ありふれた婚約破棄にプロの実況と解説をつけてみた
「さあ、ついにこの日がやってきました! 修羅場とざまぁを愛してやまない皆さん、こんにちは。ジョン・カビラッティです。ご機嫌いかがでしょうか? アリストクラッツリーグ第1節の模様をお伝え致します。この試合の解説は、元王国代表MFでお馴染みのノースバレー・フォルテさんです。本日もよろしくお願いします」
「どうもこんにちは。よろしくお願いいたします」
「さあ、ノースさん。今日も激しくエキサイティングな戦いが予想されるんですが、いかがですか?」
「いやあ、このリーグには熱狂的なサポーターも多いですからね。そういった意味でも夢の舞台と言えます」
「そうですよねえ。さて、現場の気象情報をお伝えしておきましょう。現在気温が28℃ 湿度は41% ご覧の通りの快晴です」
「本当に気持ちよく晴れましたね。絶好のざまぁ日和です」
「そしてスタジアムなんですが、なかなかの盛り上がりですよね」
「卒業パーティーということもあって、観客席は大分テンションが高く賑やかになっているみたいですね」
「さあ、笛の音が場内に響き渡りキックオフです。本日注目のプレイヤー、アラン第一王子。現在王位継承ランキングトップに位置しています。おっと! 早速、会場内の生徒達を華麗に躱しながら壇上に素早く移動しています!」
「アラン選手はスピードに定評がありますからね。手が早いことで女性関係のトラブルも多いようですが……ここは確実に決めて、勢いづけたいのでしょう」
「また、アラン選手のすぐ隣には、ぴったりとルイズ男爵令嬢がくっついています。まるでマンマークしている相手チームのような距離感ですが……」
「大胆に自身の胸部をアラン選手の二の腕にプレスしていますね。一種の胸トラップと言えるかもしれません。敵であれば問答無用でファールを取られているでしょう」
「さて、登壇した後、婚約者であるイザベラ公爵令嬢を名指ししたアラン選手。ここで宣言を決めれば先制となります……さぁどうだ!? ……意地の一発! 婚約破棄宣言、確実に決めました! では、今のシーンのリプレイで見てみましょう」
「開始からまだ間もない所での先制点となりましたね。滑り出し好調と言った感じでしょう。このままの状態を維持して頑張ってほしいですよね」
「対するイザベラ選手は、出鼻を挫かれてちょっと辛いスタートになりました。この後早々、仕掛けてくると思うんですが……」
「こういう所で相手が勢いづく前に早く止めたほうがいいですよ。ここであまり消極的になりますとね、このままペースを作られてしまいますから」
「さてと、まずはアラン選手に対して婚約破棄の理由を尋ねるようです」
「なるほど。落ち着いたプレイで挽回を狙っているようですね」
「対するアラン選手はルイズ選手への熱烈な愛を表明しました。これは婚約者であるイザベラ選手への挑発プレーともとれますが、いかがですかノースバレーさん?」
「そうですね~。場合によってはイエローを取られても仕方ない反則行為ですが、イザベラ選手は冷静に対応しているようなので、このまま続行されそうですね」
「更にアラン選手は三人の男子生徒をフィールドに呼び込みました。彼らはルイズ男爵令嬢の取り巻きのようです。イザベラ選手がルイズ選手に対して嫌がらせ行為を繰り返していたことを証言させています」
「これは相当不味いですよ、イザベラ選手。人数差に加えて隙のないフォーメーションを組まれていますから、このままだと一方的な試合展開になりかねません」
「連携の取れた巧みなチームプレイでイザベラ選手を追い詰めていきます!」
「いや~、イザベラ選手も何だか諦めたような表情になっていますね。これはコールドゲームの可能性もあるかもしれませんよ」
「おおっとお!? ここでイザベラ選手が取り出したのは、なんと国王の勅書です! まさかの展開に場内には独特の緊張感が漂います!!」
「これは私も予想できませんでしたね~」
「イザベラ選手が読み上げた内容によると、彼女の訴えによって王家の影が密かに調査を行ったところ、ルイズ選手は複数の男子生徒や教師達と関係を持ち、いじめ現場の目撃証言の捏造や成績の便宜を図っていたようです」
「思わぬ攻撃に、他の取り巻き達や教師陣が控えているベンチの動揺も隠せなくなってきています……これは見事な逆転ですね~」
「先程のビデオ判定の映像が出ました。ご覧ください。ダイナミックな得点シーンですね~。一気に形勢逆転です」
「さらに勅書を読み進めるイザベラ選手。気になるのはアラン選手の処分ですが……いやーーー! まさかのレッドカード出ましたー!!」
「アラン、ルイズ両選手の国外追放が宣言され、同時に試合終了~! なお、取り巻きの選手達にも、追って処分が下される模様です」
「はぁ~。今回の試合も凄い盛り上がりでしたね~。後半のイザベラ選手の怒涛の追い上げが実に見事でした!」
「両チーム共に人生を賭けた戦いでしたからね。アラン、ルイズ両選手には気持ちを切り替えて、アウェイでの活躍を期待したいところです」
「本当ですね。次回の試合を皆さんお楽しみに。本日の実況は私ジョン・カビラッティ、解説はノースバレー・フォルテさんでお送りしました」
「「またお会いする日まで、ごきげんよう~」」