第1話 〜外来人異変 前編〜
幻想郷━━━
妖怪や神、外の世界で忘れ去られた者が集まる幻想の世界。そこでは外の世界の非常識が常識となり、外の世界の常識が非常識となる。ある時は世界が紅い霧に包まれ、ある時は春が来なくなり、ある時は永い夜が続いた。そんな現象を人々は「異変」と呼ぶ。地底から怨霊が湧き、魔女となった人間が復活させられ、聖徳王が復活した後に、大異変が起きることとなった。外の世界の人間が起こした異変。後に、「外来人異変」と呼ばれるようになる。
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ガチャ。「おい!どういうことだ!博麗大結界に穴が空いただと?!」隠岐奈が後戸から声を上げて現れた。「そうなのよ…。急に外の世界から建物ごと幻想入りした者たちがいるの。」突然のことだった。博麗大結界は大抵のことでは破壊されないのだが、百平方メートル程の大きな穴が空いたのだ。同時に出現した巨大な建造物。間違いなく外の世界のものだ。周囲には飛行機のようなものが飛んでいる。「全く。前代未聞の異常事態だ。幻想郷の崩壊に繋がるぞ!紫!」「えぇ。わかっているわ…早急に博麗の巫女を行かせるから。隠岐奈は住民に被害が出ないようにして頂戴。」「あぁ。わかった。」ガチャ。隠岐奈は急ぎ足で後戸の世界へ戻って行った。だいぶ焦っているようだ。この私も…。スペルカードルールを制定してからしばらく大きな異変はなかったが、こんなことになるなんて。異変の主犯にはそれ相応の対応をさせてもらうとしよう。まずは霊夢に伝えなければ。スー。私は隙間を開いて博麗神社へ繋げた。
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ズズズ。「は~。いいお茶ねぇ。」緑茶を飲んで一息つく。あぁこんな平和な日常が続いてくれることを心から願う。異変解決なんて面倒くさいことはしたくない。神社の掃除が終わったら、羊羹を食べながら、お茶を飲む。なんていい生活なのだろう。これで賽銭箱が満杯になれば文句なしだ。「…」嫌な予感がした。私の至福のひとときに水を差す、胡散臭い妖怪の気配が…。
スー。
「霊夢?ちょっといいかしら?」「何よ…」やっぱりだ。八雲紫。幻想郷一胡散臭いやつ。こいつと関わるとろくな事がない。あぁ。私の平和な日常が…。「大異変よ。すぐに動いて頂戴。」「大異変?」私は耳を疑った。紫の話だと、博麗大結界に大穴を開けた外来人が居るらしい。奇妙な建物と共に現れたそうだ。面倒くさい…。正直動きたくはないが、博麗大結界に関わるなら放ってはおけない。「わかったわ。あそこね?」「えぇ。気をつけてね。」「ちゃっちゃと解決してくるわよー。」私は身支度を整え、怪しい建物目掛けて空を飛んだ。
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「なんだか外が騒がしいわね…」怪訝そうな顔をしたアリスが言った。騒がしいのも無理はない。ついさっき謎の建物が出現したのを見たからだ。「なんだか面白そうなことが起きているみたいだぜ?」「どーせしょうもないことでしょ?」「いいや違う。今回は大異変の予感がするぜ!」「そう。」相変わらず無愛想なやつだ。ま、アリスが動かないのなら私ひとりで行くだけだ。私は帽子を被り、ミニ八卦炉をポケットにしまって箒を手に取った。「あんま馬鹿なことしないでよ?」「あぁ。大丈夫だ。アリスん家が壊れないように祈ってるんだな。」「どーして私の家が壊れなきゃならないのよ!」軽い冗談を交わしてから外に出た。「ちょっと待って魔理沙!これ、持ってきなさい。」「これは…」「身代わり人形よ。役に立つはずだわ。」「サンキューアリス!恩は返さないぜー!」私は勢いよく空へ飛んだ。霊夢が動く前に、異変を解決してやるぜ!
ゴー。勢いよく怪しい建物めがけて飛んでいるから風の音がうるさい。なんだか建物の周囲に変な物体が浮遊している。「なんだーあれー?」段々と近づいている気がする。あ、私が向かっていっているから当たり前か。いや?スピードがおかしい。あっちからも向かってきているようだ。シュパーーン!「おぉっと危ない!」超スピードで私を横切る。妖怪でも妖精でもない。生き物には見えなかった。でも魔法で動いているようには見えない。不思議な物体だ。ピュンピュンピュンピュン!「今度はなんだぁ??」上空から奇妙な物体に乗ったやつがレーザーを放ってきた。「おいお前!そこで何をしている。ここは俺たちオールスターズの縄張りだぞ!」「あぁ?オールスターズぅ?」わけのわからん男がわけのわからん武器で攻撃してきたから状況が理解できなかったがそんなの気にしなかった。「急に攻撃を放ってくるなんて反則だぜ。」「敵に攻撃を予告するバカがどこにいる。」「これだから外来人は。幻想郷のルールを叩き込んでやるよ!」ズババババン!私はマジックミサイルを放って距離を詰める。「遅いな。」ピン!男は異常な速度で空中を駆け回った。何者だ?外来人は変なやつが多くて困る。「オールスターズだかちんちくりん星人だか知らんが、私の前で星を語るならそれ相応の覚悟をしといた方がいいぞ。」「覚え方おかしいだろ!」私はスペルカードを宣言し、とっておきの星弾を放った。「魔符!ミルキーウェイ!」シャンシャンシャン。辺り一面星づくしだ。相変わらず私の弾幕は綺麗だな。「おいおいおいー!一気にこんな多くの技を放つなー!これだから魔法は嫌いなんだよ!」必死に弾幕を避ける男の姿が見える。「ははは!初心者は避けることに夢中になって相手を見ないんだ。これで終わりだぜ!星符!ドラゴンメテオ!」ズガァァァン!「うわぁぁーー!」呆気ないものだ。弾幕勝負のやり方もわかっていない。変な浮遊物を避けていたら入口から遠ざかってしまった。「ん?」下を見ると、敷地内に異様に植物が生えている場所を見つけた。植物園か?確か紅魔館にもあったが…。こっちは妙な雰囲気が漂っているな。気になるから行ってみるか。私は植物園の前まで行き、箒から降りた。「邪魔するぜー!…」なんだか陰気な場所だ。気分も下がる。やる気も無くす。なんなんだこの場所は?「誰…?」奥から緑髪の明らかに暗いやつが出てきた。どう考えてもこいつの影響だ。このだるさ、思考もネガティブになっていくように感じる。「おいお前。ここの住人か?」「うん…そうだよ…僕の名前は…ベル…。薔薇が大好きな…ただの凡人だよ…」喋り方も暗い。どーしよーもない野郎だ。こいつといると気分が悪くなる。さっさとぶっ飛ばした方が良さそうだ。「そういうことならさっさと消すだけだぜ!」ボワァァ。私は八卦炉から炎を噴射して薔薇を焼き切った。「………あぁ…ぼ、僕の薔薇が…」「すまんすまん。手が滑ったぜ。わざとだから許してくれ。」「よくも…よくもぉぉぉ!」その直後、緑色のオーラが周囲を包み込んだ。物凄い負のオーラだ。怒らせてしまったようだな。「そんな怒ることじゃないだろー?」「許さない。僕の薔薇をいじめたやつは…絶対に許さない!!」男は妙な体制で指を構えた。何かが来る!「ネガティブレーザー。」ドゴォーーーーーン!「なっ!」指から極太のレーザーが発射され、奥の壁を倒壊させた。あんなのに当たったら一溜りもない。「大分お怒りか~~~」仕方ない。だったら本気で相手してやるだけだ。「黒魔!イベントホライズン!」魔法陣を周囲に飛ばすが…「ネガティブゾーン。」彼奴の周囲に気味の悪い空間が現れた。そこに触れた魔法陣は挙動がおかしくなって動かなくなったり、戻ってきたり、暴れたり。「なんだよあいつの能力はぁぁ?」仕方がない。火力で飛ばすか。私はミニ八卦炉を取り出して力を込めた。「恋符!マスタァァァァァスパァーーーーーーーーク!!」ゴォォォーーーーーーー!彼奴のレーザーの遥か上をいく極太レーザーで植物園ごと消し飛ばした。「ふぅ。植物園はなくなっちまったが、事故ってことにしておけばいいだろ。」私はそのまま建物の窓から室内へと侵入した。
コツ。コツ。コツ。薄暗い廊下を歩く音だけが響く。どうやら地下に進んでいるらしい。なんだか紅魔館でも似たような感じだったが…。吸血鬼の化け物とかは出てこないだろうな?いや、あの時とは違う。変な恐怖感はない。ただ、この先に魔力の気配がする。同業者がいるのか?少し歩くと、正面に大きな扉が現れた。「いかにもな雰囲気だな。」ガチャ。キィィィと音を立ててゆっくりと扉を開く。「!」そこには巨大な空間が広がっていた。パチュリーの図書館ほどじゃないが、外から見た時よりもうんと広く見える。ここでも空間をいじる奴がいるのか。「おっ。博麗の巫女がお出ましか?」「ようやくここまで来たみたいだね…。」現れたのは剣を持った背の高い2人の男だった。後ろにはガキが2人いる。「ん?おい。俺が聞ぃてたのはなぁ、紅白の巫女服を着た黒髪の人間。だぞ?全くもって違うじゃねーか。あぁ?」「うーん。聞き間違いではないと思うから、きっと別の子が来たんじゃないかな?」目の前でブツブツと会話していることに嫌気がさして口を挟むことにした。「誰だ!お前たちは?」「僕の名前はゼロ。美しさを求める剣士さ。」髪を靡かせてカッコつけていた。なんだこいつ。「俺はガイだ。この隣にいるナルシスト野郎よりは強い。」「おいおい。何を言っているんだよガイ。僕の方が剣の技術は美しいだろう?」「おめぇいちいち気持ちわりぃんだなんだよ美しさって。力は俺が勝ってる!」「頑固なやつだなぁ。ほら、レディが困っているだろう?話してごらん?」うっ。私はどうもこのゼロってやつが苦手だ。気持ち悪いぜ。気を取り直して自己紹介でもしよう。「私は霧雨魔理沙。ごく普通の泥棒だぜ。」「なんだって?泥棒!?」奥にいるちびっ子が驚いていたが私は気にしなかった。「そんな強いおふたりさんには、この魔理沙様が相手してやるぜ。」「あぁ?博麗の巫女以外に興味はない。無駄な戦いをする程暇じゃねぇんだ。」「あぁ。すまないねミス魔理沙。代わりにこの子達が相手になるよ。」2人が下がると奥にいるちびっ子が2人出てきた。「泥棒なら退治しないとね!」「おいおい。お前みたいなお子さんが私に勝てると思っているのか?」「子供だからってバカにしないでよー。僕はカイ。身体中が機械でできてるからあんまり馬鹿にしない方がいいよ?」「なんと。にとりが言ってたサイボーグ人間ってやつか。やっぱり外来人はおかしな奴ばかりだな。んで?そっちのやつは誰だ?」もう1人の方はムスッとして魔導書を持っている。まるでパチュリーみたいだ。「僕はタクヤ。魔法使いさ。」「そうか。同業者か。」同業者なら負けられない。本当の魔法使いってもんを見せてやるぜ。ただ、もう片方の手に歪な形の剣を持っているのが気になるな。「この私、霧雨魔理沙が、魔法の力でお前たちを退治してやるぜ!」私はミニ八卦炉を取り出し、かっこよくポーズを決めたが…。「はぁ。」「あれ。」「君みたいな人間が、ちょっとかじった程度の魔法で、改造された僕の魔法に勝てると思ってるの?悪いけど、僕たちは本気で行くからね?」大した余裕だ。だが私はパチュリーを相手にしたことがあるんだ。余程の事じゃ負けないだろう。「いいよ。見せてあげる。僕が研究に研究を重ねて生み出した暗黒魔法と神聖魔法の力。冥土の土産話に持っていくといいさ。」大きな魔法陣とともに空間が乱れる。タクヤは魔法の詠唱を始めたようだ。「タクヤもやる気だねぇ!僕もかっ飛ばしちゃうぞ~!」カイは右手を大砲のように変形させてエネルギーを溜め始めた。「おいおい…。そりゃないぜ。」空間全体ねじ曲げるほどの魔力。自由自在に体を変形させるサイボーグ。どうやら子供だからって舐めていたようだ。これは辛い戦いになるだろう。




