第3話 〜外来人異変 後編〜
「何事かの?」「おや、天魔。貴方も呼ばれたのですね?」「なんと地獄の閻魔も来ておったか。周りを見る限り、勢力トップの者共が集まっているようじゃな?」「そのようですね…あらかた目的は分かりますが…。」「貴方が天馬様ですか。お会いできて光栄です。」「お主は命蓮寺の僧侶じゃなぁ。よろしく頼むのぉ。」「おやおや。お前にもちゃんと礼儀が扱えたのだなぁ?怪力僧侶。」「あら。誰かと思えば腐れ仙人じゃないですか。貴方の部下がまた寺を放火しようとしていたので消しておきましたよ♪」「布都の奴め失敗したのか。では、今度は私直々に燃やしに行こう。」「くだらないわね。カリスマの欠片もないわ。」「「ろくな食事もできない吸血鬼は黙ってなさい!!」」「はぁ。失敬失敬。」「大分賑やかなようで…。」「おっ。地底の嫌われ者も来たのかい?」「あら。人のペットに無断で異物を入れ込む山の神じゃないですか?お次はどんな問題を起こす予定です?」「…。そうだねぇ。地底の未来のために最高のプレゼントをしてあげようかなぁ。」「相変わらず嘘をつくのがお好きなようで。」「全員静粛に。紫が来たぞ。」隠岐奈の一声で私に注目が来る。みんな世間話していた割にはちゃんと異変のことが気になっているのね。「皆。よく集まってくれたわ。今起こっている異変については気づいていると思う。わかった情報があるから、みんなに伝えるわね。」私は外の世界から来たオールスターズのことを伝えた。それぞれの者たちの能力、弱点、性格。経緯や目的、博麗大結界のことも。「なるほどなぁ。それは問題じゃな。」「皆は幻想郷への被害の軽減と彼らへの警戒を高めて欲しい。特に聖尊という奴。外の世界である程度幻想郷の知識を身につけている。彼の能力は幻想郷を破壊するには十分の力があるわ。本人は幻想郷が好きみたいだけど、油断はしないように。」「別にそんな警戒することではないと思うが?」レミリアは少し前にオールスターズと接触させている。やはり庇いに出たか。「念の為…よ。貴方は直接接触したことがあるからわかるのだろうけど、彼の中に恐ろしい存在が眠っていることもわかっているわよね?だから貴方には1番近い距離感での監視を任せるわ。」「そうか。まぁ、私のすきにやらせてもらうよ。」「天魔と神奈子は妖怪の山での忠告と保守を頼んだわ。」「わかった。」「おっけーよ。」「白蓮と神子は主に人間たちと下級妖怪への呼び掛けをお願い。」「わかりました。」「了解だ。」「閻魔は地獄の者たちが暴れ出さないようにして。」「了解です。」「さとりは引き続き旧地獄の怨霊の管理をお願い。怨霊が利用されたらそれこそ幻想郷の危機になるわ。」「わかりました。」「それじゃあ各自動いて頂戴。」ここまで警戒するのにはわけがある。オールスターズ事態はそこまで驚異ではない。ただ、オールスターズに関わるということは、銀河一の科学者、Dr.プランクトンに目をつけられるということだ。彼が本気を出してしまえば幻想郷は一瞬のうちに消されてしまうだろう。非常にまずい事態になった。「おい紫い〜。この異変が終わったら美味い酒を飲もうなぁ?」「萃香…。貴方も少しは緊張感を持ってちょうだい。」「ひっぐぅ。」酔いつぶれているらしい。いつもの事だが。「まぁさっき連中の様子を見てきたがぁ。霊夢に倒されて終わりになると思うぞぉ〜?」「当たり前じゃない。博麗の巫女が負けることは許されないんだから。」「そんなに焦るにはちゃんと理由があるのよね〜?紫。」幽々子が後ろから声をかける。「まぁそんなところね。幽々子。貴方は大丈夫だと思うけど、妖夢にはしっかり警告しておきなさいよ?亡霊たちだって利用されたら不味いのだから。」「えぇ。勿論よ。まぁある程度なら妖夢でも倒せると思うわ。」「全く。相変わらずお前ら3人は仲がいいな。」「あら隠岐奈、混ざりたいのかしら?」「はっ!くだらん。私もそろそろ行くぞ。」茶番は終わりだ。さぁ、動くとしよう。
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ぼろ負けだった。まさかこんなに呆気なくやられるとは。いくら弾幕ごっこじゃなくてもここまで清々しく倒されたらぐうの音も出ない。「お前…なんて強さだ…」「悪いけど。あんたと遊んでいる暇はないの。弾幕ごっこだかなんだか知らないけど、私を相手してる暇があったらさっさと主犯のところにでも行ったら?」「面白くないやつだぜ。」「面白くなくて結構よ。」そういうと再び席について作業を始めた。なんか気に食わない。「なぁ。なんの作業してるんだよ。」「あんたには関係の無いことよ。」「ちぇっ。あぁわかったさ。私はもう行くからな!」「最初からそうしなさいよ…。」バン!私は放り投げるようにドアを閉め、ホールの方へ向かった。
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シュパパパパン!「はぁ…はぁ…。」体力が無くなってきた。だいぶ長いこと戦っているが常に相手に優位を取られている気がする。「あんた。手品師にでもなったらどう?人里でやったら儲かるわよ?」「俺が…?人間のところで?笑わせないでくれよ。」シュ!上か。そこには大量の弾幕が置いてあった。「!」ズババババババン!間一髪回避する。もはやスペルカードルールは関係ないか。「反則結界!」聖尊の周囲に御札を高密度で配置する。「喰らいなさい!」大量の妖怪バスターを聖尊目掛けて投げつける。「おっ。そう来たか。」こんな状況でも余裕そうな顔をしている。「タイム・ザ・ロック!」「なっ!」一瞬頭が真っ白になった。私が攻撃したはずの聖尊の姿がなく、御札が全て私の方へ向かってきていた。「二重結界!」咄嗟に守りを固める。「あぁあぁ。霊夢の力はそんなものかい?」「クッ…。」「そろそろ真面目に戦おうか…。」聖尊の眼の光がより濃くなった。魔力の気配が強くなった気がする。「ライトレイン!」ピューン!レーザーの威力が上がった?おかしい…魔力は使うほど弱くなるはず…。こいつは…何かがおかしい。ただの魔力じゃないのか?距離をとったら相手の思うつぼか…。タッタッタッ。「電子ラケット。」ビシーーーン!私はお祓い棒で聖尊に殴りかかったが、奇妙な物質で抑えられた。「そんなことまでできるのね。でもなんでそんな変な物体にしたの?」「俺にとっちゃこれが1番扱いやすいのさ。」ビシーン!ビシーン!シュ!カキン!「やっぱり手品師になったら?」「興味ないって言ってるだろう?人間と交流するなんてごめんだよ。ちょっと本気出させてもらうね?」ドォン。「魔力…10%解放!…圧縮!」より魔力が強まった。やっぱりか、あれで10%?無限に魔力が溢れているのか?そうかそういう事か。ならあの手を試してみよう。「あんた…魔法使いなの?」シュパーン!「定義上はそうなのかもしれいなけど…自分は魔法使いとは思ってないよ。」ズギャン!「そう。魔法使い達があんたの魔力に群がりそうだわ。」シュシュシュシュ!ピューン!「そろそろ終わりにしようか?疲れちゃったし。」ピン!聖尊が左手の人指し指を向けてきた。直後に体が動かなくなる。「なに…これ…?」「テレキネシス。念力だよ。これで霊夢も俺の手のひらさ。」ドン!「ウグッ!」突然左に勢いよく飛ばされた。壁に思いっきり叩きつけられる。ドン!ドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドン!ドゴォン!「悪いけど…終わらせてもらうよ。」ヒューン。右手でエネルギーを溜め始めた。体が動かない。食らうしかないか。ピューーーン!「!」シュシュシュシュシュシュ!「身代わりか!」聖尊は咄嗟に瞬間移動で避けた。決まったわ。「なっ!」完全に固定した。もう体は動くまい。私は会話の途中途中で相手の動きで作動する術を仕掛けた。あとは油断させる為に相手の大技を身代わりで受け流して術にはめるだけ。「やっとかかった…。全く手間かけさせないでよね。」「魔力が…」「あぁ。あんたの魔力。その結界の中じゃ使えないから。正直いって、あんたみたいなのは幻想郷じゃ珍しくないの。この先それでやってこうっていうなら、もっと緊張感を持った方がいいわ。」「っ…!」これで終わりにしよう。まだ退治する敵はいるんだから。「夢想封印!」ズバババババン!「はは…油断しちゃったな…。」ドゴォォォォーーン!!「ふぅ…。」さ、主は倒した、実行犯を退治しに行くか。…何かの気配がする。とても邪悪な。「!!!!」砂煙の中に漆黒に輝く球体が2つ。聖尊…?いや、気配がさっきとまるで違う。別人か?「ひひひひひ。」シュシャキン!「なっ…!」腕を斬られてしまった。なんて速さだ。おかしい。私の勘が言っている。こいつはヤバい…。「あぁ…。体が自由に動くとはいいものだぁ。人を殺したくて殺したくて、溜まらねぇ。」「あんた誰?聖尊じゃないでしょ?」「あぁあ?俺をあんなゴミと一緒にするんじゃねぇ!俺は悪の化身。邪悪な魂の権化。」「そう。あんたも退治されたいわけね。」「無駄話はいらねぇ!さっさと死ねぇぇぇ!」シュシュシュシュシャキンシャキンシャキン!「なんて速さなの…!」「アーッヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!ヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒ!気持ちがいいぃぃぃ!こんなに自由に暴れ回れるのは久々だ!いつもこのゴミの魔力で抑えられてたからなぁ?」狂っている。もはや人間ではない。そもそもが化け物か?「デッドナイフうぅぅぅー!!」スパーーーーーン!「空間がっ…!?」ナイフの波動が通った場所は謎の暗黒空間が広がっている。空間を斬った?そんなことが出来るの?手段を選んでる暇はない。今こそ私の能力を使う時だ。ヒューン。霊力を最大限に溜め、相手を結界の中に閉じ込める。「あ?こんなの俺に効くかよ!」カシャン!パリーン!念の為に5重に結界を張っといて良かった。これなら間に合う!「夢想天生!」ズダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダン!「クソっ!なんだこの攻撃は…」まだ耐えるか。でも私の攻撃は相手が倒れるまで撃ち続ける。どれくらい耐えられるかしらね。「能力の制限さえされていなければっ!こんまものぉー!!!」ズダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダン!「デッドナイフ!」スパン!無駄だ。その程度の空間変形じゃ耐えられない。私は目をつぶっているだけで、勝手に御札が攻撃してくれるのだから。「クソォォォォォ!」ドゴォン!終わったか。最後の最後まで手間をかけさせるやつだな。「ゥ…!」まだ意識があるのか?こうなったら━━━━━━「マスタースパーク!!」「え…」突然横から巨大なレーザーが飛んできた。完全にあの化け物は動かなくなった。「魔理沙!」「ふいー。なんか蠢いてたから飛ばしちまったぜ。」全く。魔理沙らしい。「霊夢!右腕が血だらけじゃないか!大丈夫なのか?」「かすり傷よ。この程度怪我に入らないわ。」「それを聞いて安心したぜ。霊夢に死なれちゃ困るからな。」「私が死ぬってのは幻想郷が死ぬのと一緒よ。そう簡単に終わるもんですか。」「だな!」「さ、行きましょう。この先みたいね。」私と魔理沙はゆっくりと階段を登っていった。これが最後の戦いになるだろう。
コツ、コツ、コツ、コツ。ゆっくりと光が強くなっていく。屋上に着いた。「おや。たどり着かれましたか。」「ご主人様を倒してきたのですね?」メイドと執事か。「あんたたちの主は倒したわ!観念して今すぐ修復を辞めなさい!」「何故です?壊してしまったから修復するのは人としての礼儀です。」「馬鹿かあんたらは。あんたたちど素人が大結界に触るんじゃないわよ。」「これは失礼しました!」「申し訳ございません。やはりプロの方にお願いするべきでしたね。」「やけに素直だな?」「ただ…。辞めるわけには行きません。ご主人様の命令無しに勝手なことは出来ませんから。」「あー?めんどくさい奴ね。臨機応変に動きなさいよ。」「ですから私たちと戦ってください。それで決着をつけましょう。」「あんたらが退治されたいなら喜んでやってやるわよ!」「当たり前だぜ!」従者2人は綺麗に身だしなみを整え丁寧にお辞儀をした。「申し遅れました。私ご主人様の聖尊様に御遣いさせていただいているホワイトと申します。以後お見知りおきを。」「私はリンお嬢様に御遣いさせていただいているブラックと申します。以後お見知りおきを。」「これはご丁寧にどうも。私は博麗霊夢。異変解決が仕事で博麗大結界を守っている神社の巫女よ。」「私は普通の魔法使い、霧雨魔理沙だぜ!」「あんたたちのせいで博麗大結界に穴が空いたの、はっきりいって大問題でシャレにならないからとっとと退治されてもらうわよ!」「えぇ始めましょう。永い戦いを。」「えぇ始めましょう。一瞬の戦いを。」「行くぜ霊夢!」「覚悟しなさい!」こうして私たちの戦いは幕を開けた。真っ黒い執事と真っ白いメイド。弾幕まで黒白だ。「ホワイトボール!」「ブラックボール!」シュン!なんだ?黒い弾幕には引力が働いている。逆に白い玉には斥力が働いている。それが…彼奴らの能力?「魔符!アルティメットショートウェーブ!」「散霊!夢想封印 寂!」ドドドドドドン!「甘いですね!」シュ!弾幕を躱しながらホワイトが急接近してきた。手にナイフを持っているのが見える。「ッ!」メイドはナイフを使うのが主流なのか?どっかの紅い館のメイドもそうだったし、昔いた魔界の神の従者もそんなんだった気がする。シュシュシュシュ!キィン!私はお祓い棒で対抗し、霊力を込めて力いっぱい蹴り飛ばす。ドゴォン!咄嗟に弾幕を飛ばしてきた。勿論躱す。「霊符 夢想妙珠」「光斥結界!」「なっ!」私の弾幕が特殊な結界によって斥力で跳ね返される。「やるじゃない?」「お褒めの言葉感謝致します。」キィンキィン!彼奴のメイドだけあって実力も相当だ。ただ…結界術なら私の方が上だ。「境界 二重弾幕結界!」「これは…!」ホワイトと自分の間と後ろに結界を張り、大量の御札で追い詰める。ズゴォォン!
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「はぁぁぁぁぁ!」私は勢いよく見に八卦炉から炎を出す。「シャドウバースト!」「おいおい!黒すぎるだろぉ!?」視界も同時に遮られる。スパーン!危なかった。間一髪攻撃を躱す。ナイフを振り回すだなんてどこぞのメイド長じゃないんだから。マジックボムを設置して距離をとる。ドゴォンドゴォン!「闇引結界!」「うがっ…!」体が引き寄せられる。まずい。このままだと中心のエネルギーにやられてしまう。何とかして脱出しないと。前方からブラックが追撃の弾幕も放ってくる。強行突破するしかないか…。「頼むぜ八卦炉!ブレイジングスター!」ドォォォォォォン!「ッ!」ブラックに思いっきり体当たりして吹き飛ばす。やったぜ。とどめにもう1発。「魔砲!ファイナルマスターーーー…」
「スパァァァァーーーーーーーーク!!!」
これで決まったはずだった。私は何が起こったか理解できなかったのだ。ブラックは正面に暗黒の穴を開けている。ブオォォォォォン…。「吸い込んだ…のか?あれを?そんな馬鹿な…」考える暇もなく右遠方で何かが光った。
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「ホワイトホール展開!」正面から光の線が直進してくる。「魔理沙のマスタースパーク…!?」対応出来るか?急にこの大きさのレーザーは流石に…「二重大結…」間に合わなかった。ズバーーーーーン!「うわぁーー!」魔理沙も巻き込まれたようだ。ドゴォォォォーーン!
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「はぁ…はぁ…。」「やりましたね。姉さん。」「何とかね…。」「しかし博麗の巫女を倒してしまったら大問題になるのでは?」「やってしまったものは…仕方ないじゃない。」「それもそうですね。ではお嬢様の所へ戻りましょう━━━━」ピーン!「「!!!」」なんだ…?体が動かなく…。
「あらあらあら♪油断は敗北の証拠よ〜?」「詰めが甘い奴らだなぁ〜??ヒッグゥ。」「幻想郷の為にも。博麗の巫女には勝たせないと行けないのよ?」どこから聞こえて来るのか分からない。博麗の巫女でも魔法使いでもない。誰だ?姉さんも動けない状況か…。「ブラック…不味いわ!」正面には博麗の巫女が佇んでいた。「まだ動けて…」「神霊 夢想封印!」あぁ。これが世界を守るものと壊すものの宿命か。どの世界の勝負も、自分の目的の為に戦う者よりも、誰かの為に戦う者の方が勝つことが決まっている。私は今、お嬢様の為に戦うことを忘れていたようだ。ドゴォォォォーーン!