


「それは絶対にだめなのです!今、決めます!」



 サターンにはセンスがないのです。


 サターンって名前も超絶ダサいのです。


 魔力おたくのサターンに決められたら、変な姿にされちゃうのです。



「お前とサターンは趣味が合うだろうに」



 サンが笑っている。



「そんなことはないのです」



 サターンとは魔力の話で盛り上がることがあるだけなのです。


 いや、今はどんな姿にするかを考えるのです。


 服を着る文化のある種族がオシャレなのです。


 人族にするのです。


 シェリルにも見せてあげたいのです!


 よし、頭の良さそうな超イケメンにするのです。



 ーー頭の良さそうな超イケメン。


 ーー頭の良さそうな超イケメン!



 アースはイメージに集中し降臨の力を練る。



「どうだ!見て驚くのですっ!」



 ムーンの隣りにボンっと姿が現れる。


 そこには、2頭身の頭の大きい狸のような顔の人型が現れる。


 狸の顔はキリッとした凛々しい眉毛で、目は丸く、鼻が高く、口は小さい。



「あ、あれ……?」


「あははははは!!!!アースあんた!!だ、だっさ!!お、お腹痛いっ!!あはははは!!ぐはっ!!」



 とりあえず、笑い転げているムーンを殴り飛ばす。



 な、なんで!?


 わたしのセンスは全宇宙で一番いいはずなのです!!



「アースよ、その姿だな。あいわかった」


「待つのです!あいわからないで!間違いなのです!ちょっとイメージを間違っただけなのです!」


「いや、別にそのままで構わんぞ」


「わたしは構うのっ!」



 それからアースの変身ショーが始まった。


 何故かどれも間の抜けた顔のコミカルな姿になってしまう。


 眉毛をキリッとするのが、さらに面白さを醸し出している。


 笑い転げるムーンはその度に殴っておいた。


 

 

 ムーンが飽きて笑わなくなってきた頃。



 男性をイメージするのは苦手かも知れないのです。



 そう思ったアースは、女の子をイメージし降臨の力を使う。


 

 何もない宇宙空間で器用に頬杖をつくムーンの前に。


 ムーンより少し背の高い、透き通るような水色のショートボブで白い羽衣のような服を着ている、可愛らしい女の子が現れた。



「お、可愛いじゃん」



 思わず、ムーンは褒めた。


 

「そう?変じゃないのです?」


「まぁ、ダサくはないわね」


「ムーンよりかわいい?」


「え?私は目立ちたくないから普通。アースのが目立ってるし、可愛いわよ」


「えへへ」



 アースはにんまりと笑う。


 褒められて嬉しいのです。


 ムーンより可愛いのはいいことなのです。


 この先もマウントを取り続けるのです。



「あんたにマウントなんて取られたことないわよ!私があなたを助けてあげて、なんとかなってるのよ!」


「まだ共感を使ってたのですか!あれ?妨害の力は?」


「あなたの共感妨害なんて、私にはすぐ突破できるんだからね!」


「プライバシーの侵害なのです!」


「あなたがいつも変なことばかりするからでしょう!私の身にもなってーー」



 二人の喧嘩がまた始まる。


 サンの威圧感がまた高まっている。


 二人はそれを感じ、正気に戻っ……たのが、またもや遅かった!



「ばっっっっかもーーーーん!!!!」



 二人は仲良く吹き飛んでいく。




「「本当にすみませんでした」」



 サンの威圧感は小さくなっていく。



「アースよ、その姿でいいのだな?」


「はい、これでいいのです」


「分かった。それでは、星の儀まで大人しくしておくのだぞ」


「アースはレディになったのです。お淑やかに振る舞うのです」



 ムーンが堪らず吹き出している。


 後で覚えておくのです。



 その後は、三人で雑談をして怒られることもなく解散となった。




 やっぱり家族はいいものなのです。




◇ ◇ ◇




 その頃、アースの地上では。


 各地で記録的な大地震や熱波、台風などが発生していた。


 その天災での被害を最小限にするため、精霊たちは各地を忙しく走り回っている。


 精霊王は精霊たちに念話で指示を飛ばしながら、森の火を消して回っていた。



「もう!星の神よ!いったい何をやっているのーーーー!」




 精霊王の悲鳴は虚しく響き渡るのであった。




今回は後書きも読むのです。読んだ後に次へ>>を押すのです。


 星の時間経過の概念ですが、私たち人間の作った時間の概念(国際単位系における時間)、太陽年、光年などあるようです。

 星たちは主系列星を中心に一周することを1日と捉えていることとします。

 現実では、太陽を地球が一周するのが365日(閏年は366日)で1太陽年といい、それが1日といった感じです。

 しかし、書き分けるのは難しくなりそうですので、私たちの時間概念を採用することとしました。

 あまり難しく考えずに読んでいただけると幸いです。


※サターンを超絶ダサいとか書いてますが、一部の方々に響いていたらすみません。私もサターンを買った派ですから、許してください。

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