1話 始まりの日①
あぁ、今日はなんて心地のいい日だろうか。
僕の名前は調所マサヤ。
高校2年生の17歳だ。
期末テストも今日で終わり。やっと解放される。
教室の窓から外を眺める。
気温も高すぎず、爽やかな風が吹いている。
こんな日はカフェでも寄って…
ドゴォォォォォン……………!
「え?」
思わず口に出た。とてつもない地響きと轟音…。
(地震……!?)
街の中心部の方から黒い煙が何本も出ていた。
「何だこれ…………」
ポケットのスマホが鳴る。
幼馴染の新井ミヤトからだ。
「も、もしもし?ミヤト?」
「チョーショ!今どこにいる!?」
「え、今はまだ学校だけど…」
「いつものゲーセンに来てくれ!今の地震で
おっちゃんが瓦礫の下に!!!」
「瓦礫って……いや待ってゲーセンにいるの?
ミヤトも逃げた方がいいんじゃ…」
「おっちゃんを置いてけねぇよ!助けなきゃ!」
「わ、わかった行くよ…」
まだ整理の出来ていない気持ちを落ち着かせ学校を出る。
ミヤトは「見捨てる」という言葉を知らない。
消防士とか警官の家系だからだと思っている。
絶対に助け出すまで動かない。
何があったかわからないけどこのままじゃミヤトもきっと危ない。
僕は急いでゲーセンに向かった。
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大勢の逃げる人たちとすれ違いながら、僕は
街の中心部から少し離れたゲーセンにたどり着いた。
ちょうど帰り道にあるゲームセンター。
決して大きいわけではないけど店長のおじさんが気さくな人でよく寄り道している。
そんなゲームセンターが変わり果てた姿になっていた。
天井が崩れ落ち、土埃がすごかった。
「チョーショ!こっち!」
声のする方を見るとミヤトが瓦礫を持ち上げようとしていた。
おじさんの足が瓦礫の下敷きになっていた。
「2人ならいける!はやく!」
「う、うん…!」
言われるがままにミヤトを手伝う。
「せー…のっ!!!」
瓦礫は持ち上がらない。
「くっそ…なんでだよ!!!」
再び地面が揺れる。
「私は大丈夫だから…はやく逃げなさい…」
「でも!」
「お願いだ…巻き添えにはしたくない…!」
おじさんは僕の顔を見ながら言った。
おじさんはミヤトのことも僕のこともよく知っている。
ミヤトが自分を見捨てないことも。
僕が自分を置いて逃げるという選択肢を選べる人間だということも。
僕は泣きそうになりながらミヤトを引っ張って外に向かう。
「チョーショ!なんでだよ!!!」
「おじさんがどんな気持ちで逃げろって言ってるかわかるか!?バカ!」
ミヤトを外に連れ出した瞬間、ゲームセンターは
完全に崩れてしまった。
「くそぉぉぉぉぉぉっ!」
ミヤトは泣いた。
僕のことを責めないのは僕が間違っていたわけではないと分かっていたからだろう。
でも今は早く逃げなければ。
『君たち、みんなを救いたい?』
早く逃げようと言いかけた瞬間だった。
「何だこれ…」
頭に声が響く。
『実は今、ある人物が暴れている。これもそいつが原因だ。止めないとたくさん死ぬ。キミ達が望むなら止められるかもしれない。』
さっきとは違う声だ。
「誰だ…!?一体どこから喋って…」
この声はミヤトにも聞こえているようだ。
『今はそんなのどうだっていいんだ。』
『やるの?やらないの?』
何が起きているのかわからない。
幻聴なのかもしれない。
それでも答えは一択だった。
「「やる…!」」
『よし』
『ここからは個別に話すね。』
急に声が近くなった気がする。
(いや待て…名前を知ってる…?)
「どうして名前…」
『ボク達は神様なのよ。力を授けた瞬間にそーゆーのわかっちゃうんだよね。』
(神?力?何を言っているんだ…?)
『いいかい?ボクの力は雷の創造と操作なんだ。
雷とか電気をキミの思った通りに出来ちゃうってワケ』
「マイティ・○ー的な…?」
『そんな感じだね。ハンマー無いし空は飛べないけど…。
イメージある方がわかりやすいからそれでいこっか。』
(雷を操る…ちょっとカッコいいな…。)
『そして力を使う時は使おうって思いながら
ボクの名前を口にしな。』
『ボクの名前はね……』
「インドラッ!!」「ルドラッ!!」
僕とミヤトは同時に叫んだ。