後編
景色や食べ物、アイドルの写真などを撮ると、自動的に自分の姿を合成してインスタグラムにアップしてくれる便利なアプリを使用し始めて一ヶ月。
雑誌やネットで見つけた写真を撮るだけで、ぼくがそこにいる姿がインスタに投稿されるのだ。
一ヶ月のうちに、ぼくはインスタグラムの中では、ハワイで泳ぎ、アルプスに登頂し、地中海でクルージングし、サファリやピラミッドを訪れ、世界中の料理を食べ、ハリウッドスターたちと並んだ写真を撮っている。
「世界を股に掛けての活躍ですね」
「すごい!セレブの生活だ!」
「みぶさんに会ってみたい」
などのコメントをいただいた。
もちろん、実際に行った場所や食べたものの画像をあるのだが、割合にすればリアルとヴァーチャルが半々くらいだろうか。
先週、チーズケーキを貰った時も、食べる前に写真を撮った。
それだけで、自分が美味しく食べているところがアップされるのだ。
写真を見返すと、ケーキに蠅がとまっているのに気づく。
撮り直す前に合成画像がインスタに投稿されていて……
「あっ!」
おもわず叫ぶ。
アプリがバグってしまったらしい。
ケーキを食べるぼくの顔が大きな蠅の頭になっており、ケーキにはぼくの顔を持った蠅がとまっているのだ。